1-11 それからの7日間
新学期も始まったがクラス替え以外はそれほど目新しいこともなく毎日を送っている日本の高校生活とは違って年輪都市では期待した通り刺激に満ちた日々を送っている。
そういえば年輪都市の一年は365日だが一ヶ月はすべて30日で12ヶ月。ただ最後の月と新年の間に5日間ほかの月に含まれない期間が存在している。ちょっと特別な期間ではあるがここでは説明を省く。年輪都市は冬がないのであんまり季節の移り変わりは実感することはない。
アマザのパーティーに加わったのがこっちでの6月半ばの15日。アマザが目標としている指輪貸し出しの条件は前月の狩りの実績となっており、一ヶ月のうち21日以上一定量の成果を上げる必要があるそうだ。
新種の発見なども成果に含まれるそうだが、偶然に頼るそれらがカウントされることは少ない。普通は狩りの獲物を買取課に引き取ってもらった明細書をそのまま狩人詰所に提出することが多い。
獲物の買取についてだが市の運営する買取課に売るよりも時期によっては市井の肉を扱う店に直接買い取りを頼むほうが高値が付くことがある。それらは依頼書が張られているので普段から確認しておく必要があるのだが狩りを早めに終えるとそういったことにも時間を割いているのだろう。しかし市の買取課以外での販売はその内容を捏造される恐れがあり、その裏づけ確認をしてると手間がかかるので成果としてカウントしてくれない。なので自分で町の肉屋に持ち込んだり、依頼を受けたりするのは次の月の指輪の貸し出し条件をクリアしてからになるだろう。ただ一度、指輪の貸し出し条件をクリアすると継続の条件は二ヶ月のうち、21日の規定買取金額クリアと条件が緩和される。そうしないと民間からの依頼は溜まる一方になってしまうためだ。
俺がアマザのパーティに加わるまでの14日間のうち、買取内容(狩りの成果)が認められたのは10日分だということ。不定期だが週に一回程度は狩りを休んで完全なオフにしているそうだが狩りの成果によっては休まずに大森林に出るそうだ。今月残りの15日のうち、少なくとも10日は狩りを成功させるのが当面の目的となる。
翌朝にそう説明を受けて大森林へ向かうこと既に7日が経過している。
アマザ狩人パーティー 6月の狩り開始から16日目 夕方前
『っら~~~!!アッシャー!ちゃんと仕留めんかい!!』
頭に響くアマザの怒気をはらんだ念話
今月一杯は10番出口近辺の大森林で狩りを行い、狙うのはハガネイノシシ同様に普段より奥にいるがこちらに逃げてきている巨獣を狙う方針。ただこれは昨日ハガネイノシシを狩った事で他の狩人も呼び込むことになってしまい。同じ朝から昼にかけての捜索ではハンティング圧が強かったためかニミヤの索敵にも引っかからず、巨獣の匂いを捕らえても他の狩人が近くにいたため争いを避けて仕切りなおしとなった。
結局10番出口近くの大森林の縁をあるいて北上し、15キロほども歩いて散策したがかなりの狩人が入っているのか森の奥500メイトほどではニミヤの索敵能力には巨獣は引っかからず、やむなく森に入り10番出口近くの森ではもっともポピュラーな3級巨鳥:ジバシリを狩ることに決定。巨大なヤンバルクイナなような飛べない巨鳥だが体高は70モイトを超え、これもヒトをつついて襲ってくることもある雑食性。これが曲がりなりにも巨獣の一派の巨鳥とされているのはこのサイズで群れで行動して襲ってくるため。なので群れを見つけると一気に複数獲れるのだが、倒しきれないと逆に数で取り囲まれてボコられることにある。肉以外の部分は素材としては骨が売れる。大森林の植物も食べるせいか空を飛ぶ必要の無いコイツの骨には金属が含まれており、よく獲れる割にはそこそこの値が付く。
そのため日が落ちる直前までかかってなんとか10頭を狩り集める。しかし林内を巨体に関わらずすばやく走って逃げるのでタミーとアマザが土壁で逃げる進路を塞ぐのだが、ボウガン、水流剣ともにヒットさせることが出来ずにいたアッシャーにアマザが怒鳴ることとなった。
俺は逃げてきた1頭を如意棍で首をへし折り、後は各々が捕まえてきたジバシリを背負子にくくりつけていた。だがさすがに6頭を括ったところで背負子に場所がなくなってしまい。如意棍を伸ばして残り4頭をくくりつけてから肩に担いでお持ち帰り。
