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 ”たこつぼ”心筋症

月に1回か2回の病院当直.救急対応を求められないから、最初と最後に申し送りして、寝て、時間がくれば、終わりのことが多い.病棟の患者さんに、容体の変化が起こったり、転倒等の不測の事態に対応したり、病院食の、検食をするのが、任務である.


どういうわけかわからないが、ドクトルは、土曜の夜に