第43話 ぽん太くんの節分
二月になると、家々や学校で節分の豆まきが行われます。
今回は、ぽん太くんたちも家族そろって節分を楽しみます。
豆まきを通して気づいた、ぽん太くんの優しい思いに耳を傾けてみてください。
二月三日。
その日の松原小学校では、朝から節分の話題でもちきりだった。
「今日、豆まきやる?」
健太が聞いた。
「今日やるよ!」
ぽん太が答えた。
「鬼は外って大きな声で言うんだ!」
「うちはお父さんが鬼になるんだ」
「ぼくの家も!」
教室は楽しそうな声でいっぱいになった。
山口先生が教室へ入ってきた。
「みんな、節分の意味は知っているかな?」
何人かが手を挙げた。
「鬼を追い払う日!」
「豆をまく日!」
先生はうなずいた。
「そうだね」
「昔から、悪いものや病気を追い払い、新しい春を元気に迎えられるよう願う日なんだよ」
ぽん太は少し首をかしげた。
「鬼って、本当にいるの?」
教室のみんなが笑った。
先生も笑顔で答えた。
「心の中にいる鬼かもしれないね」
「心の中?」
「怒りんぼう鬼や、なまけ鬼、泣き虫鬼」
「みんなの心にもいるかもしれないよ」
ぽん太は少し考えた。
「ぼくは……」
「忘れ物鬼かな」
教室中が笑い声に包まれた。
健太がすぐに言った。
「宿題忘れ鬼もいるぞ!」
「うーん……」
ぽん太は照れくさそうに笑った。
「それもいるかも」
夕方。
春川家では、豆まきの準備が始まっていた。
リョウ子が福豆を升に入れて運んできた。
「準備ができました」
惣太郎が鬼のお面を取り出した。
「今日は、お父さんが鬼役だ」
両手を上げて近づいてくる。
「がおー!」
ぽん太は大笑いした。
「全然こわくない!」
千春も笑った。
「優しそうな鬼だね」
ソラは鬼のお面を不思議そうに見つめていた。
「ワン?」
「それじゃあ始めるぞ!」
惣太郎が鬼になって歩き始めた。
「がおー!」
「鬼は外!」
ぽん太は元気よく豆を投げた。
千春も続く。
「福は内!」
豆が床を転がる。
ソラは転がる豆を追いかけ始めた。
コロコロ……。
「ワン!」
「あっ!」
ぽん太は笑った。
「ソラ、それは食べちゃだめ!」
ソラは豆をくわえそうになって止まり、首をかしげた。
みんなが笑った。
豆まきが終わると、ぽん太は鬼のお面を拾い上げた。
「ねえ、お父さん」
「なんだ?」
「鬼さんも、豆をぶつけられたら痛いよね?」
惣太郎は少し驚いた。
「そうだな」
ぽん太は鬼のお面を見つめた。
「ぼくね」
少し考えてから言った。
「悪い鬼は追い払いたいけど」
「いい鬼がいたら、かわいそう」
その場が少し静かになった。
祐子が優しく笑った。
「ぽん太らしい考えね」
惣太郎もうなずいた。
「だから節分は、本当の鬼を追い払うんじゃなくて、悪い心を追い払う日なんだ」
ぽん太は安心したように笑った。
「そうなんだ!」
ハル子が静かに言った。
「悪い心を追い払い、優しい心を育てることが節分の願いなのですね」
リョウ子もほほえんだ。
「ぽん太さんの優しい心は、そのまま大切にしてくださいね」
ぽん太は大きくうなずいた。
「うん!」
そして、自分の年の数だけ豆を数えながら食べ始めた。
「一つ、二つ、三つ……」
少し考えて言った。
「もう一つ食べたら、もっと元気になるかな?」
千春が笑いながら言った。
「それは食べすぎ」
家族みんなの笑い声が、春川家いっぱいに広がった。
鬼を追い払うよりも、優しい心を大切にしたいと思った、ぽん太くんでした。
節分は、悪いものを追い払い、新しい春を元気に迎えられるよう願う日本の伝統行事です。
本当に追い払いたい鬼は、怒りんぼうやなまけ心など、自分の心の中にいるのかもしれません。
ぽん太くんのように、優しい心と思いやりの気持ちを大切にできたら素敵だと思います。




