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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第七章 2回戦 ~vs河咲女子高~
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80話 対策、河咲女子!

「いやぁ、次の試合は何とかなりそうだねぇ」


 月曜日、朝練に顔を見せた二宮がいつもの調子で話す。

 足にテーピングがぐるぐる巻きにされているが、どうやら医者の話によれば次の試合までには走れるようになるらしい。

 とはいっても、全力疾走は禁止されたみたいだが。


「取り合えず、一安心ですねー。今日の午後は次の対戦相手、河咲女子の対策を立てますよー」


 監督がそう言って、朝練は解散になった。


 教室に戻ると、ちらほらとクラスメイトから初戦突破のお祝いをされた。


「結構、見に来てくれた人もいるんだね!」

「ふっふっふ、我が真の力が広まってしまう……」


 嬉しい、と同時にプレッシャーでもある。

 負ければ廃校、というのは野球部と生徒会以外は知らないはずだが、もしかしたらすでに噂になってたり、なんて疑ってしまう。


 昼休みになって、野球部の5人で集まって弁当を囲んだ。


「それで、河咲女子の話だけど」


 試合の帰りがけ、日曜の休みを使って河咲女子の情報を集めようという話になったのだ。

 まずは小鳥遊が、これまでの戦績を述べる。


「はっきり言って、実績はあまりないみたいだね。大会は50年前からあるけれど、河咲女子が出場したのは15年前くらいから。ほとんどが1回戦負けで、春秋合わせて5、6回くらい2回戦に出場。ベスト4にはだいぶ前に1回だけ」


 続いて友希が、雑誌などの書評を述べる。


「戦績はあまり芳しくないけど、ここ最近で力を伸ばしているみたいだよ。特に守備は、前の試合で見て分かったと思うけど、大分固い。1回戦の斡木クラブみたいに異常な守備範囲やビッグプレーはないけど、アウトにできる球は必ずアウトにできる」


 友希は自分の家にあった雑誌をピックアップして広げて見せた。


 河咲女子は強豪ではないので載っているページ数は少ないが、それでも守備に定評があることが伺える。


「次はわしじゃな。バッティング能力はあまり高くないのう。じゃが、バントやエンドランといった小技が上手いみたいじゃのう」

「敦子先輩が8人いるみたいだね」

「そんな感じじゃ。身体能力の低さを地道な練習でカバーしとる。少ないチャンスを確実にものにするチームじゃ。ランナーがいなくとも徹底して右打ちを……」


 口にして、熊捕は初めて気が付いた。

 熊捕だけではない、そこにいる全員が。


「ニノさんが狙われるのだ!」


 次の試合までに怪我が治る、と言っても完全にという話ではない。

 二宮の方にボールが集まれば、怪我が再発する恐れだってあり得る。


「こりゃあ、右打者にはインコース、左打者にはアウトコースの配球じゃな」

「でも、逆にそれを狙われそうじゃない? 河咲女子も一応私たちの1回戦を見てるわけだし」

「友希の言うことも分かるが、逆に考えりゃあ、河咲女子は右打ちの練習しかしていないとも言える。コースがばれてりゃ率も上がるじゃろうが、そこまで痛手じゃあない……と思う」


 熊捕は少し語尾を弱めて言った。

 少ない情報量なのであまり自信もないのだろう、少しだけ目線が俯きがちになっている。


 そんな熊捕の前に、どこからか身に着けたマントを纏った投山が躍り出た。


「次は我の番なのだ!」


 投山はポケットから似合わない、堅苦しいメモ帳を取り出す。


「河咲女子は……」


 投山は言葉を溜める。

 友希や小鳥遊がごくりとつばを飲み込んだ後、投山は再び口を開く。


「河咲女子は、頭が良いぞ!」

「……」


 微妙な空気になったのも気にも留めず、投山は続ける。


「偏差値は65、崇高なる我が頭脳に肉薄すると言っても過言ではないな!」

「突っ込まん。わしはもう突っ込まんぞ」

「アンタ、どうせ偏差値の出し方すら分かってないのによく言えるわね」

「ふふん。嫉妬が気持ちいいのだ」


 どや顔に熊捕と真中が閉口したのを見て、小鳥遊が場を取り繕おうと助け船を出す。


「ほ、本当に、敦子先輩みたいだねー」

「確かに、敦子さんが次の仮想敵になり得るのだ!」

「……ま、それはそうで、もういいわ。次は自分ね」


 強引に話を打ち切って、真中が話し始める。

 おもむろにスマホを取り出して言った。


「自分は、河咲女子と対戦した人のSNSを覗いてみたのだけど」


「SNSかー。その発想はなかったね」

「流石、ネットに強い女!」

「電子の海で隠密活動とはやることが違うのだ!」

「じゃが、ネットリテラシーはちゃんと持っておかなあんかんぞ」


「……みずき以外、馬鹿にされてる気しかしないんだけど」


 一瞬むっとした真中だったが、熊捕以外は悪気があっていったわけではない。

 そして熊捕も、真中が怒ったところで動じる女ではない。


「続けて、どうぞ」

「……。まあいいわ。華園のストレートなのだけれど、ただのストレートじゃないらしいわ」

「ナチュラルムービングってこと?」

「少なくとも中学までは質のいいストレートだったわ。それにSNSの情報もまちまちで、ノビがあるとかキレがあるとか、手元で動くとか。高校でツーシーム系かカットボール系を新しく覚えたのかもしれないわね」

「それはスパプロみたいだね」

「……そうね。こういった球種の対策はしといた方がいいわ」


 試合は土曜日で、残すは平日の5日のみ。


 それはあまりにも短く、ついに2回戦の日が、訪れる。


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