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「ぴーぴーぴー。べぇーだ。べぇー!」

あらすじ

シウにソヒョンの手記の全貌を明かすべきかサランが一人で悩む一方、シウは原作者として、自分の作品名(『私にキス出来ますか?』)が兄たちのスキャンダルに都合よく利用されていることに苦笑いしていました。シウは掛け持ちで忙しくなるサランの身を案じますが、サランは未だソヒョンのことで心を痛めており、再び「ぴぃ(結構落ち込んでいる)」「ぴぃぃぃぃ(怒っている)」と『嘆き丸』の声を連発します。「うちに帰るか?」というシウの問いに「ぴー!!!(もう嫌になっちゃった)」と本音を漏らすサランでしたが、シウから「最後まで頑張れ。夜、連絡する」と優しく励まされます。サランは照れ隠しに「べぇーっだ!」と悪態をつきながらも、遠くからシウに手を振り返して合宿所へと戻っていくのでした

その午後。

アトリエ・ノアの会議室にて『真緑の翡翠チーム』の初会合が持たれた。

俳優陣はアクション・スタント以外、アトリエ・ノアの俳優陣で取り組む予定である。

メインスポンサーがインナとシウなので自由に合理的に采配されていく、

S.S.Iのユン・ヒョヌもエグゼクティブプロデューサーとして、

出席したが、彼は今、女優との密会報道で気まずい立場だ。

ポジションは名目的であって、実質、脚本兼プロデューサーのユン・シウが

メインで取り仕切っている。

「みなさんお集まり頂いてありがとうございます。今日は初日ということで、

自己紹介と脚本の読み合わせいたしました。明日以降も順次スケジュールを

進めて参ります。御協力お及び御参加お願いしたいと思います。

それでは、本日はこれで解散とさせて頂きます。」

それぞれが席を立って帰宅の準備や雑談で賑わっている。

ユン・シウとソン・カナンは身支度しながら目で合図した。

「飯、食いに行く?」

ソン・カナンはもちろん異論がない。

ソン・インナはやや離れたところから、ユン・ヒョヌを捕まえて説教してくると、

身振りでサイン送ってきている。

シウも相槌で返答した。

「寿司とか、肉?」

「お寿司。」

『Love Hunt』のADが、撮影隊も同行すると言ってきた。

「ぴぃ」

『ぴー』の正式名称は、

『悲しく心が沈んだ時の為の嘆き丸』であり、

通称『ぴー』で、発音も『ぴー』である。

『悲しく心が沈んだ時の為の嘆き丸』はいくつか派生パターンがあり、

『ぴぃぃ!!』は怒っている。

『ぴぃぃー』は甘えてわがまま言っている。

『ぴぃ』は結構落ち込んでいるであった。

シウもしぶしぶ承諾する。

カナンは今、観察され撮影される仕事の最中だから、仕方ない。

カナンが袖を引っ張った。

「キム・ソヒョンさんね。可哀想なの。すごく元気無くて。」

カナンがソヒョンに同情したのは意外だが、

人情なのか、同性同士の共感なのか。

「傷付けたのは俺の兄貴だからな。申し訳ない事したね。」

カナンはソヒョンに

胸を打たれて、塩を送りたいというのか。

敵に塩を送るのは、傷口に塩を塗る事だと

間違っていた事にシウは気がついた。

逆であり、敵の窮地に手助けすることだ。

戦う以前にサランはソヒョンに勝っていたのだ。

だから相手の境遇に同情できる余裕がある。

シウはこの時知らなかったのだが、

サランは先日、ソヒョンとのAI戦において、彼女の心情を吐露した手記を入手した。

その中身は、

シウと交際していたがソン・インナには「仲の良い同級生」としか紹介されていなかった。

シウの事は大好きであったが、男女の関係はなく、彼は兵役に行き、

自分は彼の父親の会社に入社した。

一緒に食事し酒を飲んだ勢いで、シウの兄ヒョヌと関係を持ってしまった。

シウに戻れる可能性は殆どない。

全部を失うか、それとも職と次期社長夫人は死守するか。

そんな彼女の苦悩をサランは知ったばかりであったのだった。

「サランは優しいね」

シウはそう言うが、シウにも全部明らかにすべきか、

サランには判断が付かない。

シウが知ったところで、現状も変わらないだろうと思う。

「兄貴が悪いのだと思うけど、ソヒョンも落ち込んでいるだろうし、

ハン・チョヨンは今回の映画で箔が付いていたから、大変だね」

シウの言う通り、今後の活躍が期待されていたので、

以降の活動に影響あるはずである。

『私にキス出来ますか?』の原作者としては、

この騒動でニュースの表題に『私にキス出来ますか?密会』とか『ハン・チョヨン、私にキス出来ますか?火遊び』と都合よく利用される事には苦笑いである。

不快もなく実害もないが、何とも言いようが無い気分なのは確かだ。

ただ、完成してリリースした作品に関して言えばさほど未練は無い。

世間に揉まれ、良い作品として成長させてもらえたら嬉しいのはもちろんである。

「サランもこれから仕事を掛け持ちで忙しくなるから、

人の心配も良いけど、自分のケアにも気を付けないと」

言っても、サランは今、他人の事で心を痛めている最中のようだ。

「ぴぃ」

「どうした。お腹空いたのか?」

「ぴぃぃぃぃ!」

「帰りたく無いのか?」

「ぴー」

「もう、嫌になっちゃったか」

「ぴぃ」

「うちに帰るか?」

「ぴー!!!」

「でもだめだ。最後まで頑張れ」

「ぴぃぃ」

「夜、連絡する」

「ぴー」

「じゃあな。お疲れ様」

サランは数歩歩くと振り返り。

「べぇーっだ!!べぇー!!」

悪態付いてラブハントシャトーに帰っていった。

シウは笑って手を振り見送った。

悪態ついた割にはサランも遠くから手を振り返した。


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・カナン...女優。カン・サランの芸名。ソン・インナに名付けられた。

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※ユン・ジュンソ...シウの父。総合映像制作会社S.S.Iの会長

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※イ・ウジン...映画監督。『残酷な美しさ』『私にキスできますか?』

※パク・ドユン...映画監督。シウの親友。Juringエンタ常務。映像制作部部長。

※イ・ダイン...『私にキスできますか?』ヒロイン

※キム・ソヒョン...シウの元恋人『Love Hunt』プロデューサー。

※ハン・チョヨン...女優『私にキスできますか?』イ・ダイン役

※虹の薔薇組...ドユンのハーレム軍団。精鋭撮影チーム。

※佐藤直樹...ユン・シウの祖父。伝説の投資家。

※トリニティG...韓国最大の財閥グループ

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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