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ぽん太くんは、がんばっています  作者: 秋田コウ
第三章 二学期

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第23話 ぽん太くんは怒りました

やさしいぽん太くんは、いつもにこにこと笑っている男の子です。

でも、人が悲しむ姿を見たときには、勇気を出して「それは違うよ」と伝えることもあります。

本当の優しさとは何かを考えさせてくれる、そんなお話です。

 秋風が心地よく吹く午後。

 学校が終わり、ぽん太は健太や夏輝たちと公園へ向かった。


「今日は何して遊ぶ?」

「鬼ごっこ!」

「サッカー!」

「ドッジボール!」

 みんな好き勝手に言った。

 ぽん太が笑った。

「全部やろう!」

 結局、最初は鬼ごっこになった。

 しばらく遊んでいると、ベンチで小さな男の子が泣いていた。

 ぽん太は駆け寄った。

「どうしたの?」

 男の子は涙をぬぐいながら指をさした。

「あれ……」

 見ると、木の枝に模型飛行機が引っかかっていた。

「お母さんにもらった飛行機なんだ」

「取れなくなっちゃった……」

 ぽん太は木を見上げた。

「取ってみようか」


 その時だった。

「そんなの、もう捨てれば?」

 近くにいた高学年の男の子が笑った。

「どうせ安いおもちゃだろ」

 男の子はまたうつむいてしまった。

 ぽん太の笑顔が消えた。

「そんなこと言っちゃだめだよ」

 静かな声だった。

 高学年の子は笑った。

「なんで?」

「安いものじゃん」

 ぽん太は首を振った。

「値段じゃない」

「その子の大事なものなんだ」

「だから笑っちゃだめ」

 いつものぽん太とは違う声だった。

 健太も夏輝も黙って見ていた。

 高学年の子は、笑うのをやめた。

 ぽん太は怒鳴らなかった。

 にらみもしなかった。

 でも、その言葉はまっすぐだった。

「大事なものを笑うのは、だめだよ」

 しばらく沈黙が続いた。


 やがて高学年の子は小さくつぶやいた。

「……悪かった」

 そう言って、その場を離れていった。


 ぽん太はもう一度、木を見上げた。

「ちょっと待っててね」

 近くに落ちていた長い枝を拾った。

 場所を少し変えながら枝を伸ばした。

「ここかな」

 ちょん。

 模型飛行機が枝から外れた。

 ぽん。

 落ちてきた飛行機を、ぽん太が両手で受け止めた。

「はい」

 男の子の顔がぱっと明るくなった。

「ありがとう!」

 飛行機を大事そうに胸へ抱いた。

 その笑顔を見て、ぽん太も笑顔になった。


 夕方。

 家族みんなで夕食を食べていた。

 祐子が聞いた。

「今日は学校で何かあった?」

 ぽん太は少し考えた。

「今日ね」

「ぼく、怒っちゃった」

 千春が驚いた。

「ぽん太が?」

 惣太郎も少し驚いた。

「珍しいな」

 ぽん太は今日あったことを話した。

「大事な飛行機を笑われてたんだ」

「だから」

「そんなこと言っちゃだめって言った」

 祐子は静かにうなずいた。

「そうだったの」

 惣太郎も笑顔になった。

「大事なものは、人それぞれだからな」

 ハル子が静かに言った。

「価格と大切さは一致しません」

 リョウ子がほほえんだ。

「だからこそ、相手の気持ちを大切にすることが大事なんですね」

 ぽん太は少し照れくさそうに笑った。

「難しいことは分からないけど」

「悲しそうだったから」

 みんなが優しく笑った。


 誰かを守るために、勇気を出して伝えなければならない時もあります。

 この日のぽん太は、小さな男の子の気持ちを守ることができました。


 相手の気持ちを守ることの大切さを知った、ぽん太くんでした。

ぽん太くんは、大きな声を出したり相手を責めたりはしませんでした。

ただ、「大事なものを笑ってはいけない」という気持ちを、まっすぐな言葉で伝えました。

その思いが相手にも届いたからこそ、高学年の男の子も自分の言葉を振り返ることができたのでしょう。

相手を思いやる気持ちを忘れず、伝えるべきことは勇気を持って伝える。

そんな優しさを、これからも大切にしてほしいと思います。

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