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真心の贈り物

あらすじユン・シウとカン・サランの二人は、厳かな雰囲気が漂う小樽の「ガラス館」を訪れます。

そして、お互いを意識しながら歴史ある堺町通りを歩み進め、次の目的地である「オルゴール館」へと向かうのでした。

オイルランプの灯るホールを後にし、

厳かな雰囲気を残す石造りの通路を進む。

その先に広がっていたのは、きらめくガラスの迷宮だった。

高い天井から吊り下げられたシャンデリアが、

無数のガラス製品に反射して、店内をまるで宝石箱のように彩っている。

棚に並ぶのは、

小樽の海をそのまま切り取ったかのような深い青色のグラスや、

流氷を思わせる繊細なひび割れ模様の器、

そして光の角度で虹色に表情を変える一輪挿し。

チリン、とどこかで涼しげな風鈴の音が響くたび、

サランは「わぁ……」と小さな歓声を上げ、

子供のように目を輝かせて棚を覗き込んだ。

木を基調とした温かみのあるフロアには、

素朴で愛らしいガラス細工が所狭しと並び、

日常を彩るガラスたちがそれぞれの輝きを放っている。

「すごく綺麗……」

サランがそっと指差したのは、

淡い桜色から透明へと移り変わるグラデーションが美しい、

一対のペアグラスだった。

表面には、まるで本物の雪の結晶が舞い降りたかのような、

極細の彫刻が施されている。

「それは『しばれ硝子』だね。北海道の厳しい冬の寒さを表現した、この街の伝統的な技法なんだよ」

「しばれ硝子……。名前まで切なくて素敵です」

サランは愛おしそうにグラスを見つめていたが、

値札に目を留めた瞬間、ふっと長い睫毛を伏せた。

彼女にとって、老舗の職人が作った美術品のような硝子細工は、

少しだけ背伸びが必要な値段だったのだろう。

次にサランが引き寄せられたのは、

動物や植物をモチーフにした手作りのミニチュアガラスだった。

光を浴びてキラキラと輝く小さなガラスのウサギや、

色鮮やかな一輪挿し。

彼女は一つひとつを愛おしそうに見つめ、

時折、少女のように目を輝かせている。

「これ、私の部屋の窓辺に飾りたいな」

そう言ってサランが手に取ったのは、

透明なガラスの中に小さな青い花が閉じ込められた、

美しいペーパーウェイトだった。

煌びやかな工芸品群を、夢中で物色している彼女の姿。

ユン・シウはその姿を微笑ましく思い、ただ静かに目で追っていた。

カン・サランは散々悩んだあげく、

ガラス細工のキーホルダーをふたつ購入した。

自分と友人へのお土産なのだという。

それでもまだ心残りがあるようで、どこか残念そうな様子だった。

ユン・シウには経済的な余裕があった。

だが、今日出会ったばかりの初対面の女性に、

いきなりアクセサリーをプレゼントしては、

かえって印象を悪くしてしまうかもしれない。

それに、彼女は自分にとって大切で愛くるしいファンだ。

買ってあげたい気持ちは山々だが、

押し付けがましい真似をしてはいけない。

シウはそんなジレンマと散々戦い、しばし心の中で悶絶した。

そして売り場が混雑する中、

カン・サランがトイレに向かったタイミングを見計らい、

彼は動いた。

素早く売り場へ戻り、ピアス、ネックレス、ブレスレット、

そして指輪のセットを一気に購入する。

すべて、雪の結晶をモチーフにした同じ意匠のアイテムだった。

指輪は、自分の小指のサイズを選んだ。

一緒に店内を見ているとき、

目視でサランの薬指と自分の小指のサイズがほぼ同じであると、

おおよそ把握していたのだった。

値段はブランド物のアクセサリーと比べれば安価だが、

十分に人に自慢できるだけの品質を備えている。

(だが、今渡せば誤解を招く。下心がある男だと思われては台無しだ)

そう考えたシウは、後日、韓国に帰国してから彼女に渡すことに決めた。

ところが、まだ戻らなくてもいいはずのカン・サランが、

すでに自分を探し始めていた。

その姿に焦ったシウは、

ギフトボックスやラッピングをしてもらう時間を諦めざるを得なくなる。

急いで会計を済ませたところへ、サランがすぐ近くまでやってきた。

買うところを見られたくなかったのだが、しっかりと目撃されてしまう。

「自分もお土産を買おうと思って。母親と、それから義母に」

気がつけば、珍しく人に嘘をついている自分がいた。

ベストセラー作家とは思えない、なんとも気の利かない台詞だった。

「そろそろ、次に行こうか」

二人は『ガラス館』を出て、

歴史ある石造りの倉庫群が並ぶ堺町通りをゆっくりと歩き出した。

「綺麗でしたね。本当に夢の中にいるみたいでした」

麦わら帽子の庇を軽く押さえながら、

サランが無邪気な笑顔を向けてくる。

彼女の歩幅に合わせるように、シウは自然と歩調を緩めた。

時折すれ違う観光客の視線が、

並んで歩く二人の圧倒的なビジュアルに注がれる。

しかし、今の二人にはそれが全く気にならなかった。

お互いが、お互いのことだけに意識を集中させていたからだ。

やがて、通りの先がひらけた。開拓時代の面影を強く残す、

メルヘン交差点と呼ばれる五叉路へと到着する。

同時に視界の先へ、その交差点の象徴とも言える、

重厚なレンガ造りの建物が姿を現した。

『オルゴール館』であった。

今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・カナン...女優。カン・サランの芸名。ソン・インナに名付けられた。

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※ユン・ジュンソ...シウの父。総合映像制作会社S.S.Iの会長

※ユン・ヒョヌ...シウの異母兄。ソヒョン・チョヨンの恋人。S.S.Iの後継者

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※イ・ウジン...映画監督。『残酷な美しさ』『私にキスできますか?』

※パク・ドユン...映画監督。シウの親友。Juringエンタ常務。映像制作部部長。

※イ・ダイン...『私にキスできますか?』ヒロイン

※キム・ソヒョン...シウの元恋人『Love Hunt』プロデューサー。

※キム・ソンミン...キャサリン。薔薇組第二夫人。数千万ウォンの身体を誇る

※ハン・チョヨン...女優『私にキスできますか?』イ・ダイン役

※ハン・ジヨン...女流写真家。奇跡の1枚を撮る「アメイジングメーカー」

※ナ・ジウ...薔薇組音響アシスタント。通称小枝。


※虹の薔薇組...ドユンのハーレム軍団。精鋭撮影チーム。

※佐藤直樹...ユン・シウの祖父。伝説の投資家。

※佐藤志乃...ソン・インナの本名。

※天翔樹林...ソン・インナのシルフィード歌劇団時代の芸名。

※涼風小鳥...中村綾。サランの母親。

※中村綾...サランの母親

※トリニティG...韓国最大の財閥グループ

※S.S.I...総合映像制作会社

※Juringエンタ...芸能事務所兼資産管理会社。会長インナ。社長シウ。

※アトリエ・ノア...中堅芸能事務所。サランことカナンが所属していた。

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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