第38話 ぽん太くんのお年玉
お正月の楽しみの一つといえば、お年玉です。
ぽん太くんも、家族やおじいちゃん、おばあちゃんからいただいたお年玉を前に、何を買おうかとわくわくしています。
でも、お年玉には、お金だけではない大切な思いが込められていることを、ぽん太くんは少しずつ知ることになります。
一月三日。
朝ごはんを食べ終えると、ぽん太は自分の部屋へ向かった。
机の引き出しから、お年玉のぽち袋を取り出した。
一つ、二つ、三つ、四つ。
机の上に並べると、ぽん太はうれしそうに見つめた。
「何を買おうかなあ」
そこへ千春が部屋へ入ってきた。
「何してるの?」
「お年玉を見てる!」
「決まった?」
「まだ!」
ぽん太は腕を組んだ。
「欲しいものがいっぱいあるんだ」
図鑑。
サッカーボール。
色鉛筆。
どれも欲しくなってしまう。
千春が笑った。
「全部は買えないね」
「うーん……」
ぽん太は少し考えた。
「みんなにも見せたい!」
二人は、お年玉のぽち袋を持ってリビングへ向かった。
リビングでは、幸之助とヘレンがお茶を飲んでいた。
惣太郎は新聞を読み、祐子は洗濯物をたたんでいた。
「みんな見て!」
ぽん太は、ぽち袋をテーブルの上に並べた。
「みんなからもらったんだ!」
祐子がほほえんだ。
「よかったわね」
「何を買うか決めたの?」
「まだ!」
「欲しいものがたくさんあるんだ」
その時だった。
ヘレンが立ち上がった。
「そうだわ」
「みんなに見せたいものがあるの」
棚から一冊のアルバムを持ってきた。
そして、ページをめくった。
「これよ」
「わあ!」
そこには、小さな男の子がぽち袋を持って、にこにこ笑っている写真があった。
「この子、だあれ?」
ぽん太が聞いた。
惣太郎は少し照れくさそうに笑った。
「ぼくだよ」
「えーっ!」
ぽん太は写真と惣太郎の顔を何度も見比べた。
「お父さんも、お年玉をもらってたの?」
「もちろん」
幸之助が笑った。
「毎年、お年玉を渡していたよ」
惣太郎もうなずいた。
「何を買おうか、毎年ずいぶん悩んだな」
「お父さんも?」
「そうだよ」
ぽん太は少しうれしくなった。
「ぼくと同じだ!」
ヘレンは写真を優しく見つめた。
「この写真を撮ったのは、もう二十年以上前なの」
「昨日のことみたいだけれど、本当にあっという間だったわ」
ぽん太は首をかしげた。
「ぼくも、お父さんみたいに大人になるの?」
ヘレンはにっこり笑った。
「もちろんよ」
「だから、一年一年を大切に過ごしてほしいの」
祐子も、ぽん太の頭を優しくなでた。
「お母さんはね」
「ぽん太が元気に大きくなってくれることが、一番うれしいわ」
幸之助もうなずいた。
「お年玉には、『今年も元気に大きくなってね』という願いが込められているんだ」
ぽん太は、ぽち袋を見つめた。
「そうだったんだ……」
しばらく考えてから、顔を上げた。
「ぼく、決めた!」
「何を?」
千春が聞いた。
「半分は貯金する!」
「もう半分で図鑑を買う!」
「図鑑?」
惣太郎が笑った。
「何の図鑑だ?」
「虫と鳥!」
「もっといろんなことを知りたいんだ」
千春が笑った。
「ちゃんと最後まで読むんだよ」
「うん!」
「たぶん!」
「また『たぶん』なの?」
家族みんなが笑った。
ハル子が静かに言った。
「よく考えて決めましたね」
リョウ子もほほえんだ。
「お年玉をくださった皆さんも、きっと喜ばれますね」
ぽん太は大きくうなずいた。
「大切に使う!」
テーブルの上には、お年玉のぽち袋と、昔の惣太郎の写真が並んでいた。
ぽん太は写真を見つめながら、にっこり笑った。
「ぼくも、お父さんみたいに少しずつ大きくなるんだね」
冬のやわらかな日差しが、春川家のみんなを優しく包んでいた。
お年玉には、お金だけでなく、家族の願いと愛情が込められていることを知った、ぽん太くんでした。
お年玉は、子どもたちにとって楽しみなお正月の贈り物です。
その一方で、「元気に大きく育ってほしい」「新しい一年も健やかに過ごしてほしい」という、家族の願いや愛情が込められています。
お年玉を大切に使おうと決めたぽん太くん。
そんな気持ちからも、少しずつ成長していることが伝わってきます。




