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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第七章 2回戦 ~vs河咲女子高~
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86/150

85話 背水の陣

「……演技か」


 熊捕は相手バッテリーの様子を見て、そう決定づけた。


 しかし演技とは判断したが、その理由が分からない。

 わざとノーアウトのランナーを出して、河咲女子にメリットがあるとは思えない。


 熊捕が打席に入り、ピッチャーの華園は軽く牽制球を放つ。

 ピッチャーとはいえ、投山の足は速い方だ。

 二宮や小鳥遊の陰に隠れているとはいえ、単純な脚力で言えば相模南で3番目に位置する。

 だから熊捕もその牽制球に疑問を抱くことはなかった。


 だが、それも最初の2、3回まで。


 ピッチャーの華園から。キャッチャーの胡蝶から。

 何度も牽制球を放たれては塁に頭から戻る投山は、肩で息をし始めていた。


「ばか! お主はピッチャーなんじゃから、リードくらい余裕を持たんか!」


 投山はいつもの元気も消え、軽く手を上げて返事をする。

 しかし、投山のリードは大きいどころかむしろ小さい方だった。

 嫌になるほど上手く、逆を突く華園の牽制が、投山の体力よりもむしろ精神を削り取っていく。


「……わざと塁に出した理由はこれか」


 背水の陣を敷いて投山の体力を削る。

 これは、華園だからこそ出来る芸当だろう。


(じゃが、わしらが点を取れば向こうが足を掬われる方になろうが。せめてわしで二塁まで送りゃあ、敦子さんで2死三塁まで持っていける。そうすりゃあ内野安打でも1点じゃ)


 熊捕は2ボール2ストライクまで耐球を決め込み、予想を立てる。

 二塁まではランナーをやりたくない。だが投山は回が終わるまでランナーとして出しておきたい。

 そんなバッテリーの意図が感じ取れる。


 ジャイロボールは詰まりやすい反面、バントのように進塁打になりやすい。

 最も打ちにくい伸びるライズボールを決め球にも持ってくるだろう。


 ……だが、熊捕の予想は見事に外れた。


「チェンジアップ!?」


 熊捕は体勢を崩されながらも、球を思い切り叩きつける。

 打球はサード方向、進塁打には問題ない当たり。


 ―――ピッチャーが、華園でなければ。


 球が遅い分守備に割く時間が増えたのか、華園は颯爽とマウンドを降りて打球を処理する。

 セカンドでアウト1つ取られる。


 そんな予感が頭を過ったが、華園はちらりとランナーの投山を肩越しに確認しただけで、すぐさまファーストへ送球した。



「……妙だねぇ」

「そうですね」


 二宮と友希もその違和感に気が付いた。


「確かに際どいタイミングでしたけど、ゲッツーは取れなくてもセカンドでアウトは取れると思いました」

「冒険するならアウト1つ確実に、ってことなのかなぁ」


 首をかしげる二宮のもとに、アウトになった熊捕が戻ってくる。


「あれは桜の体力を削る腹積もりじゃ」

「だからあんな執拗に牽制を……。でも、それって点を取られない前提だよね」

「そうじゃな」


 次のバッターは9番の左門。

 監督からは、送りバントのサインが送られる。


 1球を見送って、2球目。


「上手い!」


 左門は注文通りにサードへ取らせるバントを決める。

 こうも簡単に決められるとは思わなかったのか、華園の顔が少しだけ濁った。


「流石です敦子先輩! なんのボールでした?」

「ライズボールやったわ。まあバントの構えしたからその球が来るって思っとったんやけど。……なんか、違和感があったんよね」

「違和感ですか?」

「うん。……ここまで出かかっとるんやけど。とりあえず、三塁コーチャーに行ってくるわ」


 左門は喉に手を当てて少しだけ微笑むと、華園の観察をするためにコーチャーボックスへと向かう。


 そして、場面は2アウト3塁で小鳥遊を迎える。


(1回戦、華園さん相手のヒットは5本だったっけ。そのうちの3本がポテンヒット。ライズボールも、振り切れば内野の頭を超えるはず)


 取り合えず1球目を見送る。

 初球はジャイロボールだった。


 不思議に思い、守備位置を確認してみると。

 いつもより、ショートが前に来ている。


 小鳥遊の足が速く、内野安打だけは打たれてはいけない。

 そんなことは河咲女子も十分理解している。

 ジャイロボールで詰まれば、三遊間に飛びやすく、内野安打になりやすいが、ショートを前進させることでそれを防いでいる。


 2球目、ジャイロボールに山を張っていたが、華園が球を投じた瞬間、ショートが定位置に戻った。


「インハイ……!」


 ライズボール。

 まるで浮き上がるように、小鳥遊の胸元を抉る。


 小鳥遊はファールで逃れるも、2ストライクと追い込まれる。


(今のショートの動き。逆に言えば守備体系で球種を読めるけど……。それを逆手に取ってくるかな、このバッテリーは)


 ちらっとキャッチャーの胡蝶を見ると、胡蝶はニコッと笑ってマスクをかぶり直す。


(まいったな……。紅葉ちゃんもそうだけど、全く読める気がしない。こうなったら守備位置で判断するしかないけど)


 3球目、チェンジアップが大きく外れ、胡蝶が体で止める。

 小鳥遊がさりげなく守備位置を確認すると、1球目と同様にじりじりとショートが前に詰めている。


(決めた。緩急を使った次の球、ジャイロボールで間違いない)


 4球目。


 ……それは、この試合。

 いや、1回戦も併せて。


 初めて投じられた球だった。


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