第7話 ぽん太くんのおこづかい
おこづかいをもらう日は、子どもにとって特別な日です。
何を買おうかなと考える時間も、とても楽しいものですね。
でも、お金は自分のためだけでなく、誰かを笑顔にするために使うこともできます。
今回は、ぽん太くんが「おこづかいの本当の大切さ」に気づく、心あたたまるお話です。
土曜日の朝。
朝食が終わると、祐子が小さな封筒を持ってきた。
「ぽん太」
「なあに?」
「今月のおこづかいよ」
ぽん太は両手で受け取った。
「やったー!」
封筒を開ける。
「わあ、千円だ!」
目がきらきら輝いた。
「ありがとう!」
祐子が笑った。
「計画的に使うのよ」
「うん!」
その様子を見ていた千春も笑った。
「今月は何を買うの?」
「まだ決めてない」
ぽん太は封筒を大事そうにしまった。
「ゆっくり考える!」
午後。
ぽん太と千春は近所の文房具屋へ出かけた。
店には新しい鉛筆やノート、消しゴム、お菓子が並んでいる。
「これ、いいなあ」
ぽん太は動物の絵が描かれた消しゴムを手に取った。
「百五十円かあ」
色鉛筆も気になる。
お菓子も気になる。
どれも欲しくなった。
「決まった?」
千春が聞いた。
「うーん……」
ぽん太は腕を組んだ。
「欲しいものがいっぱいある」
その時だった。
店の奥で、小さな男の子が困った顔をしていた。
「どうしたの?」
ぽん太が声をかけた。
男の子は棚に並んだ鉛筆を指さした。
「このえんぴつが欲しいんだけど……」
お母さんが困ったように笑った。
「今日は持ってきたお金が少なくてね」
ぽん太は値札を見た。
鉛筆は八十円だった。
少しだけ考える。
財布を開いた。
「ぼくが買うよ!」
千春が驚いた。
「いいの?」
「うん」
「困ってるみたいだから」
ぽん太は棚から同じ鉛筆を一本取り、店員さんに渡した。
「これをお願いします」
店員さんはにっこりとうなずいた。
「優しいね」
会計が終わると、ぽん太は鉛筆を男の子に差し出した。
「はい、どうぞ」
男の子は目を丸くした。
「ぼくに?」
「うん!」
「ありがとう!」
男の子は嬉しそうに鉛筆を受け取った。
お母さんも頭を下げた。
「本当にありがとうございます」
ぽん太は照れくさそうに笑った。
結局、自分は動物の絵が描かれた消しゴムだけを買った。
帰り道。
千春が聞いた。
「本当によかったの?」
「うん」
ぽん太は少し考えてから答えた。
「ぼく、おこづかいをもらって嬉しかったから」
「その子にも嬉しくなってほしかったんだ」
千春は優しく笑った。
「ぽん太らしいね」
夕食。
春川家の食卓にはカレーのいい匂いが広がっていた。
「今日は何を買ったの?」
祐子が聞いた。
ぽん太は消しゴムを見せた。
「それとね」
昼間の出来事を話し始める。
みんなは静かに聞いていた。
話し終えると、惣太郎がうなずいた。
「そうか」
ハル子が静かに言った。
「良い使い方でした」
「そうなの?」
ぽん太が聞く。
「はい」
「お金は物を買うためだけではありません」
「誰かを笑顔にするためにも使えます」
ぽん太は少し考えた。
「じゃあ、おこづかいってすごいね」
リョウ子が温かいココアを置いた。
「そうですね」
「でも、自分の欲しい物を買うことも大切ですよ」
ぽん太は笑顔でうなずいた。
「うん!」
「来月は、もっとよく考えて使う!」
千春が笑った。
「その前に、ちゃんと残しておきなさいね」
「えへへ」
ぽん太は照れくさそうに笑った。
今日のおこづかいは少し減った。
でも、ぽん太の心は、それ以上にあたたかくなっていた。
誰かの笑顔が、いちばん嬉しかったぽん太くんでした。
今回は、おこづかいを通して「思いやり」と「お金の大切さ」を描きました。
誰かのために行動すると、自分の心まで温かくなることがあります。
ぽん太くんも、その小さな親切で大きな喜びを見つけることができました。




