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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第六章 1回戦! ~vs斡木クラブ~
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73/150

72話 届かない背中

 空に、雲がかかり始めた。


 その暗雲と同様に二宮の表情は淀んでいる。

 奥歯が歯茎に埋もれるかと思えるほどに噛みしめ、二宮は怪我をしていない方の右足で思い切り飛んだ。


 三塁がアウトになっている時点で、ホームはタッチプレイになる。

 キャッチャーがサードからの返球を捕った瞬間と、二宮のジャンプのタイミングはほぼ同時だった。


 それに対する審判の判定は……。


「セーフ!」


 主審の腕が開かれた瞬間。


「やっっったああああああ!」


 2⁻3。まだ同点にはっていない。

 それでも、微かに希望が見えた。勝利の2文字が、届くところまで。


 アウトになった一ノ瀬が肩を貸し、生還した二宮をベンチまで運ぶ。


「いやぁ、最初からホームに投げられてたらやばかったねぇ」

「だからわざと、わたくしがアウトになったんですのよ」

「ま、そういうことにしとこっかぁ」


 ツーアウト。それでも得点圏にランナーがいる。


 投山が左打席に入る。

 いかに打率が悪かろうと、逆転の目はここしかない。


 獣のような目つきで投手を見るが、柴谷は冷たい目つきで投山を見返した。


 初球から振っていくが、ファウル。

 2球目も、3球目も、ボール球でさえも喰らいついてファウルにした。


 そして5球目。

 振り切ったバットから快音が響く。

 だが鋭い打球ではあったが、セカンドの真正面だった。


「ちっ」


 小さく舌打ちをして、それでも全速力で一塁を目指す。

 視界の片隅に映る打球の行方。

 その打球がセカンドの手前で―――大きく弾んだ。


「なっ!」


 小石があったのか、控えとはいえ斡木クラブの選手が捕り損なうとすれば、『ここしかない』というタイミングでイレギュラーが起きる。

 セカンドは体で止めるのが精一杯で、素早く拾い上げて一塁へ送球したが。


 投山の足が勝った。


「友希、これはヒットなのか!?」

「そうだよ桜ちゃん、ヒットヒット!」

「やはり運も実力のうちなのだ!」


 2アウト満塁、1点差。


 いつも以上に冷静に打席に入る熊捕の様相を、一塁コーチャーの友希は期待と羨望のまなざしで見つめていた。

 自分ではあのような落ち着いた振る舞いは出来ないから。


 だけど、だからこそ期待ができる。

 初回から大きな声で応援してはいたが、終盤になると声援はより熱量は増す。

 熊捕もその声は耳に届いていたが、あくまでも冷静に。


 心は熱く、思考は冷たく。

 思考の比率を重視して。

 

 投手の柴谷の球は速い。

 それでも、相性で言えば前のピッチャーよりは合っている。


 ―――カッ。

 熊捕が、大きく割れて低めにコントロールされたカーブを捉える。

 キィィィン!


 ジャストミートして、快音を残した。


 相模南のベンチが大きく湧き上が……ったのは、一瞬だけ。

 バシィ! とキャッチャーミットでも中々出ない大きな捕球音が、相模南のベンチを黙らせた。


「ツキがそうそう、上手く続くはずがなくてよ」


 ライナーをキャッチされた瞬間、ため息がどことなく漏れてしまった。


 抜けていれば逆転のその打球は、虚しくもショート高峰の正面だった。

 打った当の熊捕は、一塁へ向かう半ばで空を仰ぐ。


 捉えたと思った。

 前を走る斡木クラブのその背中を掴み、後ろに追いやれると思った。


 だがあと一歩、いや指先を掠めて寸でのところで掴みかけた手が空を切った。


 たった1点が、空に立ち込める暗雲と同様の重さを心に圧し掛かる。


 雲がかかったまま試合は最終盤、9回へと突入する。


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