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彼女が落ち込んだ理由

あらすじ

モデル料を前借りしてメンズ風のストリート系ファッションを一式揃えたカン・サランは、ユン・シウをせがんで夜の弘大ホンデの街へ繰り出します。サランの着こなしは見事な「美少年」そのもので、周囲の人気ボーイズグループのメンバーと見紛うほどのクオリティでした。しかし、街を歩き始めると、シウではなくサランを目当てにした女性2人組からのナンパが次々と殺到します。わずか1時間で5組もの女性からアプローチされ、路地裏へ逃げ込んだサランは完全に意気消沈。シウは彼女の魅力を褒めて慰めますが、サランは「女性に見えないほど胸がないからだ」と独自の理由で深く傷つき、シウの肩に頭を預けて落ち込んでしまいます。

 煌めくソウルの夜。

漢江ハンガンからの夜風が心地よい、若者で賑わう弘大ホンデのストリート。

二人は夜遊びに出かける事にした。

カッコいいメンズ風なコーディネイトを一式購入したカン・サランは、

調子に乗ったデザインの良いキャップも買ったので、

出かけたいと、ユン・シウにせがんだのだ。

厳密に言うと、2つの広告のモデル料がもらえる目途が付いたので、

ユン・シウに前借したのであった。

カン・サランは大きめのキャップを深めにかぶり、結んだ髪を後ろに出して、

どこかで見た、ボーイズグループの誰だかさんの、歩き方を真似して、

ユン・シウも一緒なので安心ではあったのだが、

実のところ、初めての夜の街に、多少なりとも怯えていたのは間違いない。

ユン・シウの隣を歩くカン・サランは、オーバーサイズの黒いジャケットに身を包んでいた。

シウは苦笑しながら、隣の「美少年」を見た。

どこかの人気ボーイズグループのメンバーにしか見えない、

完璧なストリート系イケメンが誕生してしまったのである。

その瞬間だった。「あの、すみません!」前方を歩いていた、

洗練された雰囲気の女性2人組が、

嬉しそうに声を弾ませて振り返った。

その視線は、シウではなく、完全にサランへと注がれている。

「そちらの帽子の方、すっごくタイプなんです。もしよかったら、この後4人でどこかで飲みませんか? カカオ交換してください!」

サランの表情がピキリと凍りついた。

「あ、あの、私は……」サランが声のトーンを下げてボーイズグループの真似をしようとする前に、シウが慣れた手つきで

「すみません、連れがいるので」と丁重にお断りを入れた。

しかし、これは悪夢の始まりに過ぎなかった。

弘大のメインストリートを歩くこと、わずか1時間。

まるで磁石に吸い寄せられるかのように、

次から次へと女性2人組がサランの前に立ちはだかる。

2組目:「お兄さん、モデルさんですか? 後ろ姿がカッコよすぎて追いかけちゃいました!」

3組目:「そのジャケットどこのですか? 似合いすぎです! 一緒に写真撮ってください!」

4組目:「ねえ、これからクラブ行くの? 私たちと一緒に行こうよ!」

そして極めつけは、お洒落なセレクトショップの前で声をかけてきた、

5組目の女性たちだった。

「ねえ、そっちの背の高いお兄さんもイケメンだけど、私は断然こっちの可愛い系が好み! 連絡先教えてくれたら、美味しいサムギョプサル奢っちゃう!」

絶望のサランと、天才作家の慰め5組目のナンパをどうにかかわし、

静かな路地裏のベンチに逃げ込んだ頃、

サランは完全に魂を抜かれた抜け殻のようになっていた。

キャップを深くかぶり直し、膝を抱えて丸くなっている。

「5組……。ソウルの女の子たち、どうなっているの?」

「サラン、みんな君が本当にカッコいい綺麗なお兄さんだと思って声をかけてきたんだよ。

それだけ君の着こなしが魅力的だってことじゃないか」

シウはしゃがみ込み、サランの顔を覗き込んで宥めた。

「違うの!」サランはがばっと顔を上げると、怒涛の勢いで喋り出した。

あまりの早口に舌がもつれた。

要約すると、胸が無いから女性にナンパされたのだと主張したのだった。

カン・サランは女性とわからないほど胸が無い事に傷ついたのだという。

誰一人も胸の事など言っていないのにも関わらず。

カン・サランは一人悲しんだ。

シウは近くの自販機で買った温かいお茶を差し出し、彼女の隣に腰掛けた。

サランはお茶を受け取ると、シウの肩にトントンと額を預けてきた。

少し、甘える気になったようだが、

この夜、カン・サランは落ち込んだままであった。


今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、

もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。

こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。


※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。


参考データ

※ユン・シウ…小説家25歳

※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳

※ソン・インナ…女優、シウの母親

※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス

※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組

※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説

※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説

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