第28話 ぽん太くんのありがとう
毎日の暮らしの中では、家族や友達に助けてもらうことがたくさんあります。
でも、助けてもらうことが当たり前になってしまうと、大切な「ありがとう」を言い忘れてしまうこともあります。
今回は、ぽん太くんが「ありがとう」という言葉の大切さに気づいたお話です。
朝の空気が少しひんやりしてきた。
ぽん太は朝ごはんを食べ終わると、ランドセルを背負った。
「行ってきます!」
元気よく玄関へ向かった、その時だった。
ハル子が静かに声をかけた。
「ぽん太さん」
「はい?」
「今日は少し冷えています」
「上着をお持ちください」
「あっ!」
ぽん太は急いで上着を羽織った。
ハル子は続けた。
「ハンカチとティッシュも入っていません」
「えっ!」
ランドセルを開けると、本当に入っていなかった。
「危なかった!」
その様子を見ていた千春が笑った。
「ぽん太、大丈夫?」
「もう一回ランドセルの中、見た方がいいんじゃない?」
「大丈夫だよ!」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
惣太郎も笑顔で言った。
「慌てると、忘れ物も増えるぞ」
「うん!」
ぽん太は元気よく返事をして、家を飛び出した。
しばらく走った、その時だった。
「ぽん太さん!」
後ろから声が聞こえた。
振り返ると、リョウ子が水筒を持って走ってきた。
「これをお忘れです」
「あっ!」
ぽん太は目を丸くした。
「水筒!」
リョウ子は少し息を整えながら、水筒を差し出した。
「日中は気温が上がるそうです」
「水分をしっかり取ってくださいね」
ぽん太は水筒を受け取った。
「うん、わかった」
「行ってきます!」
リョウ子は優しく手を振った。
「行ってらっしゃい」
学校では図工の時間だった。
秋の景色を描いていると、ぽん太の黄色い色鉛筆が机の下へ転がった。
「あっ!」
拾おうとした時、夏輝が先に拾ってくれた。
「はい」
「ありがとう!」
夏輝はにっこり笑った。
「どういたしまして」
その時だった。
健太が困った顔をしていた。
「あれ?」
「のりがない!」
ランドセルの中を探した。
でも、見つからなかった。
ぽん太は自分ののりを差し出した。
「一緒に使おう」
「いいの?」
「うん!」
健太は嬉しそうに受け取った。
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
ぽん太も笑顔になった。
帰り道。
ぽん太は歩きながら、今日のことを思い返していた。
「ありがとうって言うのも、言われるのも、なんだか気持ちがいいな」
そう思いながら歩いていると、ふと朝のことを思い出した。
「あっ!」
ぽん太は立ち止まった。
「ハル子さんに、ありがとうって言ってない」
上着を教えてくれた。
ハンカチとティッシュも教えてくれた。
急いでいたので、そのまま家を出てしまった。
「リョウ子さんにも、ありがとうって言ってない」
走って水筒を届けてくれたのに。
「早く帰ろう!」
ぽん太は急いで家まで走った。
「ただいま!」
家へ帰ると、ハル子とリョウ子が迎えてくれた。
「おかえりなさい」
ぽん太はハル子の前へ立った。
「ハル子さん」
「はい」
「朝、上着とハンカチを教えてくれてありがとう」
「忘れたままだったら、困ってたよ」
ハル子は静かにほほえんだ。
「お役に立ててよかったです」
ぽん太は続いてリョウ子を見た。
「リョウ子さん」
「はい」
「朝、水筒を届けてくれてありがとう」
「学校で、ちゃんと飲めたよ」
リョウ子も優しく笑った。
「それはよかったです」
ハル子が静かに言った。
「感謝の気持ちは、思っているだけでは相手に伝わりません」
リョウ子もうなずいた。
「『ありがとう』と言っていただけると、とてもうれしいですね」
ぽん太は照れくさそうに笑った。
「ぼく、これからは思ったら、すぐ『ありがとう』って言う!」
ハル子とリョウ子も笑顔でうなずいた。
感謝の気持ちは、言葉にして伝えることが大切だと学んだ、ぽん太くんでした。
「ありがとう」という言葉は、とても短い言葉です。
でも、その一言には、相手への感謝や思いやりがたくさん詰まっています。
感謝の気持ちは、心の中で思うだけでなく、言葉にして伝えることで、相手にも自分にも笑顔を届けてくれます。
「ありがとう」があふれる毎日は、きっともっと優しく、幸せな毎日になるのでしょう。




