アンテロス補習を受ける
アンテロスの苦手が、算数、特に九九、だったとは、別館の大人たちには盲点だった.
海丸くんがいち早く気がついてくれてよかった!
海丸くんから補習の許可申請を受けた、菊理媛は、アンテロスの養母ということになっている.
「へえ、そうなのかい?あの子頭良すぎて、ちょっと考え方が特殊かなと感じるところもなきにしもあらずかと思ったら・・・」菊理媛、アンテロスの教育について、ちょっと注意を払うようになった.
「大体、アレスもアフロディーテも、子供の才能を伸ばすことに関しては、いい親なんだけど、自由にさせすぎるところが良くないのかもね.勉強の最初に越えないとダメな、山、みたいなちょっとした努力がいるところを乗り越えないとダメみたいな・・・」
「確かに・・」と
はるなも、静香もドクトルも、ルシフェルも同意である.
夕ご飯の前、海丸先生による、アンテロスの補習が行われた.
今日のテーマは九九である.
父も母もギリシャ生まれのギリシャ育ちのアンテロス、彼自身は、日本で生まれて、日本在住が長いから、言葉の障害はほとんどないのかと思いきや、家族といる時はギリシャ語を話すもので、九九のような微妙な日本語のニュアンスがまだ掴みきれていないということだったのだろうか?
「じゃ、アンテロス、いいかい.九九を、2の段から順に言ってくよ.」
ににんがし、二、三が6、にしが八・・・・
海丸くんに続いて、算数の本を見ながら、アンテロスが九九を唱える.
お友達のアンテロスくんが、地中海の怪物、リバイアサンの補習だと聞いた、ははきちゃん、気が気でない.
箒を持って、今日は、白と赤の巫女さんのかっこではなくて、白の鉢巻に、白黒の応援団の袴を着て、縄の帯をして、高下駄を履いて、アンテロスの応援である.
愛ちゃんと、健ちゃんを応援団員として従わせている.
「ににんがし、二、三が6、にしが八・・・・29、18!」
アンテロスが、ニノ段を唱えている時、応援団の皆は、何も言わない、
愛ちゃんと、健ちゃんは、フレーフレーと黙って腕を振って、ははきちゃんは、何も言わないで、箒を振るだけである.
アンテロスが、唱え終わると同時に、
「わわああああ!」どこから持ってきたか、金やら太鼓やら笛を鳴らして、声の限りに声援が始まる.
「ぴ、ぴ、ぴ・・・ぴ、ぴ、ぴ、・・・ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ、ぴ・・・・・・」
三三七拍子の応援が始まる.
ひとしきり声援を受けて、海丸くんが、応援団に向けて、指を一本立てて、「シーーー」という合図を送る.
応援団は、静粛になる.
次は、3の段、4の段・・・・
あっという間に、九九はマスターしてしまった.
知識を確実なものとするため、静香とはるなの手作りのプリント、ククの問題が、100問並んでいる.
「アンテロス、いい?これを、1分でときな、よーい、ドン!」
と静香がストップウォッチを押す.はい、終了!初めのうち、アンテロスは50問やっとできたところで時間切れになった.
しかし、プリントを何回も、何十回もやるうちに、1分で100問全部答えが書けるようになった.そして初めのうちはそれこそ、間違いが、10個、とか7個とかあったのが、間違いもなくなってきた.
海丸くんの補習は、1週間続き、いよいよ、終了試験の時.
「じゃいいかい、アンテロス、よーい、ドン!」
終了試験は、200問である.間違いは許されない.
制限時間は1分間.かなり、時間的には厳しいようだが・・・
時間内に書き終えたが、ああ、3問間違いだ!
「よし、もういっちょう!」
次は、1分で全問終わらない、2問残したところで時間切れ!
「ああ!もういっちょう!」
お友達の、ははきちゃんと、健ちゃん、愛ちゃんは、心の中で声援を送る.
ルシフェルは、ドクトルと並んで試験の監督.
くくりのお母さんは、最初からずっと、ハンカチを噛み締めて、アンテロスを見守っている.
そのうち、愛染の母ちゃん、お父さんのアレス、お兄ちゃんのキューピー、みたま、に須佐之男の爺さん、健ちゃんと愛ちゃんのママ、大年神様、事代主に、建御名方、おばば様、ルシフェルにデメテルの母さん、ヘスティアおばさん、アルテミスに、アテナに四天王までやってきて、心の声でアンテロスに声援を送る.
「よーし、今度こそ!」
「じゃいいかい、アンテロス、よーい、ドン!」はるながストップウォッチを押す.
55秒で、200問全部答えることができた.
果たして正解は・・・・・
ドクトルが採点した.
海丸くんと静香が確認する.
「アンテロスおめでとう、全問正解だ!」海丸くんがいう.
「君は、もう、苦手を克服したと言っていい.自信を持っていいと思う.日本のお友達と同じで、九九はマスターだ!」
「やった!」
ははきちゃんは、力の限り箒をふるい、笛や太鼓の三三七拍子はしばらく鳴り止まなかったということである.




