『#愛しのカナン』
あらすじ
映画の打合せ後、大女優ソン・インナはカン・サランを連れ出し、SNSで爆発的なプロモーションを仕掛けます。これにより芸名「ソン・カナン」の名は一気に世間に拡散され、午前中に100以下だったフォロワー数は午後に2万人を突破。さらにシウの小説『私にキスできますか?』の海外上映記念フォトとして、カナンが小樽で撮影した写真も多数アップされます。この急激な動きに映像制作会社S.S.Iのオフィスは騒然となり、シウへの未練と嫉妬に燃えるプロデューサーのキム・ソヒョンもカナンを追跡。写真に写るカナンの「恋している目」に憤慨したソヒョンは、過去の自撮り写真の背景から、カナンがシウの屋敷に寝泊まりしている事実を突き止めます。
ソン・インナはカン・サランを伴って、部屋を後にした。
いろいろ見せてあげたいのだという。
ユン・シウはこの時はまだ気が付いていなかった。
彼はカン・サランと共に行動して、カン・サランしか見ていなかったが、
ソン・カナンは急に世間にその名を拡大していたのである。
先ほどのソン・インナが語った映画<真緑の翡翠~最期の戦い>のプロットは、
『竹取物語』と『旧約聖書』を主なモチーフにしてあるが、
かぐや姫は竹から3寸で生まれ、3カ月で成人する。
真緑の翡翠の『御玉』はソン・カナンであり、御玉はかぐや姫なのだ。
自分の母親ながら、巧妙で面白い作品に組まれている。
考えすぎであろうか?
ソン・カナンが今は、
とるに足らない小さな存在だけど、あっという間に魅力を放って大きくなる。
そんな暗示を作品に織り込んでいるように、思えたのである。
よく考えると自分はあの人の息子であった。
自分の才能を誇るとするならば、
その親はもっと才能豊かで偉大なのである。
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総合映像制作会社S.S.I。
会長ユン・ジュンソ率いる、独立系映像制作会社である。
地上波が鉄壁の時代は、弱小企業であったが、
大女優ソン・インナの出演作品群を主力とし、ネット配信時代を勝ち上がってきた。
エンターテイメント業界に存在感を与えている会社だ。
現在ソン・インナは、表舞台から遠ざかり、女優業引退の噂も、
業界では定説とされる状況であったが、
突如、この日を境に彼女は動きを見せた。
『#愛しのカナン』、『#私のカナン』、『#ソン・カナン』
これらのキーワードが、
一気に検索キーワードを駆け上がる。
「ソン・カナンっていったい誰?」
ソン・カナンのフォロアー数は、その日の午前中まで100以下であったのだが、
午後には2万を越えて上昇中である。
そしてソン・インナのフォロアー数は5年ぶりに上昇し始めた。
『#大好きな義母さん』、『#愛するソン・インナ』
ネットのニュースが大好きな人たちは、我先にと情報収集と調査に乗り出す。
SNSでは仲睦まじい二人のツーショット写真が、
次から次とアップされていく。
短尺動画配信では、奇妙なオリジナルのハミングに合わせて、
二人のコンビネーションパフォーマンスが、アップされている。
ミュージカル調とソーシャルダンス調のものもある。
今日の賑やかな動きも夕方手前には、ややペースダウンしてきたが、
ソン・カナンのSNSは『#小樽』、『#Can you kiss me?』、
『#ユン・シウ先生おめでとう』。これらのハッシュタグと共に、
小樽で撮影したと思われるソン・カナンの写真が多数、投稿された。
これは、ユン・シウの公式SNSアカウントより、
「劇場公開映画『私にキスできますか?』を応援して頂きありがとうございます。
海外五ヶ国にて上映が決定したしました。海外版『Can you kiss me?』を
今後も応援よろしくお願いします。」
感謝の気持ちを綴ったメッセージにリンクした投稿であった。
海外劇場公開記念。原作者公認『Can you kiss me?』
追加イメージフォトと表題に記載されていた。
総合映像制作会社S.S.Iのオフィスはざわついていた。
キム・ソヒョンはスタッフから急かされ、ブックマーク<ソン・カナン>をクリックした。
いつでもソン・カナンを追跡しようと、登録していたのである。
小娘は大物ソン・インナをバックアップに付け、得意気な顔をして写っている。
ソン・インナの居場所を知っているのは、息子のユン・シウしかいない。
やはり、ソン・カナンという女は、ユン・シウと関係があるのだ。気に入らない。
一日に何十枚も写真をアップするのは、素人のやる事だ。
田舎出身の新人タレントはよくこのような、節操のない事をする。
『#Can you kiss me?』とタグがついた、海辺での写真の数々。
こいつ。恋していやがるな。間違い無い。この目は恋してやがる。ムカつく。
キム・ソヒョンは目の前にもし、鏡があったのなら、
悪い悪魔が乗り移ったかのような、不細工な顔になっていると気が付いていない。
心が汚ければ、顔も汚いのである。そして、過去の投稿を見て、手が止まった。
ソン・カナンが部屋のベッドで寝転がっている自撮りの写真である。
「この部屋は。2階の左から2番目の部屋だ」
その部屋はユン・シウの屋敷の2階。左から2番目の部屋。
ソン・インナの部屋の向かいの部屋で撮影した写真であった。
今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、
もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。
こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。
※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。
参考データ
※ユン・シウ…小説家25歳
※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳
※ソン・インナ…女優、シウの母親
※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス
※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組
※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説
※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説




