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神界から追放されし少女は叫ぶ。絶対目にもの見せてやるからな!!  作者: 万年亀
第六章 闘技祭

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水精姫と予選①

戦闘書くの苦手だなと思いながら書いてます。

一方的な無双はともかく接戦した戦闘になると物凄く時間かかる……。

そして今更ながら『闘技祭』という名称は学園祭と被るので良くなかったなと思うなど。

 大演習場は熱気に包まれた何千人もの観客たちで賑わっている。


 学園祭の目玉行事である『闘技祭』を一目見ようと、王都中の貴族や騎士団の重鎮さらには一般の市民までもが、すり鉢状の観客席を埋め尽くしていた。


 広大なフィールドの中央には、土魔法によって巨大な十六個の石の闘技場が等間隔で隆起して作られている。

 参加者となる生徒たちが次々と入場ゲートから現れ、それぞれ指定された闘技場へと上がり予選の準備が慌ただしく進められていた。


 上空に設置された実況席では、頭に猫耳のようにも見える奇妙な形の拡声魔道具を付けた女子生徒が、張り裂けんばかりの大きな声を会場全体に響かせていた。


『さあ、やってまいりました『闘技祭』!! 学園祭のメインにして晴れの舞台!! この日のために血のにじむような研鑽を積んできた生徒も数多くいるでしょう!! 果たして勝利の女神は誰に微笑むのか!!』


 会場のテンションを一気に引き上げる見事な実況。

 彼女の煽りに呼応して観客席から地鳴りのような歓声が沸き起こる。


『本日の実況は、魔法学園広報部長のロッタがお送りいたします! そして解説にはこの方をお招きしております!』


 ロッタが勢いよく隣の席を手で示す。

 そこには胸元が大きく開いた紫色のローブを気怠げに纏い、長いキセルを指に挟んだ妖艶な女性教師が足を組んで座っていた。


『解説のイヴェッタで~す。魔法薬学の教員やってま~す。よろしくねぇ~』


 間延びした色気のある声が拡声魔道具を通して響き、一部の男子生徒や男性客から別の意味での歓声が上がる。


『今回のトーナメントでは大怪我などしないように、参加者に保護魔法が付与されております。ダメージを受けると威力に応じて身体が動かなくなる仕組みですね』


『一定以上のダメージを受けたり場外に押し出されると負けねえ~。保護魔法で設定された以上のダメージを受けると気絶するけど、実際に痛みを感じるわけじゃないから安心してねえ~』


 イヴェッタが保護魔法について補足すると、ロッタが元気よく質問を投げかける。

 大会の行方を占う、実況の定番の振りだ。


『では解説のイヴェッタ先生。ズバリ、今年の優勝候補は誰になると思いますか?』


『ええ~? 順当に五天星の誰かでしょう~? それ以外の一般生徒の優勝者なんて、過去の歴史を見てもほとんど見たことないしィ~』


 だがイヴェッタは身も蓋もない現実を突きつけた。

 それに対しロッタが苦しいフォローを入れる。


『ハイ、身も蓋もないご意見ありがとうございます! 期待通りの辛口解説ですね!』


 実際、実力至上主義のこの学園において頂点に君臨する五天星と一般生徒の実力差は残酷なほどに開いているのだ。

 奇跡や番狂わせなど、そうそう起こるものではない。


『しかし! 五天星以外の生徒も、魔法の相性差や地の利を活かして勝つこともゼロではありません! 今回の予選は多人数が入り乱れるバトルロイヤル形式! 何が起こるかわからないのが闘技祭の醍醐味です! 参加者の皆さんには是非諦めず頑張ってほしいところですね!』


 ロッタが必死に会場のモチベーションを保とうとフォローの言葉を重ねる。

 指定された第十一ブロックの闘技場の上で、マリエルはそんな放送をどこか他人事のように聞いていた。


「実況もフォローとか大変そうだな……。私にはできそうにないや」


 空気を読んで場を盛り上げるなど、神界で孤立して過ごしてきた彼女の対人スキルでは到底不可能である。


『えー、では今期の五天星の予選ブロックの配置を見ていきましょう!』


 ロッタの声が続く。


『序列四位の『旋風姫』リーズリット選手は第三ブロック! 序列二位の『大地の申し子』アラン選手は第五ブロック! 序列三位の『闇の貴公子』ルカ選手は第十ブロック! そして……序列五位の『水精姫』マリエル選手は、第十一ブロックとなっておりますね! なお、序列一位のクリストフ殿下はエキシビジョンマッチでの参加のため予選は不参加となっております!』


