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『銀河の彼方より降臨し、高貴な白き天使、彗星』

超多忙を極める5月、念願の仔犬「彗星」を新しい家族として迎えた矢先、サランの妊娠が発覚します。世界の期待を背負う絶頂期ゆえに、仕事への影響を一人で激しく不安視するサランでしたが、シウは「僕たちの家族より大切なものはない」と彼女を優しく力強く抱きしめます

5月

映画『真緑の翡翠』の世界的大ヒットは、ユン屋敷の日常を激変させていた。

連日、国内外のメディアやハリウッドからのオファーが殺到し、

シウもサランも分刻みのスケジュールに追われる日々を送っている。

さらにキム・ソヒョン室長が指揮を執る『Cosme de Saran』のアジア展開も、

凄まじいロケットスタートを切っていた。

サランの名を冠したフレグランス『Pings Romanceピンス・ロマンス』は、

各国の主要都市で完売が相次いでいる。

そんな超多忙を極める5月のある日、

約束通りユン屋敷に新しい家族がやってきた。

ホワイトシェパードの雄、サランがずっと夢見ていた『彗星すいせい』である。

「本当に真っ白で、高貴な天使!」サランは目をごく大きく見開いて、

小さな雪玉のような仔犬を抱きしめた。

正式名称は『銀河の彼方より降臨し、高貴な白き天使、彗星』。

先住猫のマシロとでんすけは、リビングの隅から「なんだこいつは」と怪訝そうに短い足を伸ばして観察している。

彗星が「きゅ〜ん」と鼻を鳴らすたびに、屋敷の中はドタバタとした活気に包まれた。

仕事も私生活も、これ以上ないほど充実し、まさに「これから」という輝かしい季節。

しかし、サランは自身の身体に訪れた「ある異変」に気が付いていた。

朝、キッチンで玉ねぎの微塵切りをしようとした瞬間、

急に胸の奥がキリリと締め付けられるような猛烈な吐き気に襲われたのだ。

大好きなはずの、だし入り味噌やハンバーグの焼ける匂いを受け付けない。

スケジュール帳を確認し、何度も計算し直したサランは、

洗面所で小さな検査薬を握りしめたままフリーズした。

陽性の赤いラインが、くっきりと浮かび上がっていた。

なんと、彼女の身体には新しい命が宿っていたのである。

(どうしよう……。今、映画もコスメも、一番大事な時期なのに……)サランの脳裏に、激しい不安が渦巻いた。

世界中が自分を「アクションミューズ」と呼び、大きな期待を寄せている。

今自分が倒れるわけにはいかない、でも、このお腹の赤ちゃんはどうなるのだろう。

サランは、無意識に指先をぎゅっと握りしめた。

一人で抱え込む孤独な夜、サランの耳元でガラス細工のピアスが寂しげに揺れた。

その夜、書斎での仕事を終えたシウがリビングに降りてきた。

ソファで彗星を抱きかかえたまま、どこか上の空で丸くなっているサランを見て、

シウはすぐに異変を察した。

「サラン、どうしたの? どこか具合でも悪いの?」

シウが優しく微笑みながら隣に腰を下ろし、サランの手をそっと握りしめた。

その心地よい体温に触れた瞬間、サランの瞳から静かに涙が溢れ出した。

「私、あの、言わなきゃいけないことが、あるの」

サランは震える声で、死に勇気を振り絞った。

「お腹に、赤ちゃんができたみたい。でも、今はお仕事がとっても大変な時で、

みんなに迷惑をかけちゃうかもしれなくて、私、どうしたらいいか……っ」

涙で言葉を詰まらせ、シウが怒るか、あるいは困惑するのではないかと、

サランは小さく身を縮めた。

幼い動画の中で結んだ「婚約条約」は本物だと思っているけれど、

現実の重さに押しつぶされそうだった。

しかし、シウの反応は、サランの予想を完全に裏切るものだった。

「……本当かい!?」シウは一瞬だけ目を見開いた後、

これまでに見たことがないほど幸せそうに顔を緩ませた。

そして、サランの言葉を遮るように、彼女の身体を優しく、

けれど力強く抱きしめた。

「怒らないの?」

「怒るわけないだろう! すごいよ、サラン、本当にありがとう! 最高のプレゼントだ!」

シウは声を立てて笑い、興奮を隠せない様子でサランの額に何度もキスを落とした。

「でも、映画の次作のオファーや、コスメの契約が……」

心配そうに呟くサランの顔を、シウは愛おしそうに両手で挟み込んだ。

「そんなもの、僕たちの家族より大切なわけがないよ。仕事ならいくらでも調整できる。

母上やソヒョンだって、絶対に味方になってくれるさ」

「ただただ最高に嬉しいよ」

シウはサランの涙を指で優しく拭い、悪戯っぽくウインクした。

「サラン、あけましておめでとうの時に言っていた『家族が増えたらいいな』って、このことだったんだね」

「それはワンちゃんのことだったのです。

でも、まさか本当の家族が増えるなんて、私もびっくり」

サランは少し耳を赤くしながらも、シウの胸にぎゅっと顔を埋めた。

不安は一瞬で消え去り、胸の奥が温かい幸福感で満たされていく。

足元では、主たちの歓喜の声を不思議そうに聞きながら、

白い仔犬の彗星が小さく「わん」と鳴いた。マシロとでんすけも、

それにつられるようにあくびを重ねている。

窓の外には、新しい命の誕生を静かに祝福するように、

5月の美しい満月――フラワームーンが、ユン屋敷を優しく照らし出していた。


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・カナン...女優。カン・サランの芸名。ソン・インナに名付けられた。

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※ユン・ジュンソ...シウの父。総合映像制作会社S.S.Iの会長

※ユン・ヒョヌ...シウの異母兄。ソヒョン・チョヨンの恋人。S.S.Iの後継者

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※イ・ウジン...映画監督。『残酷な美しさ』『私にキスできますか?』

※パク・ドユン...映画監督。シウの親友。Juringエンタ常務。映像制作部部長。

※イ・ダイン...『私にキスできますか?』ヒロイン

※キム・ソヒョン...シウの元恋人『Love Hunt』プロデューサー。

※キム・ソンミン...キャサリン。薔薇組第二夫人。数千万ウォンの身体を誇る

※ハン・チョヨン...女優『私にキスできますか?』イ・ダイン役

※ハン・ジヨン...女流写真家。奇跡の1枚を撮る「アメイジングメーカー」

※ナ・ジウ...薔薇組音響アシスタント。通称小枝。


※虹の薔薇組...ドユンのハーレム軍団。精鋭撮影チーム。

※佐藤直樹...ユン・シウの祖父。伝説の投資家。

※佐藤志乃...ソン・インナの本名。

※天翔樹林...ソン・インナのシルフィード歌劇団時代の芸名。

※涼風小鳥...中村綾。サランの母親。

※中村綾...サランの母親

※トリニティG...韓国最大の財閥グループ

※S.S.I...総合映像制作会社

※Juringエンタ...芸能事務所兼資産管理会社。会長インナ。社長シウ。

※アトリエ・ノア...中堅芸能事務所。サランことカナンが所属していた。

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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