さすがに10頭となるとそれなりの重さとなるため今回も2倍ほどだが重複化を行使。前日8人前の定食とかなりの果汁酒を飲んだためかその状態での帰路は飢餓には悩まされることはなかった。
- 3級巨鳥ジバシリ10頭 規定買取額クリア -
17日目:早朝
昨日は一昨日のハガネイノシシの狩りを聞いて普段9番や11番出口辺り固定の狩場にしている新人パーティーが多数入っていた。だが一端の狩人たちは西の湖周辺から追われたのなら10番出口近辺だけでなく、隣接する9番、11番出口近くの森にも来ていると判断してこちらには来てなかったようだ。結局、普段フィールドにしていない地形や植生場所があるせいで芳しい成果は挙げられなかったらしい。
巨獣は夜行性のものもあるので出来れば夜にも狩るほうが獲物の幅が広がるのだが、大人数のキャラバン以外で夜に大森林に入る狩人はいない。なので今回は時間を変えて早朝から森に入った。
遭遇したのは大森林の巨獣にしては珍しく、家族単位で狩りを行うタイプに遭遇。見た目は日本のライオンの鬣を持つトラといった感じ。いかにも肉食猛獣といった風貌だがこいつも雑食らしい。首が弱点なのか♂にも♀にも子供のころから生えている50モイトほどあるその鬣は細い鋼線のようになっている。
普段大木の頭上にいて下を通ったものに襲い掛かるようなのだがニミヤによって察知されていたので落ち着いて対処。
大木の上にいるため土の異法での足止めが出来なかったが、大木の上ってことは足場が少なく逃げ場がないってこと。俺が隣の大木に登って如意棍を刺又に変えてひたすら伸ばして突き落とした。
ところがヒトを襲う巨獣なのですぐに倒すのかと思っていたのだが、タミーとアマザにより親2頭と子2頭の足を封じたあととどめを刺す気配がない。何をするのかと思ったら如意棍を刺又にして首を押さえつけるように指示された。
大きさが1.5メイトほどとそれほど大きくないことと体型から取れる肉は多くない、牙も素材とはなるが高値では捌けない。しかしこの鬣は素材としてはかなりのものらしく、これだけで十分な買取額になるらしい。こいつの鬣は高く売れるがそれほど多く見かける巨獣じゃない。そのためその都度殺してしまうと素材の供給が滞るおそれがあるため、鬣だけを採取してなるべく逃がすよう都市の買取課からいわれているそうだ。
大森林の巨獣はその金属が含まれる体の部位はそれぞれ巨獣ごとに異なっており、それに含まれる金属の種類や組成もそれぞれ異なっているそうで言ってみれば生きた金属精製工場みたいなものといえる。 なら有用な素材が取れる巨獣は年輪都市内で養殖すればいいんじゃないかと思うんだがうまくいかないらしい。大森林の環境を再現するのが難しいことと巨獣の生態が明らかになっていないため各々がどんな植物を口にしてるのか判明しておらず、都市内につれてきても肝心の素材が取れなくなるらしい。そりゃ原料(餌となる特定の植物)が入ってこなけりゃそうなるな。
4頭の鬣をアッシャーが防具に仕込んでいた特別なナイフで切り取り、そのまま森から出た。足の固定はどうするのかと思ったのだが硬化を解いているのでそのうち脱出するだろうとのこと。
- タテガミネコの鬣4頭分 規定買取額クリア -
18日目 午前
『カイル!助けてくれ~~~』
二日経って狩人の数も元に戻ったのだが今回は大森林500メイトギリギリまで探ってみるらしい。なにやらついでにアッシャーが探しているようで一人でメンバーから距離を置いていたと思ったら突然念話で叫びが届いた。ニミヤは違う方向に風を飛ばしていたので気付くのが遅れたらしい。
あの細目、なんでポーターの俺に助けを求めるんだよ?って思ってたら、再びハガネイノシシと遭遇して以前と同じように木に登って避難しているのだが大木は掴む枝が低いところに無いため、普通の木の上に逃げていた。
どうやら前回は母と子だったが今回それの番だったのかどうかわからないがオスらしく、母よりも体が大きく角が太い。より長くならないのは長すぎると森林内で小回りが利かないためだろうか?
