61 主人公の苦悩とこれから
『私の苦悩って言っても凄く、ちっぽけなんですよ』
ルーク「それでも構わない。ここに座るといい」
『ありがとうございます。私、家族の事、あまり良いように言ってないと思うんですよ』
ルーク「そうだったな」
『はい。私の父は賭け事が好きで、私の物心が付く前に母と別れたんです。それで、母は私を見る度に父を思い出すようになって、最低限の関わりしか家の中ではしなかったんです。まぁ、お陰で家事が上手になったんですけどね』
ルーク「そうだったのか」
『でも、私を育てるために働いて、きちんと学舎にも行かせてくれて、もっと学びたいって言った時も、大金をはたいて行かせてくれたんです。私、母に育ててもらってるのに、嬉しくなくて、感謝しなくちゃいけないのに、出来なくて、私はこのままでいいのかなって…思ってたんです』
ルーク「俺は親になったことは無いが、サナの母親も同じだったんじゃないか?」
『同じ…ですか?』
ルーク「サナの母親も、愛するわが子を素直に愛せない事に悩んでいたんじゃないか?」
素直に
愛せない
『母は、私を愛していたんですかね』
ルーク「俺には、聞いててそう思った」
『良かったです。私、傷つきたくなくて、ずっと、色んなものから逃げてきたんです。努力したらもっと良い学舎に入れるのに、もし、努力しても入れなかったらって考えて、楽な道に行って、もっと学びたいって言ったのは建前で、本当は働いて、色んな人に怒られるのが怖いから、ずっと怖くて逃げてきたんです』
ルーク「怖い物から逃げたくなる…それは俺もだ」
『はい。だからさっき、ルークさんの話を聞いてて、私が逃げてきたのは些細な事だったんだなって思ったんです』
ルーク「恐れるものに、大きい小さいは無いだろう」
大きい小さいが無い?
そっか、怖いものは怖いもんね
『それに、今も逃げてるんです』
ルーク「今もか」
『はい、これから、自立してこの国で生きなきゃいけない、でもそれが怖いんです。家事は出来ますが…働いたことが無くて、誰かに護られて、外の世界に行くのが怖くて、先延ばしにしてるんです。ここの人たちの優しさに甘えて』
ルーク「ずっとここに居たい…と?」
『そうですね。私って案外ダメなんですよ(笑)。手に職って言った時も本当は、ここに居たいって思ってたんですよ?』
ルーク「外の世界をサナが恐がるのは自然な事だろう…サナには嫌に聞こえるだろうが、働くことでサナの母親の気持ちも分かるのではないか?」
『…そう…ですよね』
ルーク「俺らがやることは、サナを甘やかすことじゃない、サナがソルヤ王国で暮らすに不自由しないようにすることだ」
『はい』
やっぱり…大人は違うな
ルーク「サナがやってみようと思う事からでいい、向いてる向いてないは後だ。分からなければ全てやるといい」
『…やってみないと、分からない…ですか』
ルーク「そうだな、サナにとっては、厳しい所もあるだろう」
『そうですね』
甘えられない世界…
ルーク「甘やかすことは仕事においては出来ないが、恋人としては、サナを甘やかす事が仕事だ」
あ
優しい笑顔だ
『まだ怖いですけど、踏み出してみようと思います。まずは、料理を売ってみたいですね』
ルーク「そうだな、サナは料理が上手だからな、ナルム肉の料理は俺の好みだ」
『ふふっ、そうなんですね、また作りますよ?』
ルーク「ふっ…頼む」
『あー、なんで笑ったんですか?』
ルーク「いや、何でもない」
あ、なんだろ、心が軽くなったな
『ルークさんの怖いものを色々教えてくれたので、私の怖いものも色々教えますね?』
ルーク「…あぁ、その前に、灯りを消して何時でも寝れるようにしよう」
『はい』
ベッドは…ここか
ベッドの端に座っておこう
あ、ルークさん隣りに座るんだ
ルーク「待たせた」
『いえ、私が怖いものって沢山あるんですよね〜。虫とか、幽霊とか、人が失敗するのを見る事とか、緊張した雰囲気とか、母が語っていた父よりも年下の人…ですかねぇ』
ルーク「父よりも年下か」
『はい、母と別れた時父は、32でしたね、だから、今まで恋人ができなかったんだと思うんですよね(笑)』
ルーク「そうだったんだな…」
『そうなんですよ〜…やっぱり信用が出来ないって……思っちゃうんですよね………でも………ルークさんは』
ルークさんの腕の中って…
あったかい
『好きだから』
すき
なんだよね
ルークさんのこと
『おやすみ……なさい』
ルーク「……や…み、サナ」
う……ん




