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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第六章 1回戦! ~vs斡木クラブ~
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74/150

73話 1回限りの奇襲!

 9回の表、斡木クラブの攻撃は6番から。


 3人、最低でも4人で終わらせなければ、追加点を取られる可能性が非常に大きい。

 熊捕はマスクの中でセカンドの二宮を見る。


 満身創痍、その四字熟語がピッタリと当てはまる様相だ。

 バッターもセカンドを集中して狙ってくるに違いない。

 となれば、インコースを主体に攻めるべきなのだが。


 果たしてインコースだけで打ち取れるだろうか。

 体力が有り余っている状態ならともかく、これまでで球威もだいぶ落ちてきている。

 しかし、それでも。


「……いや、流石に無理じゃな」


 二宮の足の状態と、コース限定の攻めを天秤にかけて、熊捕はコース限定を取った。


 二宮の表情を見るに、真正面のゴロすら捌けるか怪しい。

 9回の裏で打順が回ってくるのに、怪我の悪化だけは避けなくてはならない。


 初球、インコースのストレート。

 クロスファイヤーの角度自体は悪くないが、9回も投げて4打席目ともなれば打者の目も慣れてくる。

 思惑通り、流し打ちをしようとしたのか初球は見送ったが、インコースのストレートに仰け反ることもなくなった。


(とにかく追い込めば、お誂え向きのアウトコース、シンカーで落として終わりじゃ)


 打者が監督のサインを見る。

 ランナーはいない時はあまりサインを送っていなかったが……。


 この回は違う。


 二宮が怪我したことによって、そこを狙うかどうかの駆け引きがでる。

 熊捕の結論は、セカンド狙い。


 自分が相手ならそうする。

 怪我だろうが病気だろうが、その原因が自分でない限り弱みを狙う。

 勝負の世界なら当たり前のことだ。

 むしろ、情けをかけるほうが敵に失礼だとさえ思う。


「勝たなけりゃ意味がない、とは言わんが……。結局わしは親の言うことに縛られとるんじゃのう」


 2球目、同じくインコース、球種はチェンジアップ。

 だがバッターは、足を開き強引にインコースを流し打ちした。

 マウンドの前でバウンドした打球は、投山の頭上を越えていく。


「まずい……!」


 普通なら、セカンドの二宮が余裕をもって捕球できる位置の打球。

 だが……。


「ニノ先輩、任せてください!」


 動きかけた二宮を制止して、ショートの小鳥遊が声を上げる。

 あらかじめ、セカンド寄りに守備位置を変えていた。


 二塁ベースを超えて、小鳥遊が打球を処理し一塁へ送球する。

 判定は、間一髪でアウトだった。


「……ずっきー、迷惑かけるねぇ」

「お安い御用ですよ」

「……はは」


 普段なら軽口の1つでも零す二宮が、引き攣った笑みを浮かべるだけでいる。

 相当に左足が痛むのか、重心は完全に右足の乗せていた。


 次の打者は7番。

 この打者もセカンド狙いだと思ったが。


 インコースの速球をレフト前に運ばれた。

 インコース主体であることも、ショートの小鳥遊がセカンドベースよりであることも。

 1打席ですべて悟られてそれを逆手に取られた。

 何より、ここへ来て球威がガクンと落ちているのが痛い。


 休憩と、守備位置の確認を込めてマウンドへ集まる。


「……いやぁ、ごめん、ごめん。遅れちゃってぇ」


 二宮は片足だけで歩み寄ってくる。


「大丈夫ですか、無理しないでください」

「ゆっきーは、心配性、だねぇ」

「そりゃ心配しますって!」

「大丈夫だってぇ、これは、ただの、ブラフだからさぁ」

「息遣いも荒いじゃないですか……」


 熊捕が友希と二宮のやり取りを見て、1つの策を思いついた。


「ブラフ……」

「紅葉さん、何か思いつきましたの?」

「ええ。今までわしらは、セカンドに打たせないようにしてきた。なら逆じゃ。セカンドに打たせる」

「ですが、ニノはもう……」

「ライトのアイリさんに捕らせる。桜が投げる瞬間にダッシュで前進すりゃあ、セカンドかファーストでアウトが取れるじゃろう」

「……確かに、ニノ先輩が動けない以上、ゲッツーはないから向こうもバントはしてこないだろうね。上手くいけばアウトは取れる。でもたった一度の策だよ。しかも、外野にそれを伝える方法がない」


 小鳥遊の指摘はもっともだった。

 外野に大声で策を叫ぶわけにもいかない。

 かといってここへ呼びつけてしまえば、向こうは何かしら感づいてしまう。

 それでは意味がない、奇策だからこそ、可能性をわずかにでも示唆してはいけない。


 ……その時だった。

 右京が、合図もしていないのにライトから駆けつけてきたのは。


「キョーコ、コールドスプレー持ってきたネ!」

「!? な、なんでアイリちゃんが持ってるの?」

「備えあれば嬉しいネ!」

「それを言うなら、憂いなし、だけどねぇ……」


 なぜかポケットに小さなコールドスプレーを持っていた右京が、二宮の足にそれをかける。


「アイリさん、一つ聞いてほしいことがありますわ。相手に感づかれないよう、そのまま聞いてください……」


 右京が戻り、内野陣も戻り、プレーが再開される。

 全員が定位置にいる。


 初球、インコースのストライク、カットボールを投げ込む。

 予想通り相手バッターは、この球では動きはなかった。


(初球見逃しに張ったヤマが当たったのう……)


 2球目はインコースのボール球。

 これまでで一番の棒球だったが、バッターは見送ってカウントは1⁻1。

 熊捕は一歩前に出て、落ち着くように促した。


 ……もちろん、演技だ。

 熊捕はともかく、その演技を受け取った投山の反応に内野陣はびくびくしていたが、投山自身もすでに余裕がなかったのか、問題ない態度だった。


(さあ、1球限りの勝負……)


 3球目、アウトコース真ん中の棒球。

 バッターは見逃すはずがない。一番おいしいところを見逃すはずがないのだ。


 ……それが、餌だとも気づかずに。


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