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大歳御祖神社、日待祭

阿波岐原で禊を済ませて急ぎ戻ってきた、ははきちゃんたち.


お祭りの前日に間に合った.

朝から、「おばあちゃま」の神殿の掃除やら、ぼんぼり、行燈やら.お菓子、お餅の準備を皆で手分けして行う.


お掃除は、もちろん、ははきちゃんが、中心となって、皆に指示を出して、隅々まで、掃き清めて、床やら手すり、欄干に至るまで、綺麗に掃除をする.


天井の煤払いは・・・


「ははき、それは私たちがやっといたよ!」

奥津彦と奥津姫、双子のお兄ちゃんとお姉ちゃんは、おばあちゃまのやしろの近くに、神社がある.


大年神様の子供で、竈の神と言われる.

顔にちょっと煤がついているのは彼らのトレードマークである.


赤い矢を持って、スーと飛ぶように、あるいは猿のように現れて、神社の前を箒で掃き清めて行ったのは、

大山咋神.いつもは比叡山のあたりに住んでいる.


「あ、にいちゃんきてくれたんだ!」ははきちゃんはこのお兄ちゃんが大好きなのだ.

「あったりめえだろ!おばあちゃまの大事なお祭りだからな!」


ひときわ、美しい、花の妖精のような女神さまがいる.

「あ、おおおばさま、きてくれたのね.」


「あら、ははきちゃん、大きくなったこと・・・」

優しそうににっこりしたのは、木花咲耶姫、おばあちゃまの妹に当たる神様である.

この神様の神社は、おばあちゃまの神殿のすぐ近くにある.


天孫、邇邇芸命が高天原から降りて来るなり、一目惚れして、なんとか大山祇神の爺さんに、頼み込んで、嫁にもらったという.

神話的にも、日本創生の歴史的にも評判の美人である.


「おおそうかい、あんたもなかなかお目が高いというか、女を見る目はしっかりしているようだ、このお、すけべやろう!でもな、あんた、よく聞きなさい、この子は美しいが、結構、体が弱い.花の命は短いとかいうだろ.おまけと言ったらなんだが、姉の、イワナガヒメも一緒にもらってくれ.ゴツゴツしてて、色気はないが、岩だから頑丈だ、何百年、そのままだ.そしたら、あんたも家族も皆、元気100倍、永遠に長生きじゃ、どうじゃ?」


「あ、いや、その、お姉さんはいりません・・・」

ということで、花のように美しく、儚げな、妹だけ嫁にもらったというのも、古事記にも書かれた有名な話である.邇邇芸命の子孫は、限りのある命を生きる運命になったそうである.


親類家族が久しぶりに大集合である.


みたまも忙しそうにしている.

「ほら、お父さん、そんなとこで、突っ立ってないで、あの高いとこにある、しめ縄、歪んでるから直して・・・」須佐男は、娘の指示に従って、しめ縄を直す.


「あ、おじいちゃん、そんなとこで昼間っからお酒飲んでないで、ちょっと邪魔にならないところにいて・・」

「ほお、なんじゃ、おめえは、須佐男とこに嫁にやった娘か?邇邇芸んとこだっけ・・」大山祇神は、もはや娘も孫もわからないらしい.

「何言ってんのおじいちゃん、私はみたまでしょ、ボケちゃったの?酔っ払ってるの?」


「あ、お兄ちゃんも、ちょっと邪魔だから・・・」と、お餅を乗せたお盆を持ったまま、大年神様をそのけつでぐいと脇に押しのける.

「あ、クイちゃんチョロチョロしないで、もお、お猿さんみたいなんだから・・・」(大山咋神のことを皆はこう呼ぶ.神出鬼没の神猿まさるは彼の神獣である)


お祭りの準備でてんてこまいの上に、手のかかる男衆の相手で大変である.


愛ちゃんやはるなに静香、デメテル、ヘスティアおばさんも食事の支度やら、いろいろお手伝いをする.

ヘスティアおばさんが、奥津彦、奥津姫に、竈門と、その火の上手な使い方を教えている.

どうかするとやんちゃな、双子の神様は、ギリシャの竈門の神様のいうことは、お利口に聞いている.


「かまどの火はね、大事に使わないとダメだよ・・・」

「はい・・・・」

「火事を起こしたりしたら、大変.特に日本の家屋は、木と紙がたくさん使われてるだろ・・・」

「はい、気をつけます・・・・」


お米は、大年神様、みたま、おばあちゃまの神様、皆、農業とか商業の神様だから、調達はお手の物だし、デメテルの田んぼでできたお米も大量に運ばれてきた.


大量のお米を、炊いて、おにぎりにしたり、お寿司にしたり、餅米はついてお餅にしたり.


お祭りに参加する人の分は十分にある.家々に配る分もありそうだ.


