第20話 ぽん太くんの自由研究
楽しかった夏休みも、残りあとわずかになりました。
夏休みの宿題の中でも、自由研究は「自分が知りたいこと」を見つける特別な勉強です。
今回は、ぽん太くんが身近なアリを夢中で観察し、小さな発見を積み重ねていくお話です。
ぽん太くんの「なんで?」は、どんな自由研究になるのでしょうか。
夏休みも、あと一週間。
ぽん太は机の前で腕を組んでいた。
「うーん……」
自由研究。
まだ何をするか決まらなかった。
隣で千春は工作をしていた。
「ぽん太、まだ決まらないの?」
「うん」
「去年は?」
「アサガオを毎日見てた」
「今年は?」
「まだ見つけてない」
ぽん太は天井を見上げた。
「自由って難しいね」
千春は思わず笑った。
「自由研究だからね」
その日の午後。
庭でソラと遊んでいると、ぽん太は一匹のアリを見つけた。
「あれ?」
アリはパンくずを運んでいた。
一匹。
二匹。
三匹。
どんどん集まってきた。
「なんで分かるんだろう?」
ぽん太はしゃがみ込んだ。
気が付くと、
一時間。
二時間。
夢中で見続けていた。
リョウ子が麦茶を持ってきた。
「熱中症になります」
「ありがとう」
ぽん太はコップを受け取った。
「ねえ、リョウ子さん」
「アリって、どうやって仲間を呼ぶの?」
「フェロモンです」
「ふぇろもん?」
「においで仲間に知らせています」
「へぇー!」
ぽん太の目が輝いた。
「それにしよう!」
翌日から、自由研究が始まった。
毎朝。
毎昼。
毎夕方。
ぽん太は庭へ行った。
アリを見て、
ノートに書いて、
また見た。
「今日はパン」
「今日はビスケット」
「今日は砂糖」
毎日続けた。
ハル子が聞いた。
「飽きませんか?」
「うん!」
ぽん太は笑った。
「毎日違うから」
ハル子は少し考えた。
「昨日と同じ場所ですが」
「でも、アリは違うよ」
ぽん太は楽しそうだった。
数日後。
ぽん太はノートを見つめていた。
「変だなあ」
惣太郎が聞いた。
「どうした?」
「パンより、おせんべいの方が早く見つかる」
「へえ」
「でも、お砂糖はもっと早い」
リョウ子が方眼紙を持ってきた。
「こうすると、違いが分かりやすくなりますよ」
「ほんとだ!」
ぽん太は点を打ち始めた。
「なんとなく、こうかな」
点を線でつないでいった。
いつの間にか、一枚のグラフができあがっていた。
「できた!」
惣太郎はグラフを見て驚いた。
「きれいにまとまっているな」
「そう?」
「この夏、ぽん太はいろいろなものを、よく見てきただろう」
「だから、小さな違いにも気づけたんだな」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
「アリを見てただけなのに」
二学期。
自由研究の発表の日。
ぽん太は教室の前に立った。
「ぼくは、アリを調べました」
教室のみんなが聞いていた。
「アリは、おいしいものを見つけると仲間を呼びます」
「パンも好きだけど、お砂糖はもっと好きでした」
クラスのみんなが笑った。
「ぼくも甘いもの好きです」
教室が明るい笑い声に包まれた。
「毎日見ていたら、少しずつ違うことが分かりました」
ぽん太は最後に頭を下げた。
「終わります」
大きな拍手が起こった。
「すごいな!」
「よく毎日調べたね」
友達が話しかけた。
「大変だった?」
ぽん太は笑った。
「ううん」
「楽しかった!」
その日の夕食。
「先生が褒めてくれたよ!」
ぽん太は嬉しそうだった。
祐子が笑顔で言った。
「努力の成果だね」
惣太郎もうなずいた。
「毎日続けたからだな」
ハル子は静かに言った。
「続けて観察することで、新しい発見が生まれます」
リョウ子も微笑んだ。
「毎日少しずつ続けたことが、一番の成果ですね」
ぽん太は首をかしげた。
「ぼく、アリが好きになった」
その一言に、みんなが笑った。
その夜。
ぽん太は自由研究のノートをランドセルへしまった。
「夏休み、楽しかったなあ」
千春が笑った。
「自由研究も終わったね」
「うん!」
「また新しいことを見つけたい!」
窓の外では、秋の虫が鳴き始めていた。
アリの研究は終わった。
でも、ぽん太の「なんで?」は、まだまだ続いていく。
小さな「なんで?」を大切にしている、ぽん太くんでした。
自由研究は、答えを探すことだけではなく、「どうしてだろう」と思う気持ちを大切にすることから始まります。
ぽん太くんは、一匹のアリとの出会いをきっかけに、毎日観察を続け、小さな違いを見つける楽しさを知りました。
その積み重ねが、すてきな自由研究となり、新しい発見につながったのです。
こうして、ぽん太くんの夏休みは終わりました。
しかし、ぽん太くんの「なんで?」は、これからも毎日の暮らしの中で、新しい発見へとつながっていくことでしょう。




