イ・ソジュン
ユン・シウは、高校時代からの親友であり、自身が社長を務める『Juring エンタテインメント』の専務であるイ・ソジュンを自宅に呼び出します。普段はビジネスに冷淡なシウですが、今回はカン・サランを自社に移籍させ、実母のソン・インナが筆頭株主を務める日本の老舗化粧品メーカー「F.G.S(藤咲化粧品)」の広告モデルに起用するという目的がありました。屋敷にやってきたソジュンは、シウと冗談を交わしながら、サランの挨拶を丁寧に出迎えます。そして、シウからサランの身に起きた「のぞき穴事件」と「隣人との乱闘」の経緯について報告を受けます。
イ・ソジュンはユン・シウの家に呼ばれていた。
彼はシウの高校生の頃からの親友で、
今はシウが社長を務める『Juring エンターテイメント』の専務取締役兼営業部部長を務めている。
ソン・インナの個人事務所がベースになっており、
他所の会社よりは緩くやっているが、豊富な資金によって、
他所よりもなんとかなっている会社である。
イ・ソジュンは大学卒業後、大手広告代理店に勤めていたが、
ユン・シウの希望でこちらに来てもらった。
社長でありながら、元来の作家気質で毎日、
決まった会社に出社するのが苦手だからである。
シウにとってありがたい友人ではあるが、弱点があるとすると、
『恋愛は文化フォーラム』と豪語するほどの節操のない、
プレイボーイ気質な所である。
ユン・シウ達は、彼を『魅惑の幼顔』や
『マッコリのスプリンクラー』などと読んでいる。
『Juring エンターテイメント』の専務取締役兼営業部部長に就任後、
早速、社内の女性に手を出して、ソン・インナにこっ酷く叱責をうけた。
それ以降彼女からは「おい!犬」と呼ばれている。
顔は子犬のような童顔だからである。
それに対して声は恐ろしく重低音なのが特徴であった。
今日、こうしてユン屋敷に来たのは、
日本の化粧品メーカーF.G.Sのハンドクリーム、
モイスト・バイオ・シルクの広告モデルの話で呼ばれたからだ。
カン・サランに事務所移籍させて、
広告モデルの仕事をさせるつもりでいた。
藤咲化粧品は日本の老舗化粧品メーカーで、
物は良いが売るのは苦手な会社と言われている。
韓国にもかろうじて進出しているが、
引けた腰で商売しているので、広告の打ち方も弱い。
F.G.Sの筆頭株主はユン・シウの母であり、
韓国の大女優ソン・インナである。
相続で筆頭株主となっただけで、手放しでいる会社だ。
創業家がまだ社内にいて、追い出すか、屈服させるかの課題があり、
後回しにしていたのである。
シウの祖父である『伝説の投資家』が目をつけた会社なので、
何か潜在的な価値が眠っているのかもしれない。
それにしても何か地味な印象を受けるが、
眠れる獅子なのか、伝説の投資家も『サルも木から落ちた』のであろうか?
いつもなら、ユン・シウはこの手の話に興味がないのであるが、
今回は急ぎでソジュンを呼び出したのであった。
「ここの庭は相変わらずジャングルだな。南米のアマゾンをコンセプトにしているのかい?」
「大自然を愛しているものでね」
不精なだけである。
「足を踏み入れると、毒クモやコブラなどが襲ってくるかとドキドキすね」
イ・ソジュンはその幼顔に不似合いな超重低音の声で口をひらいた。
彼をよく知らない人ならば、どこから声が聞こえたのかと、
二度見三度見するくらいである。
「コブラなんぞ、いないですけどね」
ユン・シウは眉間に皺を寄せているが、いつもの親友同士の悪ふざけである。
リビングの大きなベランダは解放されて、涼しい風が入ってくる。
ハエが1匹入ってきた。だが一瞬でユン・シウの餌食となった。
彼は作家らしく神経質なのだ。
飛行している小型の虫を、素手で迎撃するのを喜びにしている。
「70億ウォンする迎撃ミサイルPAC-3を使うなら、
お前を雇った方が良いかも知れないな。」
シウは手を洗いにソファアを立った。
「蚊にPAC-3打つ国なんてどこにあんだよ。」
イ・ソジュンが面白そうに笑っている所に
カン・サランがお盆に麦茶を載せてやってきた。
イ・ソジュンは飲み物を差し出されて姿勢を正して座りなおした。
「あ。どうもありがとうございます」
緊張はしない男だが、かしこまった振りだけはしている。
いつもの重低音は更に低くなって聞き取りにくい。
手を洗い終えたシウも戻り、サランも座るように促した。
「あ。それで。出会いました。送りました。部屋に穴空いていました。
喧嘩しました。かい?」
「そうだ」
シウは頷いて腕組をした。
「お前が喧嘩するなんてね。初耳だよ。文学少年が」
「ラグビーみたいに狂って突進してきたんだよ。しょうがないだろう」
「それがこのざまかい。痛々しいね『顔面人間国宝』が台無しじゃないか」
「大した事ないよ。3日で治るさ、こんなもの」
シウはサランがどんな顔しているか見る事ができなかった。
気にして居るだろうと思ったからであった。
カン・サランが眉をひそめ、神妙な表情でその場にいた。
ユン・シウが続きを説明する。
「警察に連絡して、逮捕してもらって、警察行って調書と被害届だして、
部屋に帰らす訳に行かなくて、ここでお泊まりして頂いています。」
イ・ソジュンは腕組しながら唸った。
「こいつがスケベ心出して連れ込んだ訳ではないと?」
カン・サランは深く頷いた。
「でもね。サランちゃん安心しな。こいつ超が付くくらいの奥手だから、
奥手すぎて両手無いくらい。芋虫と同じ」
「誰が芋虫だ」
「でも相当なむっつりスケベだから!部屋入ったら必ず鍵かけておくといいよ。」
「わかりました」
シウは抗議する表情でサランを見ると、彼女は愉快そうに笑っていた。
「どっかに木刀あったよね?あっちの部屋だっけ?木刀。部屋にもって行くといいよ。」
「鍵かけたら、木刀いらないだろ」
「念のためにいるだろうよ」
「まったく」
シウが低い声で睨みつけると、
ソジュンは「おー、怖い怖い」と
わざとらしく身をすくめてお茶をすすった。
カン・サランは笑っているが、ユン・シウは面白くなさそうだった。
今後、記載する表現に関して、常識に基づいて気をつけて参りますが、
もしもを考慮して15歳未満閲覧非推奨を設定させて頂きます。
こちらに何か落ち度がございましたら、お知らせ願います。
※作中のメインキャラクターは日本語も韓国語も話せる設定となっておりますが、読む側を考慮して日本語表記にしております。キャラクター達は場面に応じて言語を使い分けているとご理解願います。
参考データ
※ユン・シウ…小説家25歳
※カン・サラン…女優志望のアルバイト20歳
※ソン・インナ…女優、シウの母親
※イ・ソジュン...シウの親友。Juringエンター専務。子犬の幼顔と低音ボイス
※『Love Hunt』…ネット配信の恋愛リアリティ番組
※『私にキス出来ますか?』…シウ作の小説
※『ずっと僕は君を』…シウ作の小説