問題は数日前の遭遇地点とは違って大木が少ないところのため、安全な樹上がない。アッシャーが掴まってる木の前にタミーが壊されても構わない土壁を構成。ハガネの大将が突撃と同時にアマザが両足を固定。
今回は源力に余裕があったので最初から全力での硬化継続をしてもらい。俺はいつでも首を捻れるように如意棍を首に当てて固定。
この状態でホーヅの提案でホーヅやアッシャーの水流剣での攻撃が効くのか?あるいはボウガンが刺さるのか試したのだがやはり成獣の体毛には弾かれていて効いていないようだ。体毛が薄い腹にはボウガンは刺さるようだが四足をがっちり固定した状態で腹へボウガンを当てるのは難しい。それにこの体躯だと内臓に致命傷となるほど深くボウガンが刺さっているのかも怪しいようだ。このまま首を押さえてホーヅの水球で窒息させては?と提案してみたが捻った方が早いと却下された。俺はポーターなんだが。
だがあまりに大きく重過ぎるこいつは俺でも背負えないだろうと全員で思案に暮れることとなった。アッシャーが持つタテガミネコの鋼線の鬣を切ったナイフもコイツにはうまく刺さらずバラせない。
アマザは嫌がってはいたが止むを得ないと念話。小一時間してやってきたのは酒場でアマザが嫌っていたモトスとそのパーティーメンバーだった。
既に指輪を持っているパーティーに獲物と自分達を指輪が作る歪門で送ってもらうこととなったのだが、買取額の半分をあっちのパーティーに持っていかれることとなった。しかしアマザたちはそれで納得らしい。
大物ではあったがさすがに人数が多いので一人当たりの儲けは前回のハガネイノシシ親子には及ばなかった。しかし初めて指輪での移動を経験したのは新鮮だったことと、指輪で繋がるところは中央の買取課だったため、10番の狩人詰所併設のものよりも広く、多彩な巨獣が買取を待って並んでいたのが印象的だった。
中央の買取課は指輪を使ったもの全員が簡易歪門でやってくるところであり、指輪の貸与が認めらている狩人ばかりということなのでこのハガネイノシシでも注目は浴びないと思っていたのだが、またも衆目を浴びることになる。だが既に指輪を持っているモトスたちのパーティーがいたせいでメインで狩ったのは彼らだと勘違いされていたので俺たちは気楽だった。しかし逆にモトスたちのパーティーメンバーからは俺たちに探るような視線を向けられた。
それにしても出会ったときは冷静に見えたアッシャーだがアマザに怒鳴られたり、俺に助けをもとめて念話で叫んだりと印象はかなり変わった。冷静なのはホーヅ、割と調子に乗りやすいのがアッシャーだ。冷静なのはニミヤも同じなのだが傷を治して感謝されたホーヅやアッシャーと比べて会話が少ないので最初と印象が変わらない。人当たりが良さそうだがドライって感じがする。
- ハガネイノシシ 大型オス 腹に数本のボウガン以外キズなし 規定買取額クリア -
19日目 午前 異法修練場
昨日のハガネイノシシの狩りの成果に気をよくしたメンバーたちは後は無理をしなくてもジバシリを狩れば楽に規定買取額の下限日数に達するのではないか?ということでこの日は朝から異法の修練に使う運動場のような場所に集まっていた。一度にいくら壁が作れるのかとか水流剣を操れる本数や切れるものなど各人が狩りと狩りの後の修練でどれくらいの異法が使えるのかを互いに報告しあってる感じだ。
この時もタミーは髪を結い、手袋をはめ、日光から顔を隠すような布を被っていた。暑くないのかと聞いたが防具でなく日光を避けるためのものなので風通しはよく涼しいらしい。異法が使えないとやることがないので各人と少しずつ異法について質問したりして過ごしていた。 そこでタミーの爪の色がアマザほど濃くない事、源力の個人総量が劣るのは学校卒業時に祝福は受けたがすぐに異法士としての修練を開始していなかったためらしい。各人が異法の訓練をしていたのでそれ以上は聞かなかった。
割と長くタミーと話していてサボってると思ってるのかアマザの目がちょっとキツい。救いを求めて他を見るとニミヤが修練場の外側の観客席を向いて立ったままでいるのが目に入った。飲み会の時に酔っ払ったアマザに引っ付かれた時に睨まれてから苦手意識を持ってるのだが苦楽を共にするメンバーだと言い聞かせ思い切って話しかけてみた。
