第36話 ぽん太くんの初もうで
お正月には、新しい一年がよい年になるよう願って、神社へ初もうでに出かける人がたくさんいます。
今回は、ぽん太くんも家族みんなで初もうでに出かけます。
そこで出会った出来事を通して、ぽん太くんの優しい心があたたかく伝わってきます。
元日の午後。
春川家のみんなは、幸之助とヘレン、それにソラも一緒に、近くの神社へ初もうでに出かけた。
空は青く澄み、冷たい空気が頬に気持ちよかった。
神社には、新しい年を迎えたたくさんの人がお参りに来ていた。
「すごい人!」
ぽん太は目を丸くした。
幸之助が笑った。
「みんな、新しい一年がよい年になりますようにと、お参りに来るんだ」
「ぼくもお願いする!」
参道へ入ると、人がさらに多くなった。
リョウ子が周りを見渡した。
「今日は混んでいますね」
そう言うと、ソラをそっと抱き上げた。
「人が多いので、ここは抱っこして行きましょうね」
ソラは安心したように、「ワン」と小さく鳴いた。
「ソラも初もうでだね」
ぽん太はうれしそうに笑った。
鳥居の前まで来ると、ハル子が静かに言った。
「鳥居をくぐる前に、一礼しましょう」
家族みんなで軽く頭を下げ、境内へ入った。
手水舎では、幸之助が手本を見せた。
「左手、右手、それから口をすすぐんだ」
「なるほど!」
ぽん太も見よう見まねでやってみた。
「できた!」
みんなが笑顔になった。
拝殿の前まで来ると、大きな鈴が下がっていた。
その時だった。
前にいた小さな女の子が、一生懸命手を伸ばしていた。
「もう少し……」
でも、鈴の縄には届かなかった。
ぽん太は女の子のそばへ行った。
「ぼくが鈴の縄を手前に引いてあげるね」
ぽん太が鈴の縄を少し手前へ引くと、女の子は両手で鈴を鳴らした。
カラン、カラン。
「できた!」
女の子はうれしそうに笑った。
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
ぽん太も笑顔になった。
みんなで順番を待っていると、今度は後ろで小さな音がした。
コロコロ……。
「あっ!」
男の子がお賽銭の五円玉を落としてしまった。
硬貨は石畳の上を転がっていった。
ぽん太はすぐに追いかけ、五円玉を拾った。
「はい」
「ありがとう!」
男の子は大事そうに受け取った。
お母さんも頭を下げた。
「ありがとうございます」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
ようやく春川家の順番が来た。
幸之助が小さな声で言った。
「二礼、二拍手、一礼だよ」
ぽん太も同じようにお参りをした。
手を合わせ、静かに目を閉じた。
(みんなが元気でいますように)
(健太も、さくらも、夏輝も、優太も元気でいますように)
(ソラも元気でいますように)
最後に、そっと目を開けた。
お参りを終えると、ぽん太は「おみくじ」と書かれた札を見つけた。
「ぼく、おみくじ引いてみたい!」
ぽん太はおみくじを一つ引いた。
「小吉!」
ぽん太は少しだけ首をかしげた。
「大吉じゃなかった」
幸之助が笑った。
「大吉でも小吉でも、一番大切なのは書いてあることを大切にすることなんだ」
ヘレンもうなずいた。
「毎日を大切に過ごせば、きっとすてきな一年になるわ」
ぽん太はおみくじをもう一度見た。
「じゃあ、小吉でも大丈夫なんだ!」
「もちろん」
ヘレンは優しくほほえんだ。
帰り道。
ソラは楽しそうにぽん太の横を歩いていた。
ぽん太はソラの頭をなでた。
「ソラも一緒にお願いした?」
「ワン!」
家族みんなが笑った。
ハル子が静かに言った。
「願い事は、願うだけでなく、その願いに向かって努力することも大切ですね」
リョウ子もほほえんだ。
「今年も皆さんが健康で、笑顔いっぱいの一年になりますように」
ぽん太は大きくうなずいた。
澄み切った冬の青空が、春川家のみんなをやさしく包んでいた。
大切な人たちの幸せを願い、新しい一年を迎えた、ぽん太くんでした。
初もうでは、新しい一年への願いや感謝の気持ちを込めてお参りをする、日本の大切な行事です。
ぽん太くんは、自分のことだけでなく、家族や友達、そしてソラの幸せも願いました。
人を思いやる気持ちや、願いに向かって努力する心を大切にしながら、一年を過ごしていけたらすてきだと思います。




