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チームワークに難あり!?まだ一つになれなくて。

――ゴォォォォン!!


 会場に、巨大なドラの音が鳴り響いた。


「先鋒戦、開始(はじめ)ィィィッ!!」


審判の声と同時に、八人の一年生たちが一斉に動き出す。

東京具留米学園と大阪美食大附属。

両チームが挑むのは、それぞれが考案したオリジナルの多国籍料理。

両者ともに、すでに料理の構想と役割分担は決まっている。あとは、それを形にするだけだ。


「よっしゃあ!いくぞ!」


虎太郎が勢いよく調理台へ向かう。


「虎太郎くん!そんなに走ったら危ないよ!」


辰樹が慌てて追いかける。


「ハァ……。まったく、野蛮だね。料理は優雅に、そしてクールに作るものさ。」


月也は髪をかき上げながら、涼しい顔で調理器具を手に取った。

なでしこは何も言わず、静かに材料を並べ始める。

対する大阪チームも、すぐさま調理に取りかかっていた。


「翔亜、鴨の仕込みは予定どおり、お前に任せてええんやな?」

「当然だよ。温度も時間も計算済みだよ。むしろ、そっちの調理器具の配置が悪いね。動線を考えてないの?」

「誰が誰に言ってんねん。しっかりやれよ。」


為府が呆れたように返す。


「そっちこそ少し黙っててくれないかな!理論を理解してから話してほしいものだね!」

「理論、理論って……。口ばっかり動かしとらんと、手ぇ動かせっちゅうねん!」

「はいはい、二人とも。喧嘩してる暇があったら仕事してねー。」


百江が笑顔で二人の間に入る。


「お前もうるさいねん!」

「ええーっ!? 私、何もしてないよ!?」

「無駄話多すぎ。」


嵐が鋭い声を飛ばした。

相変わらず口論ばかりしている四人。だが、その手は誰一人として止まっていなかった。


大阪チームのメニューは、『超クリスピー春巻き 出汁ディップ添え』。

翔亜は鴨肉の状態を確認し、必要な工程を正確に進めていく。

為府は出汁の抽出に集中し、温度を完璧に調整する。

嵐は翔亜のアイディアで採用した極薄のパート・フィロを扱い、炭火の遠火で焼き上げる準備を進めていた。

百江は五香粉(ウーシャンフェン)をほんのり効かせた特製の甘辛北京ダックソースの味を整えていた。


言い合いながらも、互いの作業を把握し、必要な道具や材料を自然に受け渡している。


「……すごい。」


辰樹は、思わずその光景に見入ってしまった。


「ずっと言い合ってるのに……全然、手が止まってない……。」


翔亜が手を伸ばすより早く、嵐が必要な道具を差し出す。

百江が味を調整すれば、為府が出汁の状態を確認する。

誰かが何かを言う前に、別の誰かが動いている。


(仲は悪いのに、チームワークは抜群って……。)


辰樹が驚いている、そのときだった。


「おい、そっちの野菜取ってくれ!」

「は? 自分で取ればいいだろ!」


東京チームでは、早くも不穏な空気が流れていた。


「今、手が離せねえんだよ!」

「僕だって忙しいんだ!君の雑な指示にいちいち付き合っていられるか!」

「なんだとぉ!?」

「二人とも、落ち着いて!今は料理に集中しようよ!」


辰樹が慌てて間に入る。しかし、虎太郎と月也は互いに不満げな視線をぶつけ合っていた。

その様子を、大阪チームの為府が横目で眺める。


「ありゃ。息が合ってないみたいやな。そんなんで大丈夫なん?俺らの相手、つとまるん?」

「んだとぉ!?」

「虎太郎くん!お願いだから落ち着いてよ!」


辰樹が必死に虎太郎を宥める。そこへ、嵐が冷たい視線を向けた。


「為府、ほっとけよ。どうせ俺たちが勝つんだから。」

「なっ……!」


虎太郎の顔が引きつる。


「言わせておけば……!」

「ふん。随分と余裕じゃないか。負けたときの言い訳でも考えておくんだね…!」


月也が負けじと言い返すのを見て、翔亜が辰樹に言った。


「僕たちの仲が良くないように見えるだろうけど、君たちよりはだいぶマシって感じだね。」

「え……?」

「だって、あの二人は本気で喧嘩してるし、君はおどおどしてるだけ。あの女の子に関しては黙りっぱなし。やる前から勝負は決まりだね。」

「そ、そんな……!」


辰樹の表情が曇る。


「そんなことない! 僕たちだって……!僕たちだって……。」


言葉が続かなかった。

自分たちは、本当に一つのチームになれているのだろうか。

虎太郎と月也はずっと言い争い続けて、今もギクシャクしている。

なでしこは、相変わらず何も話さない。

そして自分は、仲裁することしかできていない。

辰樹は、悔しそうに唇を噛んだ。

そのとき。


「ねえねえ。」


百江が、なでしこの隣へやってきた。


「一言も喋ってないけど大丈夫?緊張してるの?それとももう諦めちゃった?」


百江は、にこにこと笑っていた。


「がんばろうよー。勝負投げられたら私たちもつまんないし、せっかくの対抗戦だしさ!」

「……。」


なでしこは答えなかった。百江は首を傾げる。


「あれ?聞こえてる?」


その様子を、観客席から見ていた岩井が、呆れたように呟いた。


「百江のやつ……相変わらずだね……。」

「あの子のこと知ってるの?」


隣にいた瑠衣が尋ねた。


「うん。私、中三年まで大阪にいたんだ。百江はそのときの後輩。」

「そうなの!?」

「本当はいい子で、真面目なんだけどね。ナチュラルに人を煽るような口の悪さがあって……本人には、あんまり自覚がないみたいなんだけど…。」


瑠衣は、もう一度百江を見た。本人は悪気など微塵もなさそうな笑顔で、なでしこに話しかけている。


「……なるほど……。」


瑠衣が心配そうな表情を浮かべた、そのときだった。


「……うるさい。」


小さな声が、調理場に響いた。


「……え?」


百江が目を丸くする。なでしこは、手元の作業を止めていた。


「うるさい。」

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