山川海の食材も、おばあちゃまが日々守っている、安倍の市やら、ポセイドンは海のもの、ヘルメスが、食肉(アポロンから盗んだ牛は入っていないらしい)アルテミスが用意したジビエの食材も豊富である.


みたまと、別館のお母さん、お姉さんが料理の腕を振るう.

曾祖父さん、つまり大山祇神、はスクナヒコナと並んで、日本における酒造会社のはしりだからお酒もふんだんにある.


社務所の前の広場には、櫓が既に前の日に組み立て済みである.

夜店の準備も活気ついてきた.


そして、祭りの当日.日が暮れる頃からそれは行われる.


行燈に光が灯る.

近所の小学生が描いた絵が、幻想的に浮かび上がる.


「うまい飯がある、酒もうまい!」ひいじい様はご機嫌である.

「舅殿、もち、あんまり食べないようにな.詰まらせると大変だからな.

そんで、あんまり飲みすぎないでくださいよ、俺が飲む分が少なくなってしまいまさあ、ガハハハ・・」須佐男もすでに酔っ払っている.


「私もちょっくら・・・」おや、菊理媛の姐さんまで.


あ、盆踊り?輪踊りというのだろうか.


楽しそうな太鼓や笛に誘われて、神殿の奥でおとなしく座っていた、おばあちゃま、

ムズムズ我慢できなくなって、祭礼の御神体の衣装を脱ぎ捨て、浴衣姿になり、

神殿をこっそり抜け出して、踊りの輪の中に混ざっている.


「あれ、御神体、いなくないですか?誰かが持ち出したか?」

ドクトルが発見して、大年神に報告だ.


「おやほんと、これはたいへん、御神体が盗まれたか?」大年神様、大変だと言いながら、いつもの通りにニコニコしているだけ.


持ち場を離れた、おばあちゃまを、みたまとははきがめざとく見つけて、本殿に連れ戻すのかと思いきや、おばあちゃんの後に続いて、一緒に踊る.


大切な、御神体、「お母上、かしこに鎮座ましませ」と、連れ戻しにきた、大年神様、いつの間にやら、一緒にみんなと踊っていた.


餅まきもあるらしい.

ドクトルは虫取り網を持参してきた.

「うしし、飛んできた餅は全部、私がいただき・・・・」

しかし、まかれた餅を、彼は一つも捕まえることは、できなかった.


踊り疲れて、ちょっと休憩.

今度は、出店だ!


鮎の塩焼き

焼き鳥

ポップコーン

フランクフルト

かき氷


財布やTシャツを売る店.

店の人と話しているのは、お客ではなく、知り合いのようだ


・・・・・・・・・

愛ちゃんとけんちゃんと、海丸くん、鮎の串焼に豪快にかぶりついている


おやおや、アンテロスと、ははきちゃんが仲良く、焼き鳥を食べている.


鳥居をくぐり、拝殿に向かう石畳の両脇には、

小学生たちの描いた絵を貼った行燈.


展覧会の絵を見るように、ゆっくり歩みを進めて、

じっくり見て、写真を撮っているのは親御さんだろうか.

富士山の絵が多い、かな・・・・


午後8時前から神社の参道に、 燈籠神輿が出る.

八角形の「美影燈籠神輿みかげどうろうみこし

八面のそれぞれの絵が、幻想的に浮かび上がる.


「よいさ、よいさ・・・・・」

ゆっくりと、本殿に向かう.


みたまとははきちゃんが、急いでおばあちゃんを呼びにいく.

「御神輿が来ますよ」

「おや、もうそんな時間かね、じゃ、ちょっと私は失礼して・・・」


おばあちゃまはいなくなったが、中心の櫓の上、着物をはだけて、

「それ、ほらよ、ドドンガドン・・・」

太鼓を叩くのは、

なんと須佐之男命その人だった.


「おや、まあ、じいさん!」


孫の奥津彦に奥津姫、大山咋神が、笛や太鼓で盛り上げる.


本殿に戻った、おばあちゃまは、浴衣のおばちゃんから、神様の格好に戻って、

神輿を出迎える.


「よいさ、よいさ・・・・・・」


メガホンで、神輿の先導の責任者が、

「本日はご苦労様でした、今日はこれで終了です」


御神体のあいさつはない.

しかし、本殿のおばあちゃまは、満足そうに微笑まれている.


「市の繁栄、そして、皆がひもじくならないように.

それが私たちの務めです.

あなたたちも忘れないように・・・・」


みたまと、大年神、母の教えを心に刻んだ.


神大市比売命

大年神

宇迦之御魂神


この母子の神々の象徴である、

黄金色の稲穂は、たわわに実り、

今まさに、刈り取りの時を待っている.


秋の始まりの、祭りの風景である.











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