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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第六章 1回戦! ~vs斡木クラブ~
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68/150

67話 勝率と賭け

 6回の表、斡木クラブの攻撃はクリーンアップから。

 中でも、最も長打力のある霊山が打席に入る。


 高峰とは雰囲気が違う。

 まるでフリーの打撃練習に入るかのような、こちらまで気が抜けてしまいそうなリラックスした顔持ち。


 投山がバシン! と、ボールをグラブに叩きつけると、帽子をかぶり直した。


 1球目、カットボールを外角に投げる。

 しかし霊山はまるで興味がないかのように、ピクリともせず見送った。

 狙い球を絞っているのか、はたまた様子を見ただけなのか。


 熊捕は霊山の狙いを探るために、変化球をボール球にして出方を見る。

 だが、霊山はこれも余裕をもって見送る。


(……厄介じゃな、これほど狙いが読めんのは)


 3球目、インハイのストレート。


 クロスファイアの生命線。

 これなら、嫌でも反応するはずだ。

 ストライクともボールトもとれる際どいコースに放たれたストレート。

 だが霊山は、仰け反ることもなく、インコースを待っていたと言わんばかりに力強く振りぬいた。


 ギィィン! 

 と熊捕の鼓膜に轟音が響く。

 今まで聞いたどの打球音よりも大きい音。

 だが、バットの根っこだ。


「レフト!」


 高く、高く舞い上がった打球を見て内野陣は安堵の表情を見せる。


 しかし、段々と顔が曇っていく。

 あらかじめ深く守っていたレフトの左門が、後ろに下がり続け、足が止まらない。


「まさ……か!?」


 霊山が打った飛球は―――フェンスぎりぎり手前で、左門のグラブに収まった。


「あっ…ぶな」


 友希が思わず、口に出してしまった。

 詰まった打球があそこまで飛ぶとは、元チームメイトの友希でも驚きだ。


 当の霊山は、二塁ベース手前で腰に手を当て、小さく肩を落とす。


「いやー、シュートだと思ったんだけどなー。凡退しちゃってすまんなー」

「惜しかったわよ、詩織。御覧なさい、あのピッチャーの悔しそうな顔を。賭けてもいいわ、あのピッチャーは荒れるわよ」

「賭け事はよくないけどなー。だけどまー、それが本当なら見ものだなー」


 アウトになったんだからいーじゃん、と思うのは野手だけだ。


 コントロールミスや失投などなら、集中力が足りないだけと切り替えることはできる。

 だが、自信のある1球を痛打されるほど心に来るものはない。

 それも、詰まってなおホームランすれすれともなれば。


 投山の集中力を削ぐには十分すぎる当たりだった。


 続く4番バッターの3球目。

 インコースに要求した球が、甘く中に入ってくる。


 カキィィン! と快音が響いた。

 綺麗にセンター返しされた球に、反応よく投山がジャンプしてグラブを出したが、届かずにセンター前ヒットとなる。


 5番バッターは送りバントの構えを取る。

 遅らせないためにシンカーを要求したが、大きく外れて見送られる。

 2球目はストレート、あわよくば高めでフライを上げさせるつもりが、真ん中に入ってくる。


「桜!」


 キャッチャーの熊捕は投山が捕るように指示したが、反応が遅れて結局サードの友希が処理し、2アウトランナー二塁。

 そこで熊捕がタイムを取り、マウンドへ駆け寄る。


「いきなりどうしたんじゃ。集中が一気に無くなったぞ」

「……我の球は、本当に通用しているのか?」

「してるじゃろう。まだ2点しかとられてないんじゃ。それに、あの高峰を打ち取ったんじゃぞ」

「それは、たまたまじゃないのか?」


 理性で闘志を保とうとしながらも、心が折れかかっている。

 熊捕が感じ取った投山の印象はそんな感じだった。


「……たまたま、とも言えるがのう」

「それなら……!」

「良いか桜、数学が苦手なお主に1つ教えちゃる。野球に限らずスポーツは確率じゃ。どんないい球を放ろうが打たれることはある。逆にどんなテキトーな球を放ろうが、抑えることはある。じゃが、9回まで投げれば確率は大体収束する。じゃから、お主がやることは1つ、相手との実力差は関係のうて、1厘でもこっちが勝つ確率を上げることじゃ」


 熊捕の厳しい言葉に、投山は顔を俯かせる。


「わしの読んだ漫画で、好きなセリフを教えちゃる。『努力で限界まで勝率を上げていって、勝敗が完全に運に委ねられた時、その勝負は最高の賭けになる』」

「賭けはどうかと思うぞ……」

「わしらには廃校がかかっておる。お主のやってることは廃校撤回の切符をくしゃくしゃに丸めているのと同じじゃ。高峰との勝負を思い出せ。あの時は確かに、『最高の賭け』だった。ついでに言うと、わしは負ける気で勝負ごとに臨んでいる奴が大嫌いじゃ。たとえ実力差があったとしても勝負事は勝つ気で臨め。気の持ちようさえも勝率にかかわってくるからのう」


 大嫌い。

 そんな単語が出てくるとは夢にも思わなかったのか、投山はびくっと肩を震わす。


「弱気になるな! いつも大魔王だサタンだと口にしてた桜はどこに行ったんじゃ!」


 魔王・サタン。

 それは単にかっこいいと思ったから名乗っただけだ。

 大魔王まで格上げしたのは、後輩に魔王の座を明け渡したからだ。


 最初は遊びだった。

 それでも、大切な後輩と交わした大切な約束だ。


 実際に廃校が決まった中学校の後輩が、今の自分を見たらどう思うだろうか。


「……紅葉」

「なんじゃ」

「我を殴れ」

「……」


 唐突な発言に熊捕は顔をしかめる。


「言いたいことは何となく分かるが。わしは手加減せんぞ」

「それで、構わないのだ」


 熊捕は大きく振りかぶった手を……静かに投山の肩に置いた。


「わしは手加減できんけえのう。暴力行為で敗退は御免じゃ。……大丈夫じゃ。わしはお主を信じておる」


 そう言って、熊捕は笑顔を向けた。

 鈍感な投山でも思う。

 厳しい言葉をかけられながら、最後にそんな優しい笑顔を向けられたら。


「なんじゃ、顔を赤くさせて。思うところでもあるんか」

「そんなものないのだ! 早くしないと、暴力じゃなくて遅延行為で失格になるのだ!」

「……そうじゃな」


 熊捕は定位置に戻り、マスクをかぶる。

 少しだけ疲労も感じてきた。だけど。


 続く6番を三振にして、6回表を終えた。


 6回の裏は2番から始まる好打順。


 だが、友希と真中が出塁して2アウト一・二塁のチャンスを作るも、右京がショートゴロに倒れて無得点で終わった。


 スコアは1⁻2のまま、中盤も終え終盤へ突入する。


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