第46話 ぽん太くんの六年生を送る会
三月になると、学校では卒業の季節を迎えます。
六年生を送る会は、お世話になった六年生へ「ありがとう」の気持ちを伝える大切な行事です。
ぽん太くんは、どんな言葉を贈ればよいのか悩みます。
そんな中で見つけた、六年生の優しさとは……。
三月のある日。
今日は、松原小学校の「六年生を送る会」だった。
体育館では朝から準備が進み、色とりどりの飾り付けが並んでいた。
三年生は、六年生へ贈るメッセージカードを作ることになっていた。
「何を書こうかなあ」
ぽん太は鉛筆を持ったまま考え込んでいた。
健太はもう書き終えていた。
「ありがとうって書いた!」
さくらは、かわいい花の絵も描いていた。
「ぽん太は?」
「まだ決まらない」
ぽん太は首をかしげた。
山口先生がやさしく声をかけた。
「難しく考えなくてもいいぞ」
「ありがとうと思ったことを書けば、それだけで十分だ」
ぽん太はうなずいた。
「うーん……」
でも、まだ何を書けばいいのか思いつかなかった。
休み時間。
ぽん太たちは校庭へ出た。
その時だった。
「あっ!」
一年生の男の子が、靴ひもを踏んで転びそうになった。
すると近くを歩いていた六年生が、さっと手を伸ばした。
「大丈夫?」
「うん」
六年生はしゃがんで靴ひもを結び直してあげた。
「これでもう安心だよ」
「ありがとう!」
一年生は笑顔で走っていった。
六年生もにっこり笑っていた。
ぽん太は、その様子をじっと見つめていた。
「かっこいいなあ」
健太もうなずいた。
「ほんとだ」
教室へ戻ると、ぽん太はもう一度メッセージカードを開いた。
今度は迷わなかった。
ゆっくりと書き始める。
『いつもやさしくしてくれて、ありがとうございました。
ぼくも六年生になったら、困っている子を助けられる人になります。』
書き終えると、ぽん太は満足そうに笑った。
「できた!」
午後。
六年生を送る会が始まった。
全校のみんなが体育館へ集まった。
三年生は、一人ずつ六年生へメッセージカードを手渡した。
「ありがとうございました」
ぽん太は少し照れながらカードを渡した。
受け取った六年生は、その場で読んだ。
そして、ぽん太に笑顔で言った。
「ありがとう」
「六年生になったら、きっとなれるよ」
ぽん太もうれしそうに笑った。
「はい!」
会の最後。
在校生みんなで花のアーチを作った。
六年生が、その下をゆっくり歩いていく。
一人一人が笑顔で手を振っていた。
その中の一人が立ち止まった。
「あっ」
ぽん太は顔を上げた。
「ぼくが前に図書室へ案内したこと、覚えてる?」
ぽん太は目を丸くした。
「うん! 覚えてる!」
「ありがとう」
「これからも頑張ってね」
六年生はそう言うと、やさしく手を振って歩いていった。
ぽん太も大きく手を振り返した。
「ありがとうございました!」
放課後。
「ただいま!」
ソラが駆け寄ってきた。
「ワン!」
「ただいま、ソラ!」
ハル子が迎える。
「今日は六年生を送る会でしたね」
ぽん太は笑顔でうなずいた。
「うん! 今日はありがとうっていっぱい言えたよ」
夕食の時間になると、家族がそろった。
「今日はどんな一日だった?」
祐子が聞いた。
ぽん太はうれしそうに話し始めた。
「最初は何を書けばいいか分からなかったんだ」
「でもね」
「六年生が一年生を助けているのを見たら、書きたいことが決まった!」
惣太郎が笑った。
「人に優しくする姿は、ちゃんと誰かが見ているんだな」
千春もうなずいた。
「だから、ありがとうって言われるんだね」
ぽん太はにっこり笑った。
「ぼくも、あんな六年生になりたい!」
ハル子が静かに言った。
「優しさは、人から人へ受け継がれていくものなのですね」
リョウ子もほほえんだ。
「ぽん太さんも、きっと未来の一年生にとって、すてきなお兄さんになりますよ」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
「うん!」
春のやわらかな日差しが、春川家の窓から静かに差し込んでいた。
人に優しくする姿は、次の誰かのあこがれになることを知った、ぽん太くんでした。
「ありがとう」という言葉は、言われた人だけでなく、伝えた人の心も温かくしてくれます。
また、誰かを思いやる優しい行動は、それを見ている人の心にも残り、次の優しさへとつながっていくのでしょう。
ぽん太くんも六年生の姿を見て、「自分もあんなお兄さんになりたい」と思いました。
その気持ちは、きっと未来の一年生へと受け継がれていくでしょう。




