第19話 ぽん太くんの工場探検
工場では、たくさんの人や機械が力を合わせて、ものづくりをしています。
今回は、ぽん太くんと千春ちゃんが工場探検に出かけるお話です。
見学だけではなく、楽しいゲームを通して、ものづくりの工夫や働くことの大切さを学びます。
ぽん太くんは、工場のみんなからどんなことを教えてもらうのでしょうか。
夏休みも、中ごろになった。
その日、ぽん太と千春は惣太郎と一緒に工場へやって来た。
「今日は工場へ遊びに来ていただき、ありがとうございます」 入口では、セイ子が笑顔で迎えてくれた。
「今日は見学ではありません」
「二人に工場のお仕事を体験してもらいます」
「やったー!」
ぽん太は目を輝かせた。
千春も楽しそうに笑う。
「全部できたら、工場探検クリアですよ」
「頑張ります!」
二人は声を揃えて言った。
最初はセツ子の部屋だった。
机の上には三種類のネジが並んでいる。
見た目はほとんど同じだった。
「この設計図に合うネジを選んでください」
ぽん太は三本を見比べた。
「全部同じに見える……」
千春も首をかしげた。
「うーん……」
セツ子が定規を差し出した。
「よく比べてみてください」
「あっ!」
「一本だけ少し短い!」
ぽん太は一番短いネジを選んだ。
「正解です」
セツ子が微笑んだ。
「長さは1ミリしか違いません」
「でも、その1ミリで機械は動かなくなることがあります」
ぽん太は驚いた。
「1ミリで?」
「設計は、とても細かい仕事なんですよ」
「すごい……」
次はケイ子の部屋だった。
三枚のカードが置かれていた。
部品を運ぶ
組み立てる
検査する
「正しい順番に並べてください」
ぽん太は少し考えた。
「組み立てる!」
一枚目に置いた。
ケイ子は首を振った。
「惜しいです」
千春が笑う。
「組み立てる前に何がいる?」
「あっ!」
「部品!」
三枚を並べ直す。
部品を運ぶ
組み立てる
検査する
「正解です」
ケイ子がうなずいた。
「順番を一つ間違えるだけで、工場は止まってしまいます」
ぽん太は真剣な顔になった。
「順番って大事なんだ」
次はクミ子の作業場だった。
ぽん太は、小さなブロックを組み立てた。
「入らない!」
強く押し込もうとした。
クミ子が優しく止めた。
「無理に押し込むと壊れてしまいます」
ぽん太はもう一度試した。
「まだ入らない」
「部品にも向きがありますよ」
「あっ!」
部品をくるりと回してみた。
「入った!」
「よくできました」
「焦らないことも、大切なお仕事です」
ぽん太は大きくうなずいた。
次はナオ子の部屋だった。
小さな機械が置かれていた。
「どこが悪いか探してください」
ぽん太は全部のネジを触ろうとした。
でも、
「……あれ?」
一か所だけネジが少し浮いていた。
「ここ!」
ナオ子が笑顔になった。
「正解です」
「全部を直すのではありません」
「悪いところを見つけることが、一番難しい仕事なんです」
ぽん太は感心した。
「お医者さんみたいだね」
「ありがとうございます」
ナオ子は嬉しそうに笑った。
最後はセイ子の作業場だった。
「最後の問題です」
大きな画面に工場全体が映し出された。
画面には、緑・緑・黄色・緑・赤の五つの表示が並んでいた。
「一番気になる場所はどこでしょう」
ぽん太は迷わず答えた。
「赤!」
セイ子はうなずいた。
「赤は確かに大切です」
「でも、もうナオ子さんが向かっています」
ぽん太が画面を見ると、赤い場所へナオ子が歩いていた。
「あ、本当だ!」
ぽん太が目を丸くした。
「では、次に気をつける場所はどこでしょう」
ぽん太は少し考え、もう一度画面を見つめた。
「……黄色!」
セイ子が微笑んだ。
「正解です」
「黄色は、まだ誰も対応していません」
「このままでは赤になってしまいます」
画面を拡大すると、通路の端に部品箱が置かれたままになっていた。
「このままでは運搬ロボットが止まってしまいます」
セイ子が画面を操作すると、近くを走っていた運搬ロボットが部品箱を元の場所へ運んだ。
黄色の表示が、緑に変わった。
「やった!」
ぽん太は思わず飛び跳ねた。
千春も笑顔になった。
セイ子が静かに言った。
「工場全体を見守る仕事では、問題が起きてから動くだけでは足りません」
「問題が起こる前に気づいて、防ぐことも大切な仕事なのです」
ぽん太は大きくうなずいた。
「だから、工場が止まらないんだね!」
「はい」
セイ子は優しくほほえんだ。
探検ゲームが終わると、五人が集まった。
「おめでとうございます」
セイ子が小さな箱を差し出した。
「探検ゲーム、クリアです」
箱の中には、小さな歯車を組み合わせたキーホルダーが入っていた。
「わあ!」
ぽん太は目を輝かせた。
「これ、工場のみんなで作ったものです」
クミ子が言った。
「世界に一つだけの記念品です」
「宝物にする!」
ぽん太は嬉しそうに胸へ抱いた。
「今日はどうでしたか?」
セイ子が聞いた。
ぽん太は少し考えた。
「工場って、すごく難しい」
「一人が間違えると、みんなが困るんだね」
千春もうなずいた。
「だから、みんなで助け合っていたんだね」
セイ子が微笑んだ。
「だから私たちは、お互いを信じて仕事をしています」
「そして、困ったときは仲間が助けます」
「楽しいだけじゃないんだ」
ぽん太は少し考えた。
「みんな、頑張ってるんだね」
千春もうなずいた。
「はい」
「だから、いいものが作れるのです」
帰りの車の中。
ぽん太はキーホルダーを眺めていた。
「お父さん」
「どうした?」
惣太郎が聞いた。
「ぼく、工場って機械が作るだけだと思ってた」
「でも違った」
「どう違った?」
「みんながいっぱい考えて、間違えないように頑張ってた」
惣太郎が笑顔でうなずいた。
「それが、ものづくりなんだ」
家へ帰ると、ハル子とリョウ子が迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま!」
「工場はどうでしたか?」
ハル子が聞いた。
ぽん太は嬉しそうに話し始めた。
「すごく楽しかった!」
「でもね」
「一つ間違えるだけで、工場が止まっちゃうんだって」
千春もうなずいた。
「みんな、すごく真剣に仕事をしてたよ」
ハル子が静かにほほえんだ。
「一つ一つの仕事には、それぞれ大切な役割があります」
リョウ子もほほえんだ。
「だから安心して使えるものができるのですね」
ぽん太は大きくうなずいた。
「ぼくも、人の役に立つ仕事がしたい!」
惣太郎が笑顔で言った。
「まずは、目の前のことを大切にすることからだな」
「そうだね!」
ぽん太は大事そうにキーホルダーを握った。
「ぼくも、みんなに頼ってもらえる人になりたい!」
ものづくりには、責任と協力が大切だと学んだ、ぽん太くんでした。
工場探検では、ゲームを楽しみながら、ものづくりには細かな工夫や大きな責任があることを学びました。
一つのネジ、一つの順番、小さな気づきの一つひとつが、安全でよい製品につながっています。
ぽん太くんは、工場で働くみんなの姿を見て、「人の役に立つ仕事がしたい」という新しい夢を見つけました。
その気持ちは、きっとこれからも大切に育っていくことでしょう。




