大歳御祖神(おおとしみおやのかみ)
『古事記』にのみ登場する神.須佐之男命の系図に登場する.
大山津見神の子で、櫛名田比売の次に須佐之男命の妻となり、大年神と宇迦之御魂神(稲荷神)を産んだ.
神大市比売と呼ばれる.
市場の神らしい.
9月5日と、6日は、その「日待祭」である.
ははきちゃんが、いつになくソワソワしている.
朝から、アンテロスに海丸くんを従えて、天津祝詞を一心に唱えている.
もう何時間も、神殿(というのは別館の図書室のことである)に篭りきりである.
高天原に神留坐
神魯岐 神魯美の命以て
皇御祖神伊弉諾大神
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に
御禊祓給時に生座せる 祓戸の大神等たち
諸々の枉事罪穢を 祓給へ浄賜たまへと申まをす事ことの由を
天津神 國津神 八百萬の神等共に
天の斑駒の耳振立て 聞食と
恐み恐み白まをす
ははきちゃんのその声には、苛立ち、焦り、そして、何やら、不全感とでもいうのだろうか、
何かをなそうとして、あと少しなのだがなし得ない時の、もやもや感というか・・
「ははきちゃん、なんでそんなにソワソワしているの?」おばさんに当たる、みたま先生が聞いてくる.
「なんか心配事でもあるの?それとも、お掃除のやり残し?」お父さんである、大年神様も心配する.お父さんは娘のことをよく見ているし、折に触れて、色々とお話をするように心がけているので、ははきちゃんのイライラの原因がなんとなくわかる気がする.
「おばあちゃまの、お祭り、お掃除しなきゃ・・・・
でも、ははきの心と体は、まだ穢れている、
ははき自身をお掃除しなきゃ、穢れ、禊、・・・・・・
ははきの、穢れ、禊で綺麗に落とさないと・・・・・」
ははきちゃんは、うなされたように
「おばあちゃま、お掃除、穢れ、禊・・・」と繰り返す.
そして延々と、天津祝詞を唱え続ける.
「ははきちゃん!どうしたの、何が心配なの!お父さんに言ってごらん!」
大年神様がちょっと大きな声で言うと、
「は!」と我に返ったようにははきちゃんが目を開けて、大年神様と、みたまの方を見る.
「あ、お父さんと、おばちゃん、どうしたの?」
「ははきちゃんこそどうしたの、天津祝詞、ずっと唱えっぱなしで、何か心配事?穢れ、お掃除し残し?」みたまが訊ねる.
「うーん、ははきにもよくわからない、でも、なんか、私、おばあちゃまのおうち、お掃除してもいいのかなって、ははき、この頃ちょっと悪い子で、穢れてるから・・・」
「なんだ、そう言うことか、ははきちゃん、ちょっと待ってて・・・・」大年神様は、そう言い残して、図書室を出て、食堂に行く.そこでお茶を飲んでいる、
須佐男とルシフェル、ヘスティアのおばさん、はるなに相談を持ちかけた.
「あの、ははきのことで、ちょっと相談なんですが・・・」
「お、なんだ、おめえが、頼み事って珍しいな」須佐男が言う.
「おう、大年よ、俺らもいつもおめえには子供たちが世話になっているから、大概のことだったら、いいようにするぜ、なんでも相談してくれい!」
「はい、大年神様、お茶・・・」はるなが入れてくれたお茶を一口啜る.
「ありがとうございます.」大年神さまは、話の本題に入った.
「娘のははきのことなのですが、今週末、おばあちゃま、つまり私の母親の、大歳御祖神の、お祭りがあるのですが、毎年、ははきがお掃除班長なんですよ.」
「うん、うん」ルシフェルが話を聞く.
「・・・・・」須佐男は上を向いて、いつにない難しい顔をしている.
「娘は、自分の体が穢れているのでは、と心配しているのです.大切なおばあちゃまのおうち、掃除する資格があるのかと・・・・」
「・・・そんで、ははきに、禊をさせたい、ってことだな!」須佐男が言うと、
「さすが親父さま、その通りです」
「しかし、禊をするとなると、そこらの川やら、海では、罪穢れが、落ちません.
