第30話 おかえり、おじいちゃん、おばあちゃん
遠く離れて暮らしていても、家族を思う気持ちは変わりません。
会えない時間があるからこそ、久しぶりに会えた時の喜びは、いっそう大きくなります。
ぽん太くんが心を込めて書いた一通の手紙は、海を越えて、おじいちゃんとおばあちゃんの心に届きました。
今日は、その手紙から始まる、心温まる再会のお話です。
十二月になり、朝の空気もすっかり冬らしくなった。
その週の土曜日。
ぽん太は朝からそわそわしていた。
「まだ行かないの?」
ぽん太が玄関の方を見た。
千春が笑った。
「ぽん太、もう三回目だよ」
「だって、早く会いたいんだもん」
今日は、アメリカからおじいちゃんとおばあちゃんが帰ってくる日だった。
惣太郎が車の鍵を持った。
「そろそろ空港へ行こうか」
「やったー!」
ぽん太は元気よく飛び上がった。
空港には、大きな荷物を持った人たちがたくさんいた。
ぽん太は到着口の前で背伸びをした。
「まだかな」
「もうすぐだよ」
祐子が優しく言った。
自動ドアが開くたびに、ぽん太は目を輝かせた。
そして――。
「あっ!」
惣太郎が小さく声を上げた。
出口から、白い髪の男性と、やさしい笑顔の女性が歩いてきた。
「父さん!」
「母さん!」
惣太郎が手を振る。
ぽん太はすぐに分かった。
「おじいちゃん!」
「おばあちゃん!」
ぽん太は走っていった。
おじいちゃんは幸之助。
おばあちゃんはヘレン。
二人は惣太郎の父と母だった。
幸之助はぽん太をぎゅっと抱きしめた。
「大きくなったなあ」
ヘレンもにこにこしながら言った。
「ぽん太、会いたかったわ」
千春も駆け寄った。
「おじいちゃん、おばあちゃん、おかえりなさい!」
ヘレンは千春を優しく抱きしめた。
「千春も、すっかりお姉さんね」
車の中でも、ぽん太は話したいことがいっぱいだった。
「手紙、読んでくれた?」
幸之助は胸ポケットから、少し折り目のついた封筒を出した。
「もちろん」
「何度も読んだよ」
ヘレンもうなずいた。
「読んでいたら、どうしても会いたくなったの」
「ほんと?」
「ああ」
幸之助が笑った。
「ぽん太の手紙が、背中を押してくれたんだ」
ぽん太はうれしくて、何度もうなずいた。
春川家へ帰ると、ハル子とリョウ子が玄関で迎えてくれた。
「おかえりなさいませ」
「お待ちしておりました」
ソラも走ってきた。
「ワン! ワン!」
幸之助は笑いながらしゃがんだ。
「ソラも元気だったか」
ソラはしっぽを振り続けた。
リビングに入ると、ぽん太は聞いた。
「おじいちゃんたち、いつまでいるの?」
幸之助はヘレンと顔を見合わせて笑った。
「今年は冬休みの間、日本でみんなと過ごすことにしたよ」
「えっ!」
ぽん太の顔がぱっと明るくなった。
「お正月も一緒?」
「もちろん」
ヘレンが微笑んだ。
「やったー!」
千春もうれしそうに笑った。
「今年の冬休み、にぎやかになりそうだね」
その日の夕食は、とてもにぎやかだった。
リョウ子が作った料理が、テーブルいっぱいに並んだ。
「いただきます!」
みんなの声がそろった。
ぽん太は学校のこと、夏輝のこと、運動会のこと、手紙のことを次々に話した。
幸之助もヘレンも、何度もうなずきながら聞いていた。
ハル子が静かに言った。
「ご家族がそろうと、会話も笑顔も増えますね」
リョウ子もほほえんだ。
「今日は、とてもあたたかい食卓です」
ぽん太はみんなの顔を見回した。
おじいちゃん。
おばあちゃん。
お父さん。
お母さん。
お姉さん。
ハル子さん。
リョウ子さん。
そしてソラ。
みんなが笑っていた。
「家族って、いいね」
ぽん太が言った。
幸之助が優しくうなずいた。
「そうだな」
「家族は、離れていてもつながっている」
ヘレンも微笑んだ。
「そして、会えるともっとあたたかくなるのね」
ぽん太は大きくうなずいた。
「うん!」
今年の冬休みは、きっと楽しい毎日になる。
そう思うだけで、ぽん太の胸はぽかぽかした。
大好きなおじいちゃんとおばあちゃんを迎え、家族と過ごす時間の大切さを感じた、ぽん太くんでした。
家族は、いつも一緒にいられるとは限りません。
遠く離れて暮らしていても、お互いを思い合う気持ちは、手紙や言葉を通してつながっています。
そして、久しぶりに顔を合わせて笑い合う時間は、何よりもかけがえのない宝物になります。
ぽん太くんの一通の手紙は、おじいちゃんとおばあちゃんを日本へ迎えるきっかけとなり、春川家にはたくさんの笑顔があふれました。
心を込めて伝えた言葉は、人の心を動かし、新しい思い出を生み出してくれます。
家族と過ごす温かな時間の大切さを、あらためて感じさせてくれる一日になりました。




