第21話 ぽん太くんの席替え
長い夏休みが終わり、学校では新しい二学期が始まりました。
新しい学期には、席替えや新しい係など、少しどきどきする出来事がたくさんあります。
今回は、席替えをきっかけに、ぽん太くんが新しいお友達と少しずつ仲良くなっていくお話です。
相手の気持ちを大切にするぽん太くんは、どんな出会いをするのでしょうか。
二学期が始まった。
夏休みの思い出を話す声で、教室は朝からにぎやかだった。
山口先生が教室へ入ってきた。
「みんな、おはよう!」
「おはようございます!」
「今日は席替えをするぞ」
「やったー!」
「えー!」
教室中から、いろいろな声が聞こえた。
ぽん太も少しだけどきどきした。
「今の席も好きだったんだけどな」
窓から校庭の木がよく見える席だった。
でも、新しい席にも少しわくわくしていた。
一人ずつ、くじを引いていった。
「ぽん太は、この席だ」
山口先生が指さしたのは、教室の真ん中の席だった。
「ここだ!」
ランドセルを置いた。
しばらくすると、一人の男の子がやって来た。
「夏輝、お前はその隣だ」
夏輝は静かに席へ座った。
ぽん太は笑顔で言った。
「よろしく!」
夏輝は少しだけうなずいた。
「……よろしく」
それだけだった。
休み時間になる。
教室では、あちらこちらで話し声が聞こえた。
でも、夏輝は静かに本を読んでいた。
ぽん太は声をかけた。
「一緒に遊ばない?」
夏輝は少し困ったように笑った。
「今日はいいや」
「そっか」
ぽん太はそれ以上何も言わなかった。
昼休みになっても、夏輝は一人で本を読んでいた。
ぽん太は校庭へ向かいながら、何度も振り返った。
健太が聞いた。
「どうした?」
ぽん太は少し考えた。
「なんとなく……」
「一人でいるのが好きなのかな」
「でも、少しさみしそうにも見えるんだ」
健太も夏輝を見た。
「そうかなあ」
「そのうち一緒に遊ぶようになるよ」
次の日。
体育の時間だった。
山口先生が言った。
「今日はドッジボールをするぞ!」
みんなは元気よく校庭へ飛び出した。
ぽん太も健太も走っていった。
でも、夏輝だけは校庭の端で立ち止まっていた。
山口先生が近づいた。
「夏輝、どうした?」
夏輝は少しうつむいた。
「ぼく……当たるのが怖いんだ」
山口先生は優しくうなずいた。
「そうか」
「でも、一度やってみるか」
ぽん太も駆け寄った。
「大丈夫!」
「ぼくも最初は怖かったよ!」
夏輝が顔を上げた。
「ほんと?」
「うん!」
「逃げるだけでもいいんだよ!」
「一緒にやろう!」
夏輝は少し考えて、小さくうなずいた。
「……やってみる」
試合が始まった。
最初はボールを避けるだけだった。
でも、
「ナイス!」
ぽん太が声をかけた。
「惜しい!」
健太も笑顔で応援した。
夏輝は少しずつ動けるようになった。
飛んできたボールを両手で受け止めた。
「取った!」
思わず夏輝が笑った。
「やった!」
ぽん太も健太も大喜びだった。
試合が終わるころには、夏輝も楽しそうに笑っていた。
放課後。
二人は一緒に教室を出た。
夏輝がぽつりと言った。
「昨日、ごめんね」
「どうして?」
「ぼく、人と話すのが少し苦手なんだ」
「だから、休み時間は本を読んでることが多いんだ」
ぽん太は少し考えて笑った。
「そうだったんだ」
「じゃあ、ゆっくり仲良くなればいいね!」
夏輝も笑顔になった。
「うん」
「ありがとう」
家へ帰ると、ハル子とリョウ子が迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま!」
リョウ子がランドセルを受け取った。
「今日は席替えでしたね」
ぽん太は嬉しそうに話し始めた。
「夏輝くんと仲良くなれたよ!」
「昨日は遊ばなかったけど」
「今日は一緒にドッジボールをしたんだ」
「なんとなく」
「待ってあげた方がいい気がしたんだ」
ハル子が静かにほほえんだ。
「人には、それぞれ自分のペースがあります」
リョウ子もうなずいた。
「そのペースを大切にしてあげることも、優しさですね」
夕方。
祐子と千春、そして仕事を終えた惣太郎が帰ってきた。
「ただいま!」
「おかえり!」
ぽん太は待っていたように話し始めた。
「今日ね、夏輝くんと仲良くなれたよ!」
千春が笑った。
「よかったね」
祐子もうなずいた。
「席替えって、新しい出会いもあるものね」
惣太郎がぽん太の頭を優しくなでた。
「相手のことを考えられるぽん太らしいな」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
「明日も一緒に遊ぶ約束をしたんだ!」
窓の外では、秋の風が校庭の木々をやさしく揺らしていた。
相手の気持ちを大切にしながら、新しい友達と出会った、ぽん太くんでした。
新しい出会いは、うれしい反面、少し緊張することもあります。
人には、それぞれ得意なことや苦手なことがあり、仲良くなる速さも一人ひとり違います。
ぽん太くんは、無理に話しかけ続けるのではなく、夏輝くんの気持ちやペースを大切にしながら、そっと寄り添いました。
その思いやりが、少しずつ二人の心の距離を近づけ、新しい友情へとつながったのです。