その結果・・・風を使っての修練と称してばれない程度の距離にいる女のスカートを風で巻き上げ、恥らう顔を見て悦に入ってることを知った。スカートの下でなく慌てる顔を見て楽しんでいる辺り、ドライな皮肉屋って思っていたら中々の変態紳士であることが判明。その後、風を使って好みの女の体臭を嗅げる話に及ぶに至ってはさすがに引いた。単なるタレ目の匂いフェチじゃねえか! スカートをめくりあげてるのはパーティーメンバーには知られているらしく、そのことで話していた俺までアマザとタミーから白い目で見られてしまった。
問題が起きたのはこの後で巨鳥の中でも上空から飛来して人間を餌として攫うタイプが修練場に飛来したきた。
このタイプは街中でも普通に歩いている人間を攫う。外壁では防ぎようがない空から来襲する巨鳥なのだが人を攫うほどの大型のものはそれほど多くないようで、日本でいう交通死亡事故みたいな感じに取られられており、戦える異法士が都合よく回りにいるわけもないので避けようがないと思われている。
町よりも修練場の方が建物が少なく、接近しやすいのか狙いをこちらに定めているようだ。ニミヤの風の索敵に掛からずに突然舞い降りてくるなら対処は難しいが、今からくるなら問題ない。
タミー、アマザはよりすばやく、強く土を操れるように手を地面につけたまま。とりあえずアッシャーが囮になってもらい一人で離れて修練場真ん中にいる。 予想通り急降下してきてアッシャーを掴もうとした瞬間、アッシャーをドーム上の土くれが覆い、猛禽の爪を弾いたと同時にその足に絡みつく。
だが人を掴んで攫うほどの巨鳥なので少々の土の塊ならくっつけたままで飛び去ってしまう。なのでアマザ、タミーが操る土塊が左右の足のそれぞれに絡みつく。
それでも舞い上がったのはさすがだが まだ土塊は二人の異法の支配にあるので土を揺らすことで不安定になり、落ちてきたところを俺が如意棍を文字通りの棍棒に変化させて叩き落した。
これは買取とは関係ないが都市から退治すると報奨金が出る巨鳥なのでそれを規定買取額の成果に回してもらった。
- ヒトクイオオワシ1頭討伐 規定買取額の査定へ報償を変換 クリア -
20日目 3級巨竜
今回は500メイトを超えることになるが大森林を流れる川、その周りにある湿地帯に足を運ぶ。ニミヤは自分たちの力を過信するべきでないと戒めたが、なら湿地帯の狩りはどこで訓練すればいいのか?という意見には強くいえないままだった。ただ今回は湿地の周りだけで湿地の中には入らないこと、川には入らないことと納得させ、いわば次回以降の下見として訪れることにした。
しかし大森林を流れる川というとアマゾンのような大河を想像するがさすがに都市から近いのでそんな大河が存在してるわけもなく、幅3メイト程度で深さも1メイトあるなしみたいだ。 そういえば巨獣の中には巨魚なんてものが存在するあろうか? 日本の俺は釣りはしないがもし巨魚がいるならあっちのアングラーは喜ぶんだろうなあ・ まあもし存在して巨獣にカテゴライズされるほどなら人間も食うんだろうけど・
川の近くには溢れた水が湿地となってるので結局川には近づくことさえできず。意外なのだが川に巨獣が水を飲みにくるような光景が見られると思ったが見える範囲では巨獣はいない。ニミヤの感覚にも異常は感じられないようだ。
だが泥の中から突然頭を出してこちらに喰らいつこうと尻尾で自分を前に押し出してきたやつがいる。湿地の泥に身を潜めていたために動きがなく、匂いも少なかったのでニミヤにも気がつかなかったようだ。
巨獣の中でも巨竜にカテゴライズされる爬虫類タイプで姿はそのまんまワニだ。
確か人食いワニってイリエワニだっけ?だけどこいつもデカイ!尻尾を含めると7メイトは超えているだろう。 思い浮かべる日本で見たワニと違うのは蛇のように顎が外れてより大きな獲物にも噛み付けるようになってることだろう。まさか蛇みたいに丸呑みするのだろうか? 大森林の水辺で無い場所でも50モイト程度のオオトカゲは見かけることはあるがパーティーメンバーの誰もこんなにデカイ爬虫類は見たことがなかったようで最初は戸惑っていた。
ホーヅによると3級巨竜のバチカーらしい。前にコーリンが言ってた滋味溢れる肉ってコイツかよ?この巨体で尻尾を使って飛び跳ねて来るせいで泥水を被りまくりタミーはかなりご機嫌斜めだ。ところが異法を使ってどう対処するか?で思案となった。
でかいのはでかいがコイツは肉食専門らしい。そういえばこうして水や泥に沈むならこれまでの巨獣みたいに金属での防御や攻撃の部位を持ってたら沈んじまうもんな。
