第11話 ぽん太くんのラジオ体操
夏休みが始まると、朝早く公園へ集まってラジオ体操をする子どもたちの元気な声が聞こえてきます。
今日は、そんな夏の朝のお話です。
ぽん太くんはラジオ体操へ出かけますが、その帰り道で、一人の小さな女の子と出会います。
ぽん太くんは、どんな行動をとったのでしょうか。
夏休みが始まった。
朝早く、近くの公園には子どもたちが集まっていた。
「おはようございまーす!」
ぽん太と千春が元気よくやってきた。
「おはよう!」
健太たちが手を振った。
「眠くないの?」
健太が聞いた。
「大丈夫!」
ぽん太が胸を張った。
「昨日は早く寝る予定だったから!」
「予定って何だよ!」
みんなが笑った。
町内会のおじさんがラジオのスイッチを入れた。
「それじゃあ始めます!」
ラジオ体操の音楽が流れ始めた。
ぽん太は大きく腕を伸ばした。
「いち、に、さん、し!」
みんなも元気よく体を動かした。
体操が終わると、一人ずつ出席カードにハンコを押してもらった。
「やった!」
ぽん太は嬉しそうにカードを見つめた。
「全部集めるんだ!」
「まだ一日目でしょ」
千春が笑った。
「最後まで頑張る!」
その時だった。
ぽん太がふいに立ち止まった。
「……あれ?」
「どうしたの?」
千春が聞いた。
ぽん太は公園のベンチを見つめていた。
小さな女の子が、一人で座っていた。
みんなが帰っていくのに、その子だけ動かなかった。
ぽん太は女の子に近づいた。
「どうしたの?」
女の子は小さな声で答えた。
「お兄ちゃんがいないの……」
千春も隣にしゃがんだ。
「はぐれちゃったの?」
女の子は小さくうなずいた。
ぽん太は少し考えた。
「じゃあ、一緒に待とう」
「うん」
三人はベンチに座った。
しばらくすると、遠くから声が聞こえてきた。
「みーちゃん!」
一人の男の子が走ってきた。
「お兄ちゃん!」
女の子は笑顔で立ち上がり、お兄ちゃんのところへ駆け寄った。
二人はしっかりと手をつないだ。
その後ろから、お母さんも息を切らしてやってきた。
「ありがとうございました」
お母さんが頭を下げた。
ぽん太は首をかしげた。
「ぼくは何もしてないよ」
「でも、声をかけてくれたんですよね。
ありがとうございました」
ぽん太は少し照れくさそうに笑った。
「なんとなく気になっただけです」
千春が笑った。
「また『なんとなく』?」
「うん!」
ぽん太も笑った。
家へ帰ると、朝食のいい匂いがしていた。
「おかえりなさい」
リョウ子が迎えた。
食卓では惣太郎が新聞を読み、祐子は出勤の準備をしていた。
「ラジオ体操はどうだった?」
惣太郎が聞いた。
「楽しかった!」
ぽん太は嬉しそうに話し始めた。
「小さい女の子が、お兄ちゃんとはぐれちゃってたんだ」
「それで?」
祐子が聞いた。
「一緒に待ってたら、お兄ちゃんが来た」
祐子はほっとしたように笑った。
「見つかってよかったわね」
ハル子が静かに言った。
「困っている人に自然と声をかけられることは、とても素敵なことです」
「そうなの?」
ぽん太は首をかしげた。
「はい」
「その優しさは、きっと相手を安心させています」
リョウ子が朝食を並べた。
「たくさん体を動かしたので、お腹がすきましたね」
「うん!」
ぽん太は元気よく席についた。
朝食を食べ終えると、祐子が立ち上がった。
「じゃあ、行ってくるわ」
「いってらっしゃい!」
ぽん太たちが元気よく見送った。
夏休みは、まだ始まったばかりです。
困っている人にやさしく声をかけることの大切さを知った、ぽん太くんでした。
困っている人を見かけたとき、勇気を出して「どうしたの?」と声をかけることは、とても素敵なことです。
ほんの小さな優しさでも、その一言が相手に安心を届けることがあります。
ぽん太くんは「なんとなく気になっただけ」と言いました。
でも、その自然な思いやりが、女の子とお母さんを笑顔にしてくれました。




