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エイプリルムーン

4月、互いの誕生日を温かく祝い合い、シウから婚約指輪を贈られたサランは深く幸せを噛み締めます。そして4月末、出演映画『真緑の翡翠』が世界同時配信されると、スタントなしの圧倒的な武術アクションが世界中を熱狂させ、わずか24時間で世界1位を記録。ハリウッドからもオファーが殺到する時代の寵児となった夜、サランは世界1位の喧騒をよそにシウの腕の中で犬を飼うおねだりをするなど、満ち足りた幸福の中でさらなる未来へと歩み進めるのでした。

4月11日。

ユン屋敷の庭には、満開の桜が風に吹かれて柔らかな絨毯を作っていた。

この日はシウの誕生日。

派手なパーティーを嫌うシウのために、サランが用意したのは、

彼の大好物である温かい手料理と、小さくて素朴なホールケーキだった。

「お誕生日おめでとう!」サランはそう言って、

大きな包みと小さな箱を差し出した。

中に入っていたのは、手編みのローブとおしゃれな伊達眼鏡であった。

サランもギャラの入る身分になっていた。

無論、生来貧乏性な彼女は、無駄使いなどしない。

小樽のロケでの合間に毛糸を大量に持ち込んで編んだのであった。

網目の数ほど想いを込めたと、女優かぶれの演技を加えた。

「ありがとう。すごくいいね!……大切に使うよ」

照れくさそうに笑うサランの耳元で、ガラス細工のピアスがチリンと鳴る。

シウはサランを引き寄せ、その額にキスをした。

「最高の誕生日だよ」

膝の上ではマシロとでんすけが、

まるで二人を祝福するように喉を鳴らしていた。

それからわずか11日後の4月22日。

今度はサランが誕生日を迎えた。この日、ユン屋敷には特別な『プレゼント』が届いていた。

インナとキム・ソヒョン室長が死力を尽くして完成させた、

サランのプロデュースコスメ『Cosme de Saran』のファーストサンプルだ。

「わあ……! 本当に桃とマンゴーの香りがする!」

サランは、シウから贈られた桜色のワンピースを身にまとい、

届いたばかりのリップグロスを唇に滑らせた。

鏡に映る彼女の指先は、クリアなマニキュアが健康的に輝いている。

「サラン、お誕生日おめでとう。」シウが贈ったのは、

彼女の誕生石であるダイヤモンドが小さくあしらわれたリング。

サランの瞳に、嬉し涙がじわりと浮かぶ。

「私、生まれてきて本当によかった……!」

『Love Hunt 4』の配信開始によって、今やSNSのフォロワー数が爆発的に増加しているサラン。

しかし彼女にとって一番大切なのは、この屋敷でシウと交わす、静かで温かい時間そのものだった。

そして4月末。

世界中の映画ファンとネットユーザーが固唾をのんで見守る中、

映画『真緑の翡翠<グリーン・ジェイド>〜最期の戦い〜』が、

ついに主要配信プラットフォームで世界同時配信された。

劇場公開ではなく「ネット配信」という形をとったのは、世界中の人々に一瞬で届けるため。

配信開始のカウントダウンがゼロになった瞬間、世界中で一斉に再生ボタンが押された。

結果は――歴史的な大快挙だった。

配信開始からわずか24時間で、再生回数は世界1位を記録。

各国のSNSのトレンドは『#GreenJade』の文字で埋め尽くされた。

ハリウッドの超大作をも凌駕する美しい映像美。

そして何より、劇中で圧倒的な存在感を放ったのが、御玉役を演じたカナンと焔役を演じたインナであった。

「あのラストシーンのアクションは何だ!?」

「彼女達の演技に、世界中が熱狂した」

映画のクライマックス、焔の刃を紙一重でかわし、

流麗なステップから放たれたカナンの一撃。

それはスタントなし、CGなしの本物の武術が生み出す芸術だった。

世界中の映画批評家たちが「東洋から現れた奇跡のアクションミューズ」と大絶賛し、

サランとインナのアカウントには、ハリウッドのエージェントや有名ブランドからのオファーが分刻みで届き始めた。

その夜、ユン屋敷のリビング。

画面に映る「世界1位」の文字を見ながら、

サランはシウの腕にすっぽりと収まっていた。

「なんだか、大変なことになったね」

「そうだね。すごいね」

何よりメイキング映像での、

パク・ドユンが『怪鳥・ボイス』と『オットセイ・ターン』で『アメイジング!』とバズリまくっていた。

『埋もれた天才』が今や『世界の奇才』になっている。

笑うシウの胸に、サランはぎゅっと顔を埋めた。

「ワンちゃん。飼ってもいい?」

ドサクサ紛れのおねだりだ。

「いいよ」

足元でマシロとでんすけが呆れたようにあくびをする。

「やったー!!」

4月の穏やかな月明かりが満ちていた。


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・カナン...女優。カン・サランの芸名。ソン・インナに名付けられた。

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※ユン・ジュンソ...シウの父。総合映像制作会社S.S.Iの会長

※ユン・ヒョヌ...シウの異母兄。ソヒョン・チョヨンの恋人。S.S.Iの後継者

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※イ・ウジン...映画監督。『残酷な美しさ』『私にキスできますか?』

※パク・ドユン...映画監督。シウの親友。Juringエンタ常務。映像制作部部長。

※イ・ダイン...『私にキスできますか?』ヒロイン

※キム・ソヒョン...シウの元恋人『Love Hunt』プロデューサー。

※キム・ソンミン...キャサリン。薔薇組第二夫人。数千万ウォンの身体を誇る

※ハン・チョヨン...女優『私にキスできますか?』イ・ダイン役

※ハン・ジヨン...女流写真家。奇跡の1枚を撮る「アメイジングメーカー」

※ナ・ジウ...薔薇組音響アシスタント。通称小枝。


※虹の薔薇組...ドユンのハーレム軍団。精鋭撮影チーム。

※佐藤直樹...ユン・シウの祖父。伝説の投資家。

※佐藤志乃...ソン・インナの本名。

※天翔樹林...ソン・インナのシルフィード歌劇団時代の芸名。

※涼風小鳥...中村綾。サランの母親。

※中村綾...サランの母親

※トリニティG...韓国最大の財閥グループ

※S.S.I...総合映像制作会社

※Juringエンタ...芸能事務所兼資産管理会社。会長インナ。社長シウ。

※アトリエ・ノア...中堅芸能事務所。サランことカナンが所属していた。

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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