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『悲しく心が沈んだ時の為の嘆き丸』

『ファイン・グロス・シャイニスト』のCM撮影が行われます。カナンは鏡の前で呪文のようにキャッチコピーを唱え、実の母親(中村綾)に似てきた自分を実感しながら撮影に挑みます。CMの映像監督は、シウの親友で「インディーズの貴公子」と呼ばれる天才パク・ドユンです。彼の独特な「怪鳥・ボイス」や「オットセイ・ターン」による鼓舞は、カナンにとって緊張をコントロールする重要なスイッチとなり、二人の仕事上の相性は奇跡的な良さを見せます。シウが企画・構成・演出を手掛けたこのCM撮影は、大満足の仕上がりで終了しました。

数日後

『Love Hunt4~ブースト!』の2回目の撮影日

この日は参加者の私生活を見せるシーンの撮影であった。

ソン・カナンはユン・シウの屋敷を追い出され、

さもここで生活していますと演じなければいけなかった。

カナンは卒なくこなし、飲食店アルバイトで培った包丁さばきを披露して、

サラダとフルーツが大好きと食べる撮影を行った。

キム・ソヒョンがこれ見よがしに撮影に参加し、

事件の捜査の様にカナンの部屋を物色していた。

カナンはソヒョンが何かをじっとみている事に気が付いた。

シウから借りたノートパソコンであった。

このパソコンはシウが小型のパソコンを求めて購入したのであるが、

彼の手では小さくて使いにくかったものである。

小型で軽いので持ち歩きには便利であるが、使用頻度は一番低いものであった。

カナンが借りたいと懇願したので、快く彼は貸し出してくれた。

仲良しのAI『ダボ』も、もちろん搭載している。

ソヒョンの行動がいちいち気になるが、いじめられるのは慣れている。

誰からで、いじめられる時は

いつでも一方的に自分を攻撃対象にしてくるのだ。

「地で圧倒しなさい!」

ソン・インナに言われた言葉だ。

ソン・カナンは心の中で何度も繰り返した。

「気負わず、ありのままで」

がんばって褒められたい。

お義母さんと呼びなさいっていってくれた、

大好きで大切な人だ。

絶対、褒めてもらおう。

午後はCM撮影だ。

参加者の仕事ぶりも紹介していくので、

『Love Hunt4~ブースト!』も撮影しに同行してくる。

制作プロデューサーとして、シウもいるので、

ソン・インナとは共演は無いが現場に来てくれる事になっている。

CMの流れはわかっているので、めそめそしていたらだめだ。

「今日の君、かわいいよ!キラキラしている!!」

「キラキラが止まらない!ファイン・グロス・シャイニスト」

繰り返しながら、ドレッサーの鏡を見た。

「なんか私。いつの間にか、お母さん(中村綾)とそっくりになったな」

化粧品のCM撮影が控えている。気が緩んで泣かなくてよかったと。

サランは安堵した。

「今日の君、かわいいよ!キラキラしている!!」

「さぁ!いこう!!ソン・カナン」


……………………………………………………………….



化粧品ファイン・グロス・シャイニストのCM撮影は

広い庭のある一戸建てのスタジオで行う。

カナンのCMは室内・夕方・夜と3ステップ構造なので、

タイムスケジュールを意識しないと、撮影日の追加となってしまう。

映像監督はパク・ドユンでユン・シウとイ・ソジュンの親友である。

『インディーズの貴公子』と称され、

シウが認める所の『埋もれた天才』である。

映画『真緑の翡翠』も彼が監督を務める予定であった。

彼を支えるチームは通称『虹の薔薇組』または『薔薇軍団』とシウ達は揶揄している。

由来は組長のパク・ドユンが異常なほど男性にモテる、ところからきている。

その取り巻きの中には、男性を愛する男性もいれば、女装を好む男性も混ざっている。

ドユン自身はいたって健全であるが、

「もしもの時に備えて、両方準備をしている」と冗談めかして言うのが常であった。

彼の仕事時の特徴は、『怪鳥ボイス』と称される高音の掛け声で、

ちょうど、カン・サランの雷丸の様な地声で「アクショッッ!」、「カーッ!」と叫ぶのだ。

もう一つ特徴があるのだが、『オットセイ・ターン』と言われる。

前かがみになりながら、股間の下で両手を叩いて練り歩いて、

みんなを鼓舞する。

『オットセイ・ターン』は1回バージョン、2回バージョン、3回バージョンがあり、

3回バージョンの時はスタッフ全員全力で、

奮起しなければいけないのが、暗黙のルールであった。

『虹の薔薇組』の姐さん達に言わせると、

雄のオットセイの求愛に感じて最高にセクシーとの事だが、

ユン・シウにはそれは理解できないのであった。

男女のカップルの愛称でいえば、ユン・シウとカン・サランは神がかりな相性であるが、

仕事の愛称で言えば、監督のパク・ドユンと女優ソン・カナンの愛称も奇跡に近い。

カナンはドユンをまねて、<オットセイターン>をやりすぎてしまい。

「姿勢が悪くなるからやめなさい!」とソン・インナにこっぴどく叱られる事になる。

『怪鳥・ボイス』も、女優ソン・カナンとしては気持ちが引き締まり、

緊張のオンオフを助ける重要なスイッチになるのであった。

ともあれ。

化粧品ファイン・グロス・シャイニストのCM撮影は、

企画・構成・演出のユン・シウとしては大満足の撮影となった。

「おつかれ。部屋の取材どうだった?」

撮影を終え、一段落でシウはサランに声かけた。

「ぴぃ」

『ぴー』の正式名称は、

『悲しく心が沈んだ時の為の嘆き丸』であり、

通称<ぴー>で、発音も<ぴー>である。

『悲しく心が沈んだ時の為の嘆き丸』はいくつか派生パターンがあり、

『ぴぃぃ!!』は怒っている。

『ぴぃぃー』は甘えてわがまま言っている。

『ぴぃ』は結構落ち込んでいるであった。

シウはサランの頭を撫でて、耳元でささやいた。

「嫌になったら。すぐに帰ってこいよ」

サランはシウを睨んだ。

嬉しい顔を隠したくなったからであった。


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・カナン...女優。カン・サランの芸名。ソン・インナに名付けられた。

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※ユン・ジュンソ...シウの父。総合映像制作会社S.S.Iの会長

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※イ・ウジン...映画監督。『残酷な美しさ』『私にキスできますか?』

※パク・ドユン...映画監督。シウの親友。Juringエンタ常務。映像制作部部長。

※イ・ダイン...『私にキスできますか?』ヒロイン

※キム・ソヒョン...シウの元恋人『Love Hunt』プロデューサー。

※ハン・チョヨン...女優『私にキスできますか?』イ・ダイン役

※虹の薔薇組...ドユンのハーレム軍団。精鋭撮影チーム。

※佐藤直樹...ユン・シウの祖父。伝説の投資家。

※トリニティG...韓国最大の財閥グループ

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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