「私たちの食生活」③
「ここでまた、話を一旦、家庭科の教科書に戻します!」
授業で、フリートーキングを始めた途端に、収拾がつかなくなった教室を、一旦落ち着かせるためにみたま先生は宣言した.
「はーい!」
議論百出、好き勝手に持論を展開した、
日本の古い歳神様、
ギリシャ出身の小中学生、
家庭を守る、主婦(未婚だが)代表
ティタンの偉い法律家、
オリンポスの最高神、
都市国家の守護神、
日本の脳神経外科専門医
・・・・・・・・・・・・
皆が自分の言いたいことを一旦引っ込めた.
「食生活指針、続きに参りましょう・・・・」
2.1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを・・・・
(また、ドクトルあたりから、文句が出そうな、文言だ!)
みたまの不安は的中した.
「異議あり!」とドクトルが、声を上げた.
(あ、やっぱり!)みたま先生の顔がちょっと曇ったのをその場にいた皆が気がついた.
そして、皆が一斉に、露骨にドクトルのことを胡散臭いものを見る目で、見た.
「おめえ、一体何が問題だ、この項目、全く問題ねえだろうが.脳外科は朝ごはん食べる暇もねえくらいに忙しいってか!」ルシフェルがいう
「そうだそうだ、なんでもクレームは良くないと思います」キューピーが入った.
「いやいや、みなさん、ドクトルは何か考えとか思うところがあって、おっしゃるのだろうから、みんなで聴きませんか、ドクトルの話を・・」
海丸くんは、「親友」のドクトルを擁護するようにいった.全くこの子はどこまで、すごい子供なんだ・・・
「いえね、私、中学、高校、朝ご飯ちゃんと食べたことなかったんですよ.
夜更かしの朝寝坊、ギリギリに起きて、朝ごはんはこーちゃとりんごを一切れかふたれ、それだけ・・・・」
「ああ、それじゃダメだ、学校の授業、集中できなかったでしょ?」はるなが聞く.
「まあ、そうでしょうね.というか高校の時、授業ちゃんと聞いたことなかったからなあ・・・2時間目の終わりくらいにお腹すいて、弁当さっさと食べてしまいましたからね」
「朝抜き、早弁、言語道断!」またルシフェルに言われてしまった.
「で、ドクトルは何が、反対なの?」
「いえ、全く反対ではなくて、全くもってその通りと思う.だから、高校の時、もうちょっと早く起きて、ちゃんとご飯食べて、授業受けていれば私みたいな、変に曲がりくねりのある人生歩まなくてよかったかもっと反省してるのですよ.この指針、出すのが遅い、という意味の異議有りとでも申しましょうか・・・・」
「なんだ、そんなことか、みたま、ほっといて話先に続けてくれ!」ルシフェルが先を急ぐ.
「あ、はい、ドクトルそれでいいですか?朝ごはんは食べましょうということですよね.文句はない?」
「あ、いえ、私、年取ってから泊まりがけで学会出張行くようになって、ホテルで泊まりますよね、そして朝ごはんが、出る.早起きして勉強してから、ホテルの食堂に行く、そのビュッフェの朝ごはん、なんと美味しいこと!そして朝ごはんをお腹いっぱい、とは言いませんが、満足いくだけ食べて、それから参加する学会、午後まで集中できましたからね.45歳過ぎてから気がついた.遅かったと思った.私の人生、30年分返してくださいという感じですね」
「はい、ドクトル、それは自分が悪い!」アテナにも言われた.
「ねえ、みたまドクトルはほっといて、次いきな」
空気の読めないドクトルは、とうとう、朝ごはんビュッフェのことを具体的に語り出した.
「ホテルのビュッフェ、だいたいですね、和食も洋食も置いてあるのですよ、
ご飯はどこもだいたい美味しい、湯豆腐、納豆、お漬物は定番でしょうかね、
生卵が置いてあるところもあれば、温泉卵のホテルもある.具体的にどこがそうかというわけではないですけどね.
ひじきにレンコンにんじん、こんにゃく、さつま揚げが入った煮物、山菜、漬物、白菜、きゅうり、たくあん、
スクランブルエッグにソーセージ、ベーコンにポテトフライ、サラダを大盛りにとって、好みのドレッシング、2種類くらいかけてくる、
あ、ホテルのビュッフェで、目玉焼きって見たことありませんね、ハムエッグもないな、スクランブルエッグはだいたいどこでもあるし、和食の棚には必ずだし巻き卵がある.和食の料理人の腕前が試される、基本的だが重要な日本の料理、
おっと、ジュースをとってこよう、ここには何があるのかな、ホテルの朝食、なぜかリンゴジュースが置いてある、オレンジジュースに牛乳、あったかいコーヒー・・・・」
とめどもなく話す、ドクトルの目が怪しげに宙を泳ぐ.
「あああ、やめて、食べたくなる!お腹すいてくる!」アテナは耳を塞いだ.
「ドクトルが思いがけず、いいことを言ってくれました.バランスの良い朝食についてです.ここで、どさくさ紛れに3項目目、行っちゃいましょうか.」
3.主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを.
空気の読めないドクトルは、思いがけずに、ホテルのビュッフェで何を食べるかで、バランスの良い食事とはどんな感じかを、示したということか.
もちろんドクトルは医者のくせに、カロリー、脂質、タンパクの割合やら、野菜や漬物にどんな栄養が入っているのかは考えずに、量も考えないでとってくる.
「ここでバランスの良い食事、とは何かを考えてみましょうか」
みたま先生、別館の崩壊学級を見事にまとめ上げる手腕を発揮しつつある.
これはなかなか優秀な先生だわ.
「ドクトルは、栄養とか、考えて、ホテルのビュッフェ食べますか?」
みたま先生の質問である.
「え、全然・・・」ドクトルはいつもの、のほほん顔で答える.
ルシフェルと海丸、キューピーにアテナが「あちゃー!」
「いや、いや、ドクトルは実に自然に、食事を楽しむとはどういうことかということを実践しておられて、さらにそれを、実に写実的に表現されます.アテナさんのお腹空くのもわかります.私も食べたくなりましたよ、朝食ビュッフェ.私もなんか、行きたくなりましたから、今度是非連れてってください、学会に・・・」大年神先生も学会参加を希望された.
「大年神様、行きましょう、行きましょう.あ、そういえば、また11月だから認知症学会ですね.10月も脳外科の大きな学会あるのでしたっけ?」海丸くんがまた脱線のきっかけを作ろうとする
「あ、そうそう、今年の脳外科総会、札幌なんですよね、私はオンデマンドかな.認知症学会は、つくばだったかな?泊まるところどうしようか?」とドクトルは、宿泊の心配を始めている.
「はいはい、皆さん、これからは、学会とかビュッフェの話は終わり.栄養のバランスについて話をしまーす!」
みたまが、ぱんぱんと手を叩いてみなの目を覚まさせる.
「はいはい、お兄ちゃんもあんまりあちこち首を突っ込まない、年末近くはただでさえ忙しいのだから、ちゃんと本業に精出して!」
珍しく、大年神様が妹のみたまに説教された.




