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ぽん太くんは、がんばっています  作者: 秋田コウ
第五部 三学期

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第47話 ぽん太くんのひな祭り

三月三日は、ひな祭りです。

ひな人形を飾り、ちらし寿司やひなあられを囲みながら、子どもたちの健やかな成長と幸せを願う、日本の伝統的な行事です。

今回のひな祭り、ぽん太くんは家族と過ごす中で、大切な人へ「ありがとう」を伝えることの素晴らしさに気づきます。

 三月三日。

 学校から帰ったぽん太は、リビングに飾られたひな壇の前で足を止めた。


「今日はひな祭りだね」

 おひな様やおだいり様は、いつもよりうれしそうに見えた。

 ソラはひな壇を見上げ、不思議そうに首をかしげた。

「ワン?」

 ハル子が迎えた。

「お帰りなさい」

 リョウ子もほほえんだ。

「ひな人形も、今日はうれしそうですね」

 ぽん太は一段ずつ見上げた。

「おひな様と、おだいり様」

「三人官女」

「五人ばやし」

「右大臣と左大臣」

「みんなそろっているね」


 その時、千春が帰ってきた。

「ただいま!」

「お姉ちゃん!」

「おひな様、きれいだね」

 千春はうれしそうに笑った。

「毎年見るけど、やっぱりきれい。」


 夕食の前に、ぽん太が聞いた。

「お母さん、このおひな様、きれいだね」

 祐子は、やさしくほほえんだ。

「ありがとう」

「このおひな様はね、お母さんが生まれた時に、おじいちゃんとおばあちゃんが買ってくれたの」

「えっ!」

 ぽん太は目を丸くした。

「お母さんの?」

「そうよ。」

「小さい頃は、毎年おばあちゃんと一緒に飾っていたの」

 ぽん太は、もう一度ひな人形を見上げた。

「じゃあ、ずっと大切にしてきたんだね」

 祐子は、静かにうなずいた。

「結婚するとき、おじいちゃんたちが『これも一緒に持っていきなさい』って言ってくれたの」

「だから、今は春川家で毎年飾っているのよ」

 惣太郎が笑って言った。

「最初に飾ったときは、箱がたくさんあって大変だったな」

「説明書を見ながら、一つずつ並べたんだ」

 祐子も笑った。

「あなた、おだいり様とおひな様の場所を反対に並べそうになったでしょう」

「そうだったかな」

「そうだったわよ」

 二人が笑った。

「私も小さい頃、お母さんと一緒に飾るのが楽しみだった」

 千春は少し懐かしそうに話した。

「今度は、ぽん太も一緒に飾ろうね。」

「うん!」

 食卓には、ちらし寿司、はまぐりのお吸い物、ひしもち、ひなあられが並んでいた。

「いただきます!」

 ぽん太はちらし寿司を見つめた。

「色がいっぱい!」

 祐子が笑った。

「春が来るように、明るい色がたくさん使われているのよ」

「へえ!」

 ぽん太は一口食べた。

「おいしい!」

 しばらくすると、ぽん太が聞いた。

「ねえ、お母さん」

「なあに?」

「ひな祭りって、女の子の日なんでしょ?」

「ぼくは何もしなくていいの?」

 祐子はやさしく笑った。

「ひな祭りは、女の子の健やかな成長や幸せを願う日なの」

「でもね」

「家族みんなでお祝いする日でもあるのよ」

 惣太郎もうなずいた。

「千春が元気に大きくなってくれて、うれしいなって思う日でもある」

 ぽん太は千春を見た。

「そうなんだ」

 千春は少し照れくさそうに笑った。

「ありがとう」


 食事のあと。

「ちょっと待ってて」

 ぽん太は自分の机の引き出しから折り紙を持ってきた。 

 そして、食卓で一枚一枚ていねいに折り始めた。

 やがて、小さな桃の花ができあがった。

 それを色画用紙に貼り付け、その横にゆっくりと文字を書いた。

『お姉ちゃん、いつもありがとう』

 千春は目を丸くした。

「これ……私に?」

 ぽん太は少し照れながらうなずいた。

「うん」

「ひな祭りだから」

「いつも勉強を教えてくれたり、一緒に遊んでくれたりするから」

 千春はうれしそうにカードを受け取った。

「ありがとう、ぽん太」

「部屋に飾るね」

 ぽん太もにっこり笑った。

 その様子を見ていた惣太郎が言った。

「千春が小さい頃は、おひな様を見ながら歌を歌っていたな」

 祐子も笑った。

「毎年、『うれしいひなまつり』を歌っていたわね」

「覚えてる!」

 千春が笑った。

「ぽん太は、まだ小さかったから寝てたよ」

「えー!」

 ぽん太はびっくりした。

「知らなかった!」

 家族みんなが笑った。

 ハル子が静かに言った。

「ひな祭りは、大切な人の幸せを願う、心温まる行事なのですね」

 リョウ子もほほえんだ。

「ありがとうの気持ちを伝えることも、すてきなお祝いですね」

 ぽん太は千春を見て笑った。

「来年も、ありがとうって言うね」

 千春も笑顔でうなずいた。

「楽しみにしてる」

 春のやさしい風が窓をそっと揺らしていた。


 家族の幸せを願うことと、「ありがとう」の気持ちを伝える大切さを知った、ぽん太くんでした。

ひな祭りは、子どもたちの幸せや健やかな成長を願う、心温まる行事です。

そして、大切な人へ感謝の気持ちを伝えるよい機会でもあります。

ぽん太くんは、お姉ちゃんへの「ありがとう」を手作りのカードに込めて届けました。

その小さな贈り物は、きっと千春ちゃんにとって忘れられないひな祭りの思い出になったことでしょう。

これからも、家族や友達への「ありがとう」の気持ちを大切にしながら、温かな毎日を過ごしていけたらすてきだと思います。

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