第6話 ぽん太くんと犬のソラ
家族には、言葉を話せなくても心が通じ合う存在がいます。
春川家にとって、トイプードルのソラも大切な家族の一員です。
今回は、ぽん太くんとソラの、心温まるお話をお届けします。
日曜日の朝。
春川家の庭は、やさしい日差しに包まれていた。
「ソラ〜っ!」
ぽん太が庭へ飛び出した。
トイプードルのソラは、しっぽを大きく振って駆け寄ってきた。
「おはよう!」
ぽん太が頭をなでると、ソラは嬉しそうに鼻を鳴らした。
「今日は何して遊ぶ?」
ソラは「ワン!」と一声鳴いて、庭を走り回った。
「よーし!」
ぽん太が追いかけた。
庭には笑い声が響いた。
しばらく遊んでいると、惣太郎が庭へ出てきた。
「ぽん太」
「なあに?」
「ソラのボール、取ってきてくれ」
「はーい!」
ぽん太は芝生に転がった赤いボールを拾い、遠くへ投げた。
ソラは勢いよく走り出した。
ところが。
ボールは庭の植え込みの奥へ入り込んでしまった。
「あれ?」
ソラは植え込みの前で止まった。
中へ入ろうとしない。
「どうしたの?」
ぽん太が近づいた。
ソラは、小さく「クゥーン」と鳴いた。
そのまま、ぽん太の前へ立った。
まるで、
「行っちゃだめ」
そう言っているようだった。
「ソラ?」
ぽん太が首をかしげた。
その時だった。
カサッ。
植え込みの中で、小さな音がした。
ぽん太は足を止めた。
葉っぱの陰から、小さな子猫が顔を出した。
「子猫だ!」
ソラは一歩も近づかなかった。
ただ、ぽん太の横に座っていた。
子猫は震えていた。
まだ小さい。
「びっくりしたね」
ぽん太はゆっくりしゃがんだ。
「大丈夫だよ」
子猫は逃げなかった。
しばらくすると、自分からぽん太の手に近づいてきた。
「よしよし」
ぽん太が優しくなでた。
ソラは、その様子を静かに見ていた。
「どうした?」
惣太郎が近づいてきた。
「子猫がいた!」
「なるほど」
惣太郎は笑った。
「だからソラは近づかなかったんだな」
ソラは「ワン!」と一度だけ小さく鳴いた。
「ソラ、分かってたの?」
ぽん太が聞いた。
ソラはまた、しっぽを振った。
「賢いなあ」
ぽん太が頭をなでると、ソラは嬉しそうに目を細めた。
その日の夕方。
リビング。
ハル子が静かにソラを見つめて言った。
「ソラちゃんは、ぽん太さんを信頼しています」
「そうなの?」
「はい」
「危険な時も、安心な時も、最初にぽん太さんを見ています」
リョウ子がお茶を運びながら、ほほえんだ。
「ソラちゃんは、子猫をびっくりさせないように待っていたのですね」
「うん!」
ぽん太は元気よくうなずいた。
「優しいんだよ」
ぽん太はソラを見た。
ソラもしっぽを振った。
「ぼくもソラを信頼してるよ」
その言葉を聞くと、ソラは嬉しそうにぽん太の足元へ寝転んだ。
惣太郎が微笑んだ。
「いい友達だな」
「うん!」
ぽん太も笑った。
「家族だよ」
ソラは目を細め、小さく「ワン」と鳴いた。
返事をしているようだった。
ぽん太はソラの頭を、そっとなでた。
ソラが大切な家族だと、あらためて感じた、ぽん太くんでした。
犬は言葉を話せません。
でも、しぐさや表情、鳴き声には、たくさんの気持ちが込められています。
ソラもまた、ぽん太くんを信頼し、ぽん太くんもソラを大切な家族として信頼しています。
そんな言葉を超えた絆が、少しでも伝わっていたらうれしいです。