 五天星の名前が呼ばれるたびに各ブロックを観戦できる観客席からひときわ大きな声援が上がる。

 特にルカとアランのブロックに近い客席からは女子生徒の悲鳴のような歓声が、マリエルのいる第十一ブロックに近いからは野太い男子生徒たちのコールが入り混じっていた。


 なお、リーズリットのファンはいなくもないが、彼女は婚約者がいる身のためファンは自重している。


『じゃあ、その四つのブロックに割り当たった一般の生徒は、ご愁傷様って事ね~。予選敗退ご苦労様ァ~』


『ご愁傷様って言わないでくださいよ先生! 参加者のモチベ下がっちゃうじゃないですか!』


 ロッタが泣きそうな声で抗議するが、イヴェッタはケラケラと笑う。


『でもぉ~。今期の五天星は歴代の記録と照らし合わせても相当レベル高いじゃない~?』


 イヴェッタはキセルの先で第十一ブロックに立つ銀髪の少女を指し示した。


『特に、あそこの序列五位の子なんて、五天星内部の序列争いに消極的で面倒くさがってるだけで、実力は普通に歴代上位クラスでしょう~? どうやって勝つのよぉ』


『う、うーむ。それは……』


 ロッタも言葉に詰まり、どうやら否定できないらしい。


 マリエルは闘技場の上で耳を疑う。


「そんな噂になってるの……?」


 自分の評価が学園内でそこまで跳ね上がっていることに今更ながら驚きを隠せない。

 だが、その評価は客観的に見て当然である。


 彼女が五天星の座に就いてからというもの、毎日のように腕自慢の生徒たちが放課後に次々と挑戦状を叩きつけてきた。

 それらを彼女は初級魔法である水球のみを用いて、文字通り軽くあしらってしまっているのだ。


 相手の高度な攻撃魔法を水球の圧縮と性質変化だけで無力化し、時には一瞬で氷漬けにし、時には水蒸気爆発で昏倒させる。

 傷一つ負うことなく、汗一つかくことなく涼しい顔で連戦連勝を重ねるその姿。


 一般生徒たちとの実力差は隔絶としている。

「彼女はまだ本気すら出していないのではないか」という噂が、学園中で実しやかに囁かれるのも無理はない。


 マリエルが周囲を見渡すと、第十一ブロックの闘技場に上がっている他の十数名の生徒たちの様子がおかしいことに気づいた。


 彼らは互いに牽制し合うのではなく、全員が示し合わせたようにマリエルの方を向き、すでに魔法の詠唱準備や武器を構えて戦闘態勢に入っているのだ。


 彼らの瞳に宿っているのは恐怖と、それを上回る野心。


(あー……なるほど)


 マリエルは即座に状況を理解した。


 多人数が入り乱れるバトルロイヤル。

 ルールは最後まで立っていた一人が勝ち抜けるという単純なものだ。


 このブロックに圧倒的な実力者である五天星がいる。

 彼らが普通に互いを削り合い、最後に残った一人で彼女に挑んでも勝てる道理はない。


 ならば、どうするか。


 答えは一つ。

 最初にマリエルを全員で協力して袋叩きにし、最大の脅威を排除してから自分たちの勝敗を決めることだ。


 彼らは言葉を交わすまでもなく、暗黙の了解で「打倒・水精姫」の一点において一時的な同盟を結んでいるらしい。

 十数名分の殺気と魔力のロックオンがマリエル一人に集中している。


(めんどくさいなあ……)


