↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
390/397

月の満ち欠け

「兄上様、お初にお目にかかりまする.私が、建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)でございまする.」と初対面の挨拶をしてから、


「ははは・・・・」と長らく兄の御前にて、須佐之男命は平伏していた.


かの、世界の神話を見渡しても、屈指の荒ぶる神のひと柱である、須佐之男命がである.

最高神である、天照大神の統治する、あの高天原においてさえ、好き勝手放題をやってのけた、あの須佐男がである.


「うむ・・・」

月読命は多くを語らない方である.何せ別館に来たとき自分の名前すら言わなかった方である.


普通なら、兄と弟の初対面、なんらかの感動があるのは歴史の語るところではあるのだが.


例えば、

頼朝と、義経の黄瀬川の陣屋での対面ほどの感動はなかったかもしれない.


三貴子(ミハシラノウズノミコ)

そもそもよくわからない三姉兄弟である.

姉は、昼の世界と太陽を、

兄は、夜の世界と月と星、

そして弟は、海を、


それぞれ、支配するように父である、イザナギのオオカミに命じられていた.

3人が子供の頃に遊んだとか喧嘩したという記録がない.それはギリシャの神々も同じだと言われて仕舞えば、それまでだが.

天照と、須佐男の逸話は色々あって有名である.

しかし、月読命が絡んだ神話、

唯一のっこっている話が、天照と、月読、食保神、斬殺事件だけのだった.

そしてその後、起こった、天照大神が、月読命に向かって、今後2度と顔を合わせない、と宣告した、という話だけである.


そしてなんと、月読と須佐男、二人の兄弟の神が、会話を交わした、とか、喧嘩をしたとか、他の第三者を介して、何かあった・・・・

一切ないのである.


「汝(いまし)弟の命、その方が、姉のアマテラスを向いておる時、私は、背後から汝のことをずっと見ておった.姉上に対して汝は決して背を向けることがなかったので、私には一度も会ったことがない気がしただけ、なのだがな・・・」


「え、兄者は私の、背中をずっと見ておられた?」

「その通り.よって汝と相対してその面を見るのはこれが最初かも知れぬの.

ほ、ほ、ほ・・・・」


硬い氷の表情だった、月読命の顔が優しくほころんだ.


「そして、須佐男よ、汝も気がついておろうが、我ら、三姉兄弟、別々にそれぞれの持ち場を収めて居れば、良いというわけにはいかぬ状況にあいなった.これからは割れた手を携えてことに当たらねばならん.良いかの・・・・」


「ははは・・・」また須佐男が平伏した.


「そこでじゃ、ゼウス殿、私が、姉である、天照大神の命を受けて、こちらに降臨した理由については既にお聞き及びであろう.」


「はあ、なんとなく、レトや、息子のヘルメス、アポロ、アルテミスらから情報は得ているのですが・・・・」


「よろしい.しかし、時間はあまりない.これからは、我ら、知恵と力を持ち寄って行かねばならぬ.御助力いただけますでしょうかな」


「へえ、もちろんでございます」


「よろしい.私も、力を尽くす故に・・・・・」


その日から、月と夜空と星々の動きを、読み解く、「月読命」による、天体観測の講義が行われることとなった.


場所はもちろん、「別館大講堂」

例によって、子供たちが最前列に座り、一般の聴衆も多数集まった.


講義の内容

1.月の満ち欠け

2.太陽系の仲間たち.ー恒星、惑星、衛星について

3.惑星の運動.公転と自転

4.予測不可能な、小惑星の運動

5.遠い、銀河の星々

6.ブラックホール

7.ビックバン!

8.宇宙からのメッセージ


「汝(いまし)、そこなワラシどもよ.」

呼びかけられた、子供達、キョトンとしている.


「あの、先生、いまし、ってなんですか?」健ちゃんが質問した.

「おお、そこなワラシ、そなたは健ちゃんだったな.いましとは、漢字で書くと、汝、つまり、なんじらということじゃ.親愛の情を込めていう、君たちとかおめえら、という呼びかけじゃ.


ほれ、なんじとなんじは、何時に寝るの、とかいう、ドリフのギャグがあったであろう」


子供達は、口をへの字に結んで皆で一斉に首を横に振った.


ドクトルとルシフェルだけはうんうんと頷いている.


「おお、そうじゃ、あまり悠長なことはしておれん・・・・


今日演目は、月の満ち欠け、つまり、太陽の光に照らされた、月が、地上からは、どのように見えるか、つまり、1ヶ月周期で見られる、月の満ち欠けについてじゃ」


要点は以下の通り.

1.月は、29.5日周期で、地球の周りを一周する.

2.月は、ずっと同じ面を地球の方に向けている.

3.月は自分では光らない.つまり月の光は太陽の光を反射している.

4.地球は、北極の方から見ると、反時計回りに、自転している.だから、北半球では、月も太陽も、東から登って、南を回って、西に沈む.

5.太陽の光が当たらない部分は影になる.光があた流部分だけが、光っているように見える.


月の地球に向いた面が、ちょうど全部影になった時が、0日、新月で月は見えない.だんだんと月の位置が左回りに移動することで、月の右側から、太陽の光を受けて見えるようになる.3日では、右側が「三日月」状

8日目頃は、右側の半月(上弦の月)

そして、15日目頃は、月が真っ正面から太陽の光を反射して、満月になる.そして、今度は右側から影になっていき、左側半月(これは下弦の月という)、そして、左側、三日月の形だが、当然、三日月とは言わない.特別な呼びからのない月から、また、新月に戻る.


上に書いた、原則を紙に書いてみると、理解しやすかろう.


ここですかさず、静香と海丸君が気を利かせて、小学校の参考書をもとに作ってきたスライドを、正面のスクリーンに写した.


皆は「おおお!」と声を上げる.

月読先生がお話しされた、通りのことである.

皆の理解が深まった.


しかし、ここで一番驚いたのは、月読先生ご自身である.


「おおお!なんとその方ら、幻術を使えるか・・・・」


古い神は、幻燈とか、テレビとか、知らないようであった






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。