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「私たちの食生活」①


「私たちの食生活」①


宇迦之御魂神は、「お稲荷さん」の神様.

須佐之男命の子である.大年神の、母が同じ妹に当たる.


「おう、おめえ、あそこんち、面白えから、一回遊びに行ってみな!」

と父の須佐男に勧められて、足を踏み込んでみた.


それからこの「別館」に入り浸り、いつの間にか一室を与えられて住み込むようになってしまった.


ここには、それほど厳しい締め付けではないのであるが、「掟」と言うか、

「暗黙の約束事」のような決まりがあるらしい.


それは、

働かざるもの、食うべからず

稼がざるもの、住むべからず

学ばざるもの語るべからず

・・・・・・

別に約束が張り紙で書かれているわけではない.

もちろん新興宗教の秘密結社とか、犯罪集団とか、そんな厳しい掟ではなくて、そこに住む人々が、自然と守る、「合意」のようなものかもしれない.


だからここに集う、人も神も、子供も大人も老人も、何かしらの、生業を持ち、

家事を分担して、そして、時間を見つけては図書室で、本を読み、物知りに教えをこい、そして誰かしらと議論をする、ということが自然に行われている.


働けなくなった、病人や怪我人はどうなる?

福祉はどうなんだ?

赤ん坊とか年寄りは?


もちろんそれぞれの居場所はあるし、それなりの役割もある.

しかし、福祉や援助は永遠に与えられる物でないことは、当の病院、怪我人、子供に老人は自分がよくわかっている.だから持ち場を弁えて、できうる仕事をこなすと言うことだろう.自立した社会とはこう言うことなのかもしれない.


「俺たちは、永遠に頑張れるぜ!」

神様たちはそういうが、

「あの、念のために申し上げておきますけど、人には、老いがあるし、やがて死が訪れるのですよ、そこんとこは忘れないでくださいね・・・」

ドクトルがぽそりというと、神々は、皆黙る.

そして、病人、怪我人、その他の援助が必要な人たちに対して、神々は、決して加護を与えないし、神々自信にそのような発想なないらしい.


老いとか、病だけではなくて、

大雨、洪水、地震に、土砂崩れ、竜巻被害、山火事、火山噴火・・・・

実際に神々が何か人に対してしてくれたか、残念ながらなさそうだ.


限られた命に対する認識は人と神々はお互いに理解し合えると言うことはおそらく永遠にないのだろう.

しかし、神々に知恵を借りて、人が自分で考え出して、なんとか「運命」を切り開くことなら、あるいは・・・・


ちょっと脱線してしまった.


何より、皆、ここにいるのが楽しいから、その環境に適応するように暮らし、この空気と栄養を思い思いに吸い込んで、吸収して自分自身の一部にかえる、とでもいう感じだろうか?


父の須佐男は製鉄業が本来の仕事だし、それにより、鉄錆で赤く汚れた川をきれいにする仕事、つまり金属加工に伴う、環境汚染問題

さらに、河川の氾濫、暴れ川の治水の仕事、

たたら製鉄で、大量の木炭が必要になり、それによる木材の伐採による、

森林の減少については、息子の五十猛に任せて、国土の緑化にも努めている.

妖怪魔物怪物の関与した、誘拐暴行事件に対しては、真っ先に十握剣を持ち出して、知略の限りを尽くして、事件を解決する.

この頃は、女子大の文学部で、「和歌」の講義をしているらしい.


ドクトルは、言わずと知れた、病院の常勤の脳神経外科医であるし、60歳を過ぎた今も当直をしているし、救急車で搬送された患者の診療も行っている.まあ、院長先生とか、大学教授とか、えらい先生ではないが、医者の仕事をちゃんとして給料はもらっている.


静香も半導体工場で働きながら、さらに、知識を深めるために、今は受験勉強の最中だし、


愛染の母ちゃん、つまり、ギリシャの有名な美の神である、アフロディーテは、結婚相談所を自ら立ち上げて、業績を上げているし、


アテナに四天王、彼らも、オリンポス工業という世界有数の大企業の、主要な社員でありかつ、街の治安の維持のために日夜、街を駆け回っているのだから.


