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第三話 「既視感」

「食われてる...のか?」


後ろを見ると四足歩行の犬のようなバケモノが人を喰らっている。もはや人間の原型の面影はなく、内臓をこねくり回して食している。


ーー「なんだ!?あれは!?」


俺を助けた青年が驚いた表情と声で話す。

 俺は一度見たことがある「気」がするんじゃない。見たことがあったのだ。


それなのに俺は記憶をなくしていた。あまりに残酷的でトラウマになるほどのものを経験していたからこそ脳がこれ以上思い出すのは危険だと判断し、勝手にここまで思い出させないようにしていたのだ。


 そして、青年はライトという金髪の人と戦いながら話し出す。


ーー「おい!何腰抜かしてんだ!さっさと逃げろ!」


「俺も逃げたいですよ!!でも動けない!」


ーー「何が起きてるかわからんがここは俺がなんとかする!」


「なんとかって、あなただけでできる訳がない!周りには人を喰らう四足歩行のバケモノがうじゃうじゃいるんですよ!?しかもその人もいる!」


俺はそういうと青年は黙る。

俺は腰を何とか支えながらライトの背後に素早く移動し、ふらつきながらも立ち上がる。

手に全力を注ぎ込み、ライトの首に手をぶつけ、気絶させることができた。

青年は、


ーー「!?やるじゃないか君!助太刀感謝する!」


と言ってライトを手荷物のように掴んだ。


ーー「俺はライトを空に届けに行ってくる。すぐに私が戻ってくるからそれまで耐えてくれ!」


青年が俺にそういうと「ちょっと待ってくれ!」という暇もなく、空に飛んでいってしまった。

さてここからどうするか。

 周りには見たことがある、経験したことがあるこの状況を打破しなければならない。


この時の俺は、ライトを気絶させることができた感動で今なら何でも倒せると思ってしまっていた。


「ほら!そこのバケモノ俺を喰らってみろよ!そいつより俺の方がまだ新鮮だぞ!」


調子に乗った俺はバケモノにそう言ってしまった。

しかし、それが仇となった。

 バケモノは尋常じゃない動きで俺の正面まで一瞬で近づき、でかすぎる口を広げた。


口の中は血だらけでその人の茶色い髪の毛などが混ざり合っていた。


「うわぁあ!!やっぱな...」


「し」まではいうことができなかった。左腕の感覚がなくなった。バケモノの口には俺の左腕と見られる腕が咥えられていた。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!!!」


心拍数が異常なほどに上昇していく。

俺はその場でまた腰を抜かしてしまった。


 倒れ込んだ俺は、自分の左腕を指先から食べていくバケモノを見ることしかできなかった。


そして右手が地面の砂につくはずが何か別の紙のような感触がある。


「ノート...」


さっき腰を抜かして落とした日記帳がわりのノートが俺の右手に触れた。

開いてあるページには、ベンチに座っていた時に見たときにはなかった空白の部分が浮かび上がっていた。


「え...?なんで?」


4月10日

名前はライト。

英単語勉強しまくれば特殊能力が強化される。


この日記を見て驚かずにはいられなかった。

さっき見た時の空白部分が完璧に文章として完成されている。


「英単語?勉強?特殊能力?強化?」


特殊能力という文字が俺の昔ながらの子供心をくすぐった。

しかし俺のことを忘れんなというばかりにバケモノは次に俺の右腕を食おうと顔を近づけてくる。


俺は咄嗟に英単語が特殊能力だと思い込み、底辺高の俺が知っている単語を一か八か叫ぶ。


「ゴッド・ヘルプ・ミィー!!」(助けて神様!!)


俺がそう叫ぶと空から眩しい光が差し、おそらく神である少女が俺の横に召喚された。


少女は召喚された瞬間、目の前にいるバケモノの気配を感じとったのか持っていた杖で魔法とかじゃなくて物理攻撃で消滅させた。


「え...?マジで来たのか?俺の感が当たった!?」


俺は特殊能力の発動条件を初見で見破った感動か、それか神様に助けてもらったのが嬉しすぎて神様に抱きついた。

 そして神は話す。


ーー「あっはは、君って腹痛で転生してきた人なんだね」


「腹痛なんてもんじゃねぇよ.....」


ーー「ていうか君どうやって神である僕をここに呼べたんだい?」


「僕っ子か...悪くない。英単語で助けて神様って叫んだら君を召喚できたんだ。」


ーー「僕っ子?何それ?まあいいけど。君のその力は何ていうか...使いこなすなら勉強だね。あ、ちなみにさっき君のとこに来た青年と彼女は無事だ。


「あぁ、使ってみて分かった。けど勉強はだるいな」


底辺高である俺が英単語なんて日常で使うことなんかほぼなかったので勉強などはしていなかった。


 もう名前の真面目とは正反対だが、こうやって特殊能力を発動できたのは運が良かった。


ーー「まあとりあえずまだ問題は片付いていないみたいだね。さっさと何とかしちゃおうか」


「頼んだ」


神である少女が頷き、天に高く杖を構える。

魔力全ブッパで結界をこの街全体に被せ、浄化魔法みたいなのをかけて辺りが紫色の輝きによってバケモノの肉体が内側から爆ぜていく。


終いにはこの街でバケモノは完全にいなくなった。


生き残った人々は歓喜の声を上げる人もいればダンスをして喜びを表現したり、バケモノが消えた安堵感で泣き崩れてしまう人もいた。


 最初に行こうとしていたパン屋の方角からは刃物?というかナイフが落ちる音も聞こえた。


「神様スッゲェじゃん!!」


ーー「まあ魔力全部使っちゃったしだけどな」


と俺たちは愉快な会話を続けた。神様が「みんなの様子を見に行こう」と言うので俺も付き添った。


歩いていると、やはり残酷な死に方をした人の家族もいた。町中は血痕の跡が凄まじく多く、至る所に血の跡がついていた。


やっぱりパン屋の方角が気になって神と共に行ってみると、誰1人店員がいない。レジ前にも死体があった。


珍しくバケモノに食われないで首だけが地面に落ちた状態だった。店員が立っていたであろう場所には血のついたナイフが落ちていた。


「ここでナイフなんか使うのか?」


ーー「僕は神だけど何でも知ってる訳じゃないぞ。

プライベートってもんは相手から見せてもらわないと侵害になっちゃうしね」


「へぇー」


などと興味ないみたいな言葉を交わして俺は不自然に首と体が落ちている遺体に向かって手を合わせる。

どうか天国で幸せになってくださいと祈った。


 なんか見覚えがあったけどまあ気のせいかと思って立ち去ろうとした時、遺体の右足が俺の目に映った。


俺が昔に怪我をして跡が残ってしまった右足と同じ場所に同じような跡があった。


 おんなじ色、おんなじ形。特徴的な緑色の部分までどれもが一致した。


「え?...何で俺とおんなじ」


ーー「どうした?」


俺は気になってしまい、不覚にもその遺体の首をこちらに向かせるとそこには俺と全くおんなじ顔をした顔があった。

ホクロの位置、最近怪我した目の横の傷。


全てが同じで、服装を見ても今の俺と完璧に同一人物の人間が、



ーーーーここで息絶えてしまっていた。



















伏線未回収とかならないようにしますね!明日から学校と部活で忙しくなるので、投稿頻度は低くなるかも?

評価、感想、リアクションなど今後ともよろしくお願いします。

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