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『2階の左から2番目の部屋』

あらすじ

ニセコのホテルに滞在中のユン・シウは、母ソン・インナの映画企画『真緑の翡翠』を進める中で、突然別の新しい物語『冬の海、窓際のジウ』のプロットをひらめきます。冬の小樽の崖の上のホテルをロケ地に据えたこの儚い人間ドラマは、インナの目にも留まり、実父が率いるS.S.Iへの企画提出と、名監督イ・ウジンへのオファーが急ピッチで決定します。一方、作中ではシウの屋敷の「2階の左から2番目の部屋(サランが泊まる客間)」の詳細や、元恋人キム・ソヒョンがなぜその間取りを知っていたのかという執着の背景も明かされます。

 ユン屋敷の2階は階段を上ると、右の4部屋。左に4部屋ある。

その内、トイレもシャワールームも完備しているのは4部屋。

L①④とR②④

Lの①は広くソン・インナの部屋である。

L②もインナがクローゼットに使用している。

2階の左から2つ目の部屋は、トイレとシャワールームを完備した女性向けの客間である。

シウやインナの部屋よりは狭いが、庭を見下ろせるバルコニーも付いていて、

インナの女優仲間を泊めても恥ずかしくない、ドッレッサーも完備したホテルの様な部屋なのだ。

シウの部屋は左の④で、部屋を出るとリビングと1階のベランダが見下ろせる。

R③はシウの本棚や物置になっている。

シウの部屋は階段の振動が一番、わかりやすい為、ソン・インナが部屋に突入してくる際の、

タイムラグを多く得る事が出来て、防御態勢が取りやすい事と、

階段の音でインナの機嫌がわかりやい。

もっともそれらは少年の頃のシウの事情であって、成人した今では、

ずっとその部屋がシウの部屋だったから、そのまま使用しているに過ぎない。

キム・ソヒョンがユン屋敷2階のR②を知っているのは、遊びに行くたびにその部屋を覗いては、

なんとか自分専用の部屋にできないものかと画策したからであった。

結局のところ、いかなる試みも失敗し、ユン屋敷にて宿泊を許された事もない。

強引にリビングのソファーで寝て、朝を迎えてみたものの、ほどなく帰宅を促された事は数回あるのみであった。

シウの親友のパク・ドユンとイ・ソジュンが泊まる際はR④を使う事が多いが、

彼らはよく泥酔して、部屋を汚すので、ユン屋敷で家政婦を雇わなくなってからは、

リビングのソファーにて就寝することが多くなった。

宿泊というよりかは、機能を停止して朝を迎える表現の方が近い。

ユン・シウは現在ニセコのホテルで滞在していて、作業しながら、クスっと笑った。

泥酔したパク・ドユンとイ・ソジュンはここにはいない。

作業が捗る。邪魔な雑念が無い事を喜んだのだ。

映画『真緑の翡翠』の企画書とプロット作成していた所であったが、

不意に予想も無いタイミングで彼の中で異変がおき始めた。

内部の自分が急に分身を起こし、

片方の脳がまるでどこからか巨大なスーパーコンピュータにでもハッキングされたように、

とあるストーリーを展開させる。

そして徐々に肥大化して、先ほどまでメインであった自我を飲み込んで、

脳内のメインスクリーンを占拠した。

北国の真冬の病院とその病室。

荒れた冬の海と潮風に煽られた乱舞する雪。

病室のベッドから物憂げに外を眺める少女と、

彼女を憂い付き添うその母親。

会えるはずもない有名な女優が彼女を見舞いに来る。

題名は『冬の海、窓際のジウ』

サブタイトルは『君を忘れない』

キャッチコピーは『心の光は消えない』

ストーリーに物珍しさは無いが、冬の荒れた海と景色、救う事の出来ない命の灯と彼女を憂う、二人の女性。

そして、なによりロケの候補地が真っ先に飛び込んできたのだった。

小樽の郊外にある崖の上のホテルである。

ウィーンの城を彷彿とさせる気品ある白亜の外観は、訪れる者を一瞬にしてヨーロッパの古き良き時代へと誘う。

客室の窓を見れば、目の前に広がるのは圧倒的な青の世界。

すべての部屋に設えられた客室露天風呂からは、雄大な日本海が一望できる。

水平線に沈みゆく燃えるような夕日。夜が訪れれば、今度は満天の星々と、海を行き交う漁火が静かな夜を彩る。

波の音だけが響く静寂の岬。

冬季はたしか休業しているはずであるので、そのままロケで使用させてもらうオファーをする。

ユン・シウの感性が止まらなく加速していき、理性の方もGOサインをだしていた。

『真緑の翡翠』はアクション映画だ。

アクション映画は長い準備が必要である。俳優たちの身体作りが必要なのだ。

準備を進めつつ、撮影は来年に回した方がよい、それに冬の野外の撮影は厳しい。

近頃、枯れない泉を感じるこの作家は、あっさり初期資料とプロットをまとめ、

ソン・インナに送った。

あとはメインでお金出す人の判断に委ねるしかない。

日程的には先に『激辛スナック菓子』のタイアップCMの案件があるのだ。

ハロウィンの手前10月からリリースする予定で、15分程度のショートムービーも制作する。

CMが同じコンセプトで複数制作する予定で、CMソングのMVにも使用する。

8月末までに撮り終える予定であった。

カン・サランを『Love Hunt4』に出演させる話が出ていたので、

その前にCMは撮り終えなくてはいけない。

携帯にてソン・インナから、『冬の海、窓際のジウ』の企画書とプロットを

S.S.Iの会長ユン・ジュンソに送るよう連絡が来た。

ユン・ジュンソはシウの父親である。

諸々の相談の結果。『冬の海、窓際のジウ』は『私にキスできますか?』で監督を務めた、

イ・ウジンにオファーすることになった。彼の代表作、『美しき残酷さ』で知られるように、

徹底的なリアリズムと絵画の様に美しい映像美で知られる映画監督である。

映画『私にキスできますか?』でも小樽の映像美とヒロイン役のハン・チェヨンから、

『これまで見せた事のない、生々しく、剝き出しの感情』を引き出す演出をして、

見事な作品に仕上げた。作家のユン・シウとしても王道の『映像美』と『感情の演出』に主軸を置く、

彼の姿勢に尊敬と敬愛の念を持っている。ただ、監督と原作者ではキャリアも年齢も差があり過ぎるので、

パワーバランスが悪く、彼の独壇場になってしまうのは予想ができた。

一方の『真緑の翡翠』であるが、こちらも進めるとの事で決まった。撮影は秋と冬をやり過ごして、

春にまた再開する長い計画で、その間に協賛も募る方向で纏まったようである。


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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