第1章 #20 『新たな始まり~異世界生活~』
チュンチュンと子鳥のさえずり。雪解けは春の訪れ。月日は流れ、異世界へ転移してから2年がっ経った。
「いい目覚めだ。」
「ミナトの兄貴ー!飯にしよーぜ!」
「どわっはぁ!!」
この2年でルイはさらにミナトに懐いたらしく、朝のモーニングコール……目覚めの一撃はルイの飛び膝蹴りで始まる
「ミナト起きていたか。食事が…」
「あのさぁ…キリナ………最初から居たんならルイの飛び膝蹴り止めてくれないかなぁ…」
「ほんの戯れという認識だった」
「それで毎回スルーするよね…止めてって毎回言ってるのに」
「まぁ、良いではないか」
キリナもこの2年で大分変化があり、当初のぎこちなさもなくなり心を開いてくれている。そして心開いてくれたことにより元から割とサバサバした性格ということも分かった
「そんじゃぁ早く飯に行こうぜ!」
「あぁ…行こう」
「クリスさん!おはようございます!」
「お、ミナト殿ちょうど良かった。今料理の支度が済んだところなのだ」
「出来たてですか。それは嬉しいです」
相変わらず美味しそうな香り。この2年でグルメな舌になりつつあるのは全てここの料理のせいだと思っている
食事を済ませ、休憩を挟む。その後はいつもなら魔術の特訓と剣術の特訓に勤しむ。
だが、今回は――
「えーと…あれも入れて……これも入れて……」
「ミナト私は支度が済んだぞ」
「お、早いね。ってなんだ!そのメイド服!いつもと違くないか!」
「このメイド服は約8割戦闘目的の仕様になっているものです」
「かっこかわいい……」
「かっ…可愛……」
照れている。耳を折り、しっぽを振りモジモジしている様は獣人ならではでとても愛くるしい
「よし。俺も支度できた」
「クリスさーん!」
「ミナト!もうでてしまうのか?」
「はい!この2年間ほんとにお世話になりました」
そう。ミナトはついに世界へ旅に出ることになったのだ。この2年間はただ平和に過ごした訳ではなく、身を守れるように魔術、剣術を磨くための期間がおもであった
「ミナト殿。君はほんとに成長したな。魔術も既に無詠唱が基本になってしまって…私を超えたどころか魔術師の中でも屈指の実力と言えるだろう。剣術は…まぁまぁだが。それでも戦えないこともない」
この2年間。魔術の訓練をしていく中で魔力量は飛躍的に増え、扱える魔術も上級レベルまで成長した。何よりイメージさえ出来れば無詠唱で魔術が扱えるのはとてもでかい。なんせ、戦闘中口を動かすのは得意ではないし、何より詠唱するより早く発動出来る。予めイメージして魔力を込めておけば発動のタイミングも自由自在
剣術はまだまだだが、肉体改造がまだまだなため筋トレあるのみ。あとは反射と対応だ
「キリナ。遂に役目を担う時が来たのだ。頑張れよ」
「はい。全ての恩を返すため。これからの未来のため、力の限りを尽くします」
「あぁ」
「兄貴!ほんっとは俺もついて行きてぇところだけど立場上行けねぇ。だから!無事で居てくれよな!」
「勿論だ」
「あの…しばしお待ちを」
別れの挨拶をしているとふと懐かしい声が聞こえてくる
「アレシアさん!?」
「アレシア殿、どうしたのだ?」
「その旅。私もご一緒させてはいただけないでしょうか」
「え?」
「2年前の一件以来ずっと悔やんでいました。ミナト様について行き2年前の懺悔をしていきたいのです。何より、ミナト様はあの一件を止めてくださった恩人。手助けにもなりたいのです」
「なるほど。そういうことだそうが、どうだミナト殿」
「両手に花だな!兄貴!」
馬鹿者と頭を叩くクリス
「うんそうですね。長い旅になると思うがそれでもいいなら同伴頼みますよ。旅は道ずれと言いますからね」
「身勝手な頼みを聞き入れていただき、ありがとうございます。私、アレシア・ミデアは本日よりミナト様を主とし、この身この力をミナト様に全て預けます」
「そんなかしこまらなくても…」
「それとミナト殿。折り入って頼みがひとつある」
「?」
「こっちにおいで」
クリスが手を引き連れてきたのは小学生くらいだろうか、可愛らしい女の子だ
「この子はカノン。実は両親は分け合ってここから大分離れた国……その名もミリオン帝国にいるのだ。両親が離れている間、私の方で面倒を見ていたのだがな、ついこの間手紙が届いてミリオン帝国まで連れてきてはくれないかと頼まれたのだ」
「それ…両親が迎えに来れば良いのでは?」
「両親にも両親の考えがあるのだよ。この子には世界を知って欲しいそうだ。人も含めてな」
「と言うと?」
「この子は人見知りで引きこもりなんだよ」
「なるほど…」
つまりおそらくは人見知りで引きこもりだから両親がミリオン帝国に行く際も行くことを拒み、結果クリスが預かることになっていたのだろう
「おおよそ考えている通りだ」
「でも、その国に行くにしても長旅に…」
「言っただろう?世界を知って欲しいと。立場としてはミナト殿と似たようなものだよ。世界を知るために度をしながら両親の元へ行く。成長とは狭い世界では限界がある」
「分かりました。その役目しっかりと果たさせて頂きますよ」
不安要素もあるが、キリナはメイド。アレシアはシスターで子供好きだ。何とかなるだろう。
「カノン。これからよろしくね」
「…………」
ぷいっとそっぽを向くとアレシアの方へと向かっていき後ろへ隠れてしまう
「アレシアさんはご知り合いなんです?」
「いいえ?」
おそらくはアレシアから溢れる母性だろう。無意識に心を開いているのかもしれない
「では、そろそろ旅にでます」
「あぁ…また会えることを期待しているよ」
「勿論ですよ。また会いに来ます」
「では」
一礼。クリスの見送りを背に。エレモア王国の門を出る。2年もお世話になったのだ。名残惜しところもある。だが、永遠の別れでもない。
この世界を知り。元の世界へ帰る。その目的は揺るがない。
雨宮湊。彼の旅は……彼の物語は本格的に始まりを迎えるのである
――――――――――――第1章 『異世界なんて』完