 マリエルは内心で深く嘆息しながら、静かに魔力を集中させる。


 彼らの気迫は買う。

 五天星を倒せば一躍学園の英雄になれるという野心も理解できる。

 だが、その程度の連携や数の暴力で崩されるほど、彼女の持つ神界の技術は底が浅くない。


『ともあれ、選手の皆さんの準備が整ったようです! 『闘技祭』の予選を開始いたします!』


 ロッタの声が会場の緊張感を最高潮へと引き上げる。


『レディ~』


 イヴェッタの気怠げな掛け声に続き。


 カァン! という甲高い開始の鐘の音が、大演習場に鳴り響いた。


 その直後。


「やれええええ!!」


「五天星を落とせば俺たちの勝ちだ!!」


「一斉攻撃だ!!」


 第十一ブロックの生徒たちが一斉に咆哮を上げ、マリエルに向けて炎、氷、風の刃といった多種多様な攻撃魔法を放とうと詠唱を完成させた。


 だが、彼らの魔法が放たれるよりも少しだけ早く。


 マリエルのいる第十一ブロックの頭上から闘技場全体を丸ごと覆い尽くすほどの巨大な水球が落ちてきたのだ。


「え?」


「なっ!?」


 生徒たちが魔法を放つ暇もない。


 マリエルが戦闘開始の鐘の音と同時、上空の死角に構築していた超質量の水魔法。

 それが重力に従って一気に落下してきたのである。


「ごめんね。流石にこの数を正面から相手してあげられない」


 降ってきた莫大な水量の水球によって、マリエルを除く第十一ブロックの生徒たちは回避する間もなく頭から大量の水を浴び、一瞬にしてびしょ濡れになった。


「ぶふっ! なんだこれ!」


「水!? 攻撃魔法じゃないのか……?」


 生徒たちは突然の冷水にむせ返り、目を擦る。

 水圧で転倒した者もいるが、直接的なダメージを受けた者はいない。

 ただ全身ずぶ濡れになっただけだ。


 だが、彼らが安堵したのも束の間。


 マリエルが右手の指先を軽く弾くと、その瞬間に生徒たちの全身を濡らしていた大量の水が、マリエルの魔力操作によって一瞬にして氷点下まで強制的に低下させられたのだ。


「え?」


「あ……」


 悲鳴を上げる間すらなかった。


 彼らの服に染み込み、髪を濡らしていた水分が一瞬にして分厚い氷へと変貌し、生徒たちの身体を凍り付かせたのだ。


「さぶい」


「ちべたい」


「え……もう終わり……?」


 ガチガチと歯の根を鳴らしながら、氷の像と化した生徒たちが信じられないというように目だけを動かして周囲を見る。


 手も足も指先一本動かせない。

 魔力を練ろうにも、極寒によって集中力が削がれてしまっている。

 彼らが放とうとしていた魔法は全て不発に終わり、過度のダメージによって保護魔法が発動。

 闘技場の上には十数体もの氷の彫刻が立ち並ぶという、異様な光景が広がっていた。


 マリエルは自身の放った水魔法なので水を操作しており濡れもせず、凍り付いた生徒たちの間を悠然と歩きながら、闘技場の端で呆然としている審判の教師へと声をかけた。


「審判さん。全員氷漬けにして戦闘不能にしましたが、まだ戦闘続行が必要でしょうか。風邪を引く前に早く治癒術師のところに運んであげた方がいいと思いますけど」


「え、ああ。えっと」


 審判は信じられないものを見る目でマリエルと氷漬けの生徒たちを交互に見比べ。

 やがて我に返ると、震える声で拡声魔道具に向かって叫んだ。


「だ、第十一ブロック、他の全選手戦闘不能により……マリエル選手、勝ち抜きィィィィ!!」


「どうも」


 マリエルが短く応える。


 その宣告を聞いて、少し遅れて観客席から爆発的な歓声とどよめきが沸き上がった。


『しゅ、瞬・殺!! 第十一ブロック、本当に一瞬で勝負がつきましたァァァァァ!! 開始の鐘が鳴ってから、わずか数秒の出来事です!』


 ロッタの実況が興奮で裏返っている。


『全員から集中狙いされるという不利な状況をものともせず、得意の水魔法一つで一網打尽! 五天星の序列五位『水精姫』の名に偽り無し!! 圧倒的、あまりにも圧倒的な実力差です!!』


 会場の熱気は最高潮に達し、マリエルの名を呼ぶコールが響き渡る。


『やっぱり序列五位って詐欺だと思うの~。実力隠してるでしょ絶対。序列二位とかにさっさとなりなさいよ~』


 イヴェッタがキセルを揺らしながら、呆れたような声で解説を加える。

 彼女の言う通り、これが第五位の実力であるはずがない。

 誰もがそう確信したが。


「めんどくさいから嫌です」


 マリエルは、そんな解説の声にぼそりと呟く。


 彼女は周囲の熱狂的な歓声や氷漬けにされた生徒たちの恨めしそうな視線など一切気にする様子もなく、スカートの裾を軽く翻して悠々と闘技場の階段を降りるのであった――。


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