第13話 ぽん太くんの夏祭り
夏休みのお楽しみの一つといえば、にぎやかな夏祭りですね。
屋台のおいしい食べ物や楽しい遊び、夜空を彩る花火など、夏祭りにはわくわくすることがたくさんあります。
今回は、ぽん太くんが家族と一緒に夏祭りへ出かけるお話です。
そこで出会った小さな出来事から、ぽん太くんは大切なことに気づきます。
夏休みの夕方。
町の神社には赤い提灯が灯り始めていた。
今日は、みんなが楽しみにしていた夏祭りだった。
「そろそろ行こうか」
惣太郎が声をかけた。
「はーい!」
ぽん太は元気よく返事をした。
千春も浴衣姿で玄関へやって来た。
祐子も仕事を終えて帰宅し、着替えを済ませていた。
ハル子とリョウ子も家族と一緒に神社へ向かった。
境内は大勢の人でにぎわっていた。
焼きそばの香ばしい匂い。
たこ焼き。
かき氷。
綿あめ。
射的。
金魚すくい。
「わあ!」
ぽん太は目を輝かせた。
「どこから行こうかな」
「まずはゆっくり見て回ろう」
惣太郎が笑った。
家族みんなで屋台を見て歩く。
焼きそばを食べ、
かき氷を食べ、
綿あめを買った。
「おいしい!」
ぽん太は嬉しそうだった。
屋台を見て歩いていると、金魚すくいの屋台が目に入った。
「お父さん!」
「一回だけ、やってもいい?」
惣太郎は笑顔でうなずいた。
「いいよ」
「やったー!」
ぽん太はポイを受け取った。
そっと水に入れる。
赤い金魚が近づいてきた。
「今だ!」
ゆっくり持ち上げる。
「やった!」
一匹の金魚がポイの上で元気に泳いでいた。
「上手だね」
屋台のおじさんが笑った。
小さな袋に水を入れようとした、その時だった。
「……ねえ、おじさん」
「ん?」
ぽん太は水槽を見つめた。
「この子、お友だちと一緒にいた方が楽しそうだね」
おじさんは少し驚いた。
「持って帰らないのかい?」
ぽん太はうなずいた。
「うん」
「元気に泳いでるところが見られたから、それでいいんだ!」
おじさんは、にっこり笑った。
「そうか」
「じゃあ、お友だちのところへ帰してあげよう」
金魚は水槽へ戻ると、仲間たちと一緒に元気よく泳ぎ始めた。
「よかった!」
ぽん太も嬉しそうに笑った。
千春が聞いた。
「せっかくすくえたのに、本当にいいの?」
「うん!」
「また来年、この子に会えるかもしれないし!」
惣太郎が微笑んだ。
「それも、いい思い出だな」
祐子も優しく笑う。
「ぽん太らしいわね」
リョウ子がうなずいた。
「金魚さんも喜んでいますね」
ハル子が静かに言った。
「相手の気持ちを考えられることは、とても大切です」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
「えへへ」
やがて、境内の明かりが少し暗くなった。
ドーン!
夜空に大きな花火が打ち上がる。
「わあ!」
ぽん太は夜空を見上げた。
赤。
青。
黄色。
大きな花火が次々と夜空を彩る。
「きれいだね」
千春がつぶやいた。
「うん!」
ぽん太は何度もうなずいた。
家族みんなで見上げる花火は、とてもきれいだった。
帰り道。
ぽん太は祐子と手をつないで歩いた。
その後ろを、惣太郎、千春、ハル子、リョウ子も仲よく並んで歩いた。
「今日は楽しかった?」
祐子が聞いた。
「うん!」
ぽん太は大きくうなずいた。
「来年も、みんなで来ようね!」
「そうね」
祐子が笑った。
提灯の明かりが、家族の後ろ姿をやさしく照らしていた。
相手の気持ちを思いやる優しさを大切にした、ぽん太くんでした。
夏祭りは、楽しい思い出を作る特別な一日です。
ぽん太くんは、すくった金魚を持ち帰るよりも、お友だちと一緒に元気よく泳ぐ姿を見ていたいと思いました。
その優しい気持ちは、金魚だけでなく、みんなの心も温かくしてくれました。