子供たちも、

海丸くんも、キューピーも、アンテロスも、愛ちゃん.健ちゃんの兄弟も、兄の娘、つまり、姪のははきちゃんも、毎日、掃除、台所のお皿洗い、買い物、洗濯など、家事のお手伝いである.それを児童虐待となどと間違っても言ってはならない.子供も重要な労働力であり、それが教育の一環にもなるのだから.無視したり、体罰を加えてはもちろんよくないが.


デメテル、ペルセポネの親子、ヘスティアおばさん・・・・

皆、それぞれに自分の仕事をこなして、毎日忙しくしているのだ.


ギリシャの最高神である、ゼウス=ルシフェルだけは一体普段何をしているのかは不明だが.


とにかく、それぞれが、自分の役割を果たし、足りないところは、皆で補い、問題が発生したときには、知恵を出し合って解決法いわゆる「最適解」を導き出す、そう言うところなのだろう.


「宇迦之御魂神」も別館に住まう以上、仕事をせねばならない.

中学・高校の家庭科の先生、という設定である.

「みたま先生」というのは、お稲荷様が、人間の世界に降臨した、仮の姿、のはずであったが、彼女自身、この仕事にのめり込みつつある、らしい.


家庭科の授業、生徒たちに話す前に、ちょっと話聞いてみてよ、と、海丸くんに持ちかけたところ、300人規模の大講堂で、話をすることになってしまった.


しかし、教えることについて、一皮剥けたというか、その面白さに気がついた、というか、人に話して「教える」ことが一番自分の勉強になることに気がついた、ということらしい.


とにかく、この頃は、みたま先生は、授業の前にはどんな話をするかということを「別館」の住人たちに、話して、皆の意見を聞くことにしている.


今回の授業のテーマ

「私たちの食生活について」


「最初に、教科書に沿って話をしようと思うのですが、隅っこに、役所が出した、

食生活指針というのが書いてあったので、これを元に、授業を進めようと思います.」


厚生労働省

農林水産省

文部科学省


が合同で、出している.順に書き出してみましょう.10項目あります.


食事指針(2016年)


1.食事を楽しみましょう.

2.1日の食事のリズムから、健やかな生 活リズムを.

3.適度な運動とバランスのよい食事で、 適正体重の維持を.

4.主食、主菜、副菜を基本に、食事のバ ランスを.

5.ごはんなどの穀類をしっかりと.

6.野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚 なども組み合わせて.

7.食塩は控えめに、脂肪は質と量を考え て.

8.日本の食文化や地域の産物を活かし、 郷土の味の継承を。

9.食料資源を大切に、無駄や廃棄の少な い食生活を.

10.「食」に関する理解を深め、食生活を 見直してみましょう.


「各項目、1から順番に私の意見を述べた後、皆の意見を聞かせて欲しいのだけど・・・」とみたまは授業の予行を始めたのだが、


「最初から、引っかかるんだよね、まあ、無責任な官僚文章、といったところでしょうか・・・・」

みたま先生はやれやれという顔で続ける.


「まず、最初1.食事を楽しみましょう.世界には、食事を楽しむ余裕のない人、もっとぶちゃけた話、食事が満足に食べられなくて餓死する人は何人いるかと思いますか?」


これは、インターネットで調べるとすぐにわかる.


「なんと、一年間に900万人!

あそれを、国別に見ていきましょうか・・・」


1. 飢餓による年間死者数(国別推計)


「純粋な飢餓(Starvation)」を直接の死因として算出しているWorld Population Reviewによる2026年時点の国別年間死者数データです。人口規模の大きい国や、インフラ・貧困問題を抱える国が上位を占めています。


順位国名年間餓死者数(推計)

1位インド32,305人

2位ナイジェリア31,269人

3位インドネシア17,700人

4位中国13,325人

5位ニジェール8,536人

6位エチオピア6,814人


「食事を楽しみましょう、なんて政府が国民を飢えさせておいて、

こんなこと言おうものなら・・・・・・

食事を楽しめというなら、飯をくれ!

ということで、暴動の原因になりますね・・・・」

海丸くんは面白いことを言う.



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