4-32 眠り、目覚め
トランシーバーでやり取りをしながらやってきたエリー達三人は、二人の子供と一人の亡骸にようやく合流できた。
責任は全部自分で被るつもりだったクリスは、すべてが終わったその場を見て、ナイフが突きたてられたまま事切れている少年を見て苦い顔をした。リリアの勝手な行動から来た結果とはいえ、友達殺しをさせてしまったなと。結果だけを見ればそれでジゼットを含めて助けられたわけであるが、それでもだ。エリーもまた、表情は変えないが同じ思いを抱いていた。
結局、何も変わらなかった。友達の為にと少女なりに尽くしてみせても、彼女は不幸になった。
顔を伏せたまま明らかに弱っているリリアにかける言葉もなく立っていると、進み出た人間がいた。アナベルだ。
彼女は子供の亡骸のそばで膝を折ると、その顔に手をかざして。
「眠らせてあげましょう」
そう言って、テオの両目を閉じさせた。彼の表情は、一層に穏やかになった。
「ねぇ」
口を開いたリリアに、全員の視線が向く。
少女はやはり弱った態度だった。伏した目で、眠りについているテオをずっと見つめていた。
「私、どうすればいいの」
このままテオを置いて行ってしまったほうがいいのか。それとも誰かが彼を引き取ってくれるまでここで待つべきなのか。彼を殺した事実に、自分は何をすればいいのか。
どちらにしても意味はない。何をしても意味はない。もう彼は居ないのだから。
エリーも、ジゼットも、アナベルも、口を閉ざす。いいから帰ろうとこの場から引き剥がしたい気持ちはあったが、彼女が満足するまで居させてやるべきなのかもしれないとも感じていたからだ。クリスもまた黙していた。この光景は、いつか見た景色。
いつか見た景色だからこそ。少女の質問に、経験の分だけの答えを持っている。
クリスは口を開く。
「祈ればいいよ」
「祈る?」
顔を上げるリリアに、クリスは両手の指を組んで。
「文言は知らないけどさ。どうか安らかにおやすみください、天国にいけますようにって」
「・・‥‥」
「うちらが死者にしてやれることなんて、それだけだよ」
自分の友達も、そうやって送った。
リリアは黙った。そしてテオの亡骸の傍に膝を付くと手を合わせて、素直に習った通りに祈り始めた。
それは、彼女が始めてする死者への手向け。少女は一生懸命に、祈った。友達の為に、祈った。
ふと気配を感じて、顔を上げる。
隣に居るアナベルが、ジゼットが、そしてやってきたエリーも、クリスもまた。手を合わせて目を閉じて、彼女と同じように祈っていた。
皆の様子を見てリリアは胸が一杯になった。なぜかは彼女にはわからないが、それはとても幸福に思えた。だからもう一度、目を閉じて祈る。
一心に。
いくらかの時。
少女がやめる気配がなかったので、クリスは「もういいよ」と傍に寄ってリリアの肩を叩いた。
顔を上げたりリアの顔は、少しだけ良くなっていた。
「ねぇ。リュックも、死んじゃったんだよね」
「うん、まぁ」
「リュックはどこ。リュックもお祈りに行ってくる」
そう述べる素直な少女に、案内するよと伝えて五人は歩き出した。
並んで歩く途中、リリアはジゼットの手を握った。どうしたのかとジゼットが見ると、少女は隠せない悲しみの中にも、少しだけ緩めた顔で。
「大丈夫だよ。ジゼット」
述べて、リリアはジゼットの手を引いた。
その胸に、ひとつの固い決意を秘めて。




