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Baseballスター☆ガールズ!  作者: ぽじでぃー
第六章 1回戦! ~vs斡木クラブ~
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64/150

63話 最速の女

 3回の表、斡木クラブの先頭バッターは高峰凛。


 初回の時は浮足立って気にも留めなかったが、高峰がバッターボックスへはいる動作は目を奪われるような美しさだった。


 野球をやったことがある日本人ならば、誰でも真似したことがあるだろう。

 まるで弓を射るかのように、右腕を伸ばしバットを立て、肩の袖をつまむ。

 そして目線は、射貫くように投手を刺す。


 メジャーリーグで更新不可能と言わしめた安打記録を塗り替えた日本人のフォーム。


 対戦してみて初めて分かる。

 ルーティーンというのは、対戦相手にも恐怖を与えるものなのだと。


 確かに高峰には、〝本物〟の影が見えた。


 1打席目はシュートとカットボールを投げた。

 ならば。


 インコースのストレート。

 ドン! と腹に響くようなミットの音が響く。


「左は左で、球の出所が見にくいわね」


 賞賛の言葉を送る高峰だったが、表情からは余裕が消えない。


 2球目はチェンジアップ。

 ……だが。本来のチェンジアップとは違った。


 チェンジアップはそもそも球が遅いわりに、変化量が少ない。

 チェンジアップが来ると分かっていれば、投山の持っている球種の中で、これほど打ちやすい球はない。

 だからこそ、意表を突くために腕を強く振ることが要求される。


 なのに、投山のフォームは縮こまっていた。

 高峰のタイミングは確かに、少しは外すことができた。

 それでもその微妙なフォームの違和感が、高峰の右足を踏ん張らせるだけの猶予を与えた。


 キィン。

 泳いだスイングで、ふらふらと上がった打球。


 それを見た瞬間は打ち取ったと思っていた。

 それが勘違いだったのだ。

 ほかの人から見れば打ち取ったスイングでも、高峰にとっては違う。


 泳がされようが振り遅れようが。バットの根元だろうが先っぽだろうが。

 それが多少であれば、ヒットゾーンにもっていくバットコントロールを有している。


「セカ……いや、ライト!」


 決断力のある熊捕でさえも迷わせるような、丁度セカンドトライとの間に打球がポトリと落ちた。


 先頭で高峰が塁に出る、その意味を。

 この大会の神奈川予選に出ている人であれば、誰もが知っている。

 もう、ホームランを打たれた方が良かったのではと思わせるほどに、塁上の高峰は存在感を放っている。


(必ず走ってくる。初球じゃ)


 一般的には、一塁ランナーの動きを直接見れる左ピッチャーからの盗塁は難しいとされる。

 だがそれでも、牽制を重ねるたびに高峰のリードは大きくなっていく。

 まるで、挑発しているかのように。


 我慢をできずに、投山は投球モーションへ入る。

 続く2番の柴谷に対し1球目、要求した高めのストレートが投じられた。


「セカンド!」


 ボール球のため柴谷は見送ったが、予想通り高峰は走っていた。

 熊捕は練習通りに送球する。


 ストレートで。高めで。スムーズな動作で。逸れもしなかった二塁への送球。

 ……それでも、セーフだった。


 どんな策を弄そうとも、高峰の二盗は防げない。

 そんな事実を突きつけられた。


「……どうしますか?」


 内野がマウンドに集まり、一ノ瀬が第一声を発する。


「私はバントだと思うけど……」

「三盗もないとは言えんが、大方バントじゃろうな。一死三塁で3番の霊山さんの打席は動画でも何度も見たしのう」


 もちろん、2番の柴谷がバントした場面も何度も見た。

 バントだけに限れば、柴谷が斡木クラブの中で最もうまいのも事実だ。

 だがそれでも、簡単に送らせるわけにはいかない。


 1ボールからの2球目、外角のストレートを要求し、ファーストの一ノ瀬がチャージをかける。


 ……柴谷は、予想通りバントをしてきた。

 教科書通りに、苦もせずに三塁側へ。


「ファースト!」


 投山がダッシュして捕球したが、サードの友希の声によってファーストへ送球する。

 相手がいかに策を練ろうとも、確実に1点をもぎ取る。

 それが斡木クラブの野球なのだ。


 ワンアウトで三塁ベース上に高峰が。そして打席には霊山が。

 そして5分後にはスコアボードに刻まれる1点。

 動画の光景がデジャヴのように湧き上がる。


 内野は前進守備。

 一ノ瀬や二宮も、そして特に友希と小鳥遊は、決して守備力が低いわけではない。

 それでも、内野ゴロを打たれるのはリスクが大きい。

 できれば三振、内野フライで打ち取りたい。


 1球目はインハイのストレート。

 ストライクゾーンだがこれを見送る。


 ……2球目、シンカー。

 だが、高めに浮いた。


「甘いっ……!」


 それでも、投山のシンカーはコースが甘かろうと簡単に打てるボールではない。

 霊山は泳がされ、かつ打球を高く打ち上げる。


 しかし。片手で、真芯で捉えたわけでもないのに。

 犠牲フライには十分な距離のフライになった。


 飛んだ先が、センターの真中でなければ。


「勝負するつもりですか?」


 タッチアップの構えを取る高峰に、友希が声をかける。


「んふふ、当然よ。そちらの二遊間の2人でもそうでしょう? 転びでもしない限り、タッチアップ確実な距離よ。センターの子が、先ほどの送球さえも手を抜いていたのであれば、話は別だけれど」


 先ほどのタッチアップでアウトになった、柴谷の50m走のタイムは7.1秒で、友希や真中よりも速い。

 対して、二宮は6.6秒、小鳥遊は6.8秒。

 そして高峰も6.6秒。


 だが高峰には、二宮の足と小鳥遊の走塁技術の2つを有している。

 ……真中の、矢のような返球をもってしても。


 熊捕はタッチすることも叶わずに、高峰はかいくぐった。

 スコアは、0-2で3回の表を終える。 


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