第29話 ぽん太くんからの手紙
今は、電話やメールですぐに気持ちを伝えられる時代になりました。
それでも、一文字ずつ心を込めて書く手紙には、言葉だけでは伝えきれない温かさがあります。
今回は、ぽん太くんが大好きなおじいちゃんとおばあちゃんへ、心を込めて手紙を書いたお話です。
校庭の木々も葉を落とし、冬の訪れを感じる季節になった。
国語の時間。
山口先生が一枚の便せんを持って教室の前に立った。
「今日は手紙を書いてみよう」
「家族でも、親せきでも、友達でもいい」
「日ごろ伝えたいことを、手紙に書いてみよう」
教室のみんなが考え始めた。
「ぼく、おばあちゃんに書く!」
「ぼくはいとこにする!」
楽しそうな声があちこちから聞こえてきた。
ぽん太も便せんを見つめた。
(ぼくは……。)
思い浮かんだのは、アメリカで暮らしている、おじいちゃんとおばあちゃんだった。
以前、おじいちゃんから手紙をもらったことがある。
「今度は、ぼくが書こう」
ぽん太は鉛筆を握った。
少し考えてから、一文字ずつ丁寧に書き始めた。
おじいちゃん、おばあちゃんへ。
お元気ですか。
ぼくは元気です。
夏休みに工場へ行きました。
ネジは、1ミリ違うだけでも大変なんだと知りました。
自由研究では、アリを毎日観察しました。
運動会では二位になりました。
学校では、新しい友達もできました。
毎日、元気に学校へ通っています。
お体に気をつけて、お元気でいてください。
ぽん太より
書き終えると、ぽん太は大きく息をついた。
「いっぱい書いたね」
夏輝がのぞき込む。
「うん」
「もっと書きたかったけど、便せんがいっぱいになっちゃった」
山口先生も笑顔でうなずいた。
「きっと喜んでくれるぞ」
ぽん太は照れくさそうに笑った。
家へ帰ると、ハル子とリョウ子が迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま!」
ぽん太はランドセルから便せんを取り出した。
「見て!」
「おじいちゃんとおばあちゃんに手紙を書いたんだ」
ハル子が優しく読んだ。
「学校であった出来事が、よく伝わりますね」
リョウ子もうなずいた。
「読む方は、ぽん太さんの成長を感じられると思います」
ぽん太は少し照れながら言った。
「早く読んでもらいたいな」
その日の夜。
仕事から帰ってきた惣太郎が手紙を読んだ。
「よく書けているな」
ぽん太は少し心配そうに聞いた。
「お父さん」
「この手紙、アメリカまで届くの?」
惣太郎は笑顔でうなずいた。
「もちろん届くよ」
「でも、日本の手紙とは少し違うんだ」
「住所は英語で書くし、郵便局から送るんだよ」
「そうなんだ!」
ぽん太は初めて知って目を丸くした。
「じゃあ、お願いします!」
「任せておけ」
惣太郎は優しく笑った。
翌日。
惣太郎は工場へ行く前に郵便局へ立ち寄った。
窓口で手紙を渡す。
「アメリカまでお願いします」
局員さんが笑顔で受け取った。
「お預かりします」
その日の夕方。
工場から帰ってきた惣太郎が言った。
「ぽん太」
「手紙、ちゃんと送ってきたぞ」
ぽん太の顔がぱっと明るくなった。
「ありがとう!」
窓の外には、澄み切った秋の空が広がっていた。
遠く離れていても、手紙なら気持ちを届けることができる。
ぽん太は、おじいちゃんとおばあちゃんが手紙を読んで笑顔になる姿を思い浮かべた。
その手紙が、春川家のみんなを笑顔にする出来事につながることを、このときのぽん太は、まだ知りませんでした。
大切な人を思う気持ちは、手紙にのせて届けられることを知った、ぽん太くんでした。
手紙は、遠く離れた人へ気持ちを届けることができる、不思議で素敵な贈り物です。
一文字ずつ丁寧に書かれた手紙には、「元気でいてね」「会いたいな」という思いや、書いた人の優しい心が込められています。
大切な人を思う気持ちは、きっと言葉にのせれば、遠く離れていても相手の心へ届くのでしょう。




