第12話 ぽん太くんと夏の森
今日は、ぽん太くんがお父さんや千春ちゃんと一緒に夏の森へ出かけるお話です。
森の中には、カブトムシやクワガタ、バッタなど、たくさんの小さな命が暮らしています。
ぽん太くんは、夏の森でどんな出来事に出会うのでしょうか。
夏休みの朝。
空には白い入道雲が浮かんでいた。
「今日は昆虫採集に行こう!」
惣太郎が言った。
「やったー!」
ぽん太は大喜びした。
千春も虫かごを持ってやって来た。
「暑くなる前に行こう」
「うん!」
三人は近くの雑木林へ向かった。
木の間からセミの声が聞こえる。
「ミーン、ミーン!」
「いた!」
ぽん太は虫あみを持って走り出した。
「あっ!」
セミは空高く飛んでいった。
「逃げられたー」
千春が笑う。
「そんなに走ったら逃げるよ」
「そうなの?」
ぽん太は首をかしげた。
しばらく歩くと、大きなクヌギの木が見えてきた。
「お父さん!」
ぽん太が指をさした。
「カブトムシ!」
木の幹には、大きなカブトムシが止まっていた。
「ほんとだ!」
ぽん太はそっと近づいた。
あと少し。
その時だった。
「……あれ?」
ぽん太が立ち止まった。
「どうした?」
惣太郎が聞く。
ぽん太は木の根元を見つめていた。
そこには、小さなクワガタがあおむけになっていた。
足をばたばたさせている。
「大変だ!」
ぽん太はしゃがみ込み、そっとクワガタを起こした。
クワガタはしばらく動かなかった。
でも、やがてゆっくりと歩き始めた。
「よかった」
ぽん太はにっこり笑った。
クワガタは木に登り始めた。
その様子を見ていた惣太郎が笑った。
「カブトムシより先に助けたんだな」
ぽん太は少し考えた。
「だって困ってたから」
千春も笑った。
「ぽん太らしいね」
そのころには、カブトムシはどこかへ飛んでいってしまっていた。
「あーあ」
ぽん太は空を見上げた。
でも、すぐに笑顔になった。
「クワガタさんが元気になったからいいや!」
帰り道。
虫かごの中には、小さなバッタが一匹だけ入っていた。
「あっ」
ぽん太がつぶやいた。
「どうしたの?」
千春が聞いた。
「この子も、おうちへ帰りたいよね」
ぽん太は虫かごを開けた。
バッタは元気よく草むらへ飛んでいった。
「またね!」
「結局、何も捕まえなかったわね」
千春が笑った。
「うん」
惣太郎が優しくうなずいた。
「それも、昆虫採集だな」
家へ帰ると、リョウ子が冷たい麦茶を用意していた。
「おかえりなさい」
「ただいま!」
ぽん太は今日の出来事を楽しそうに話した。
「クワガタさんがひっくり返ってたんだ!」
「それで?」
リョウ子が聞いた。
「起こしてあげたら、ゆっくり木に登っていった」
ハル子が静かに言った。
「小さな命にも優しくできることは、とても大切です」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
「えへへ」
窓の外では、セミが元気に鳴いていた。
今日も、夏の森では、小さな命が元気に暮らしていた。
小さな命を大切にする優しさを知った、ぽん太くんでした。
昆虫採集は、虫を見つける楽しさだけでなく、自然や生き物とふれあう大切な時間でもあります。
ぽん太くんは、カブトムシを捕まえることよりも、困っていたクワガタを助けることを選びました。
その優しさは、きっと夏の森にも伝わったことでしょう。