皮は普通に工芸材料として売れるそうだがこんなもんを丸ごと持って帰れるほど大森林は歩きやすくはない。ここはホーヅとアッシャーの水流剣に活躍してもらうこととなった。泥水だが水を含む土ともいえるので混ざり物ともいえるが扱えるらしい。周りを逃げないように泥の壁を作り、そこからホーヅが一気に水分を抜き、単に土の壁に変え、それをタミーが硬質化。逃げられくなったところで尻尾をアマザが水分を飛ばした土で固定。後は下の湿地から水が上がってくるまでに水流剣で四つ切にぶったぎり。
肉塊になった巨竜から内臓を取り除き、皮はそのまま残して背負子にくくる。尻尾部分が邪魔だがなんとか内臓と食べるところがないと思われる頭部は捨てていくことで全部を俺が背負えた。昨日は出番がなかった重複化を行って持って帰る。
後で日本に買えって調べてみたのだがやはり食用のワニ肉はテールフィレ、ストリップロイン、ボンレス、手羽の部位で頭部は食べないらしい。まああっちの世界の話であって年輪都市じゃ余すところなく食べるのかも知れない。
- 3級巨竜 バチカー 1頭 買取規定額 クリア-
21日目 輝虫
明日はパーティーとしては活動せずに休息日なのだそうだ。昨日までの成果は20日中16日が指輪貸与の買取規定額を上回っており、今月の残りはあと10日間。あとは二日に1回のペースでクリアすればいいことと、俺が加わってからは今のところはボウズの日が無いことで1日休むとのこと。
今回の目的はウシなのだそうな。俺が日本の知識でまず思い浮かべるのは白と黒の模様のホルスタイン種と呼ばれる乳牛だがそんなのどかな種が大森林で生きていけるわけも無い。かといってグルメ番組で写されるような食肉用であまり動かないように牛舎に置かれているようなものでもない。
大森林にいるウシとはあっちの世界でロデオで使われたり、闘牛で使われるような筋肉が盛り上がり、激しく飛び跳ねるような気性が荒い存在なんだそうな。しかも例によってウシのくせに肉も食う雑食だ。なので歯の形状も異なるので必然的に面構えも異なる。こんなのをウシなんて呼んでいいだろうか?さすが別世界である。
運動をしてる肉は硬くて不味いという印象があるがさすがに年輪都市はそれを美味しく食べられる方法が発見されているそうだ。
攻撃的な性格をしているためか防御でなく土を踏みしめる蹄と雌雄両方にかなり立派な角が金属化している。完全に殺傷用でそれ生やしているだろうって面構えだ。繁殖期以外は単独で生活してるし接触することも多い。
大森林から逃げて都市の周り500メイトの森が伐採されて原っぱになったところまで来てもしつこく追ってくるそうで外壁修理でもたまに追いかけられてるのを見たことがある。そんな奴らを狩るために作業周りに異法士が配置されていた。
ただその性格以外は注意する点はなく、足止めとボウガンの流れで難なく狩れるそうでこの日は索敵の方が時間がかかったくらいだ。折角自分から追いかけて森の外まで出てくれるので外で狩ろうという話になり、足に故障があるホーヅ、異法で捕まえるために待機するアマザとタミーを除いた男三人で誰が囮になるかという話になり、こっちにもあるじゃんけんのようなもので俺が行くことになった。まあ如意棍を伸ばして突付いて逃げるのだから俺が一番安全だろう。
ただ先に発見されないようにだけ気をつけるように言われて森に入った。巨木の立ち枯れに身を隠して突付く機会を窺っていると木の上からヒョコヒョコと歩いてくるでっかい蟲がいる。30モイトはありそうだ。
日本にもいるタマムシの仲間のようでかなり煌びやかな輝きを放っている。なんというか宝石の細かい結晶が表面にちりばめられているように見える。
そういえばタマムシの幼虫って朽木を食べるんだっけ?既に産卵が終わって天寿をまっとうするようで目の前で力尽きて落ちてしまった。そういやタマムシの厨子なんて歴史の時間に習ったな思いながらコイツを手に取って袋に入れた。今は囮になるので背負子は外に置いてきている。
その後はなんなく怒れる雄牛さんを森の外に誘い出して足を固定、ボウガンで射て弱るまでのんびり待って狩りは終了。
このまま血抜きと洗浄、モツの廃棄を行って問題ないのかと尋ねたがどうせ夜行性の巨獣がやってきて明日の朝にはなくなっているだろうとのこと。俺は重複化を行って一人で運んだ。
10番門の警備の連中もいい加減慣れたのか自分よりもはるかに体積があり、重いはずの獲物を背負って帰って来る俺には驚くことはなく、今日も大量で羨ましいなどといわれるようになっていた。
- ウシ オス1頭 買取規定額クリア-
さーて 明日(俺に取っちゃ高校生活1日挟んで明後日だが)は休みか
何をしようかねぇ?
1メイトは1メートル
1モイトは1センチ