ははきの心は清らかになりません.人の目もありますし・・・
で、それなら思い切って、阿波岐原で、禊をさせたいと思うのですが・・・」大年神さまの言い方はちょっと勿体ぶっている.
「そんで?」ルシフェル
「だから?」須佐男
「で、お祭りまでもうあまり日がないので、さあっと飛んでいって、チャチャと禊をして、ひょこっと、帰ってきて、すぐにお掃除ということになるので、なんとか、海丸くんをお貸し願えないかと・・・あと、アテナさんに、アルテミスさん、ヘスティアおばさんを、一緒に、禊をして、お掃除をお手伝いいただけないかと・・・・」
「何、何、面白そう、私、行く行く」アテナが話にわって入ってきた.
「私もいいよ、なんか面白そうじゃない、あたしも色々、汚れが溜まってきたし・・」アルテミスもなんとなく同意である.
「へえ、いいじゃん、ギリシャの処女神が揃って禊って、日本の神様の神聖な社を掃除して、清めるなんて、なかなかいい話じゃないかい」ヘスティアおばさんまで・・・
「いいぜ・・」とルシフェルがいう前に、ギリシャの代表的な処女神が口を挟んできた.
「え、なになに、私も行きたい、連れてって、禊してみたい」とはるなも手を挙げた.
「あいちゃんも、みそぎしたーい」愛ちゃんまでも・・・・・
みたまはもとより、母親の祭礼なのでその準備には深く関わらないとダメだ.
となると、彼女も罪穢れを、綺麗に禊はらう必要があるということになる.
結局、
ははき
みたま
アテナにアルテミスにヘスティア
はるな
愛ちゃん
が、大歳御祖神様の神殿の掃除をするための禊に参加することになった.
もちろん場所は、
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原!
つまり、九州、宮崎県の某所ということである.
健ちゃんと、アンテロスは、女性たちの護衛である.
護衛の男は子供二人だけ?ちょっと頼りないかとも思うが、
アテナ、アルテミスがいれば、ちょっとやそっとの敵ならすぐに追い払ってくれそうだ.それにリバイアサンもいくわけだし.
「じゃ、海丸いいか?」
「はい、でも、なんかよくわからないですが、そういうことで僕の封印解くというのもありなのですか・・・・」と海丸くんが、承諾する前に、
ルシフェル、つまりギリシャの最高神、ゼウスは高らかに、リバイヤサンの封印解除の呪文を唱えた.
「リバイアサン、リバイアサン、リバイアサーン!」
雷鳴、竜巻、地響きと、大雨をまきおこして、七色の光の中から、
海丸くんが変身した、巨大な龍神が現れた.
初めて見る、龍神に、最初、ははきちゃんと、みたまはドン引きであったが、
「ちょっと最初は皆びっくりするみたいだけど・・・」と海丸くんがいつもの声で言い終わる、前に、みたまとははきの表情は恐怖と驚愕から、歓喜に変わり
「くわっこいい!」と叫んでいた.
「目的地、九州、宮崎県、それで、阿波岐原ってどこでしたっけ?」
海丸くんは目的地がわからない.地図に載っていない場所である.
「まあ、行けばわかるっしょ!」とアテナとアルテミス、ヘスティアおばさんは、すでに、遠い西の空を飛んでいた.
螺龍に跨った、愛ちゃんと健ちゃん、アンテロスがそれに続く.
急遽、召喚した、螺龍.今回のタブレットのオペレータはアンテロスである.
この頃では、子供たちは、その背中にまたがって空を自由に飛ぶことができるのだ.
慌てて、みたまと、ははきちゃんと、はるなを背中に乗せて、海丸くんが飛び立った.
「待ってー・・・・」と、皆の後を追いかける.
「やれやれ、大丈夫か、な?・・・」大年神様がいうと、
「なーに、いつものことだわな」とルシフェルは慣れたもんで、平然という.
「おう!でもあいつら、揃って禊して、穢れ、ちゃんと落としてこれるんかな・・・」
須佐男はちょっと心配を口にした.
「私のためにありがとう.
あなた、新しい、お友達、皆、いい人たちではありませんか.
今度のお祭り、楽しみ・・・・」
「ウェ!おめえいつの間に.」
「母上!」
須佐之男の隣には、大歳御祖神・神大市比売命が立って、皆を見送っていた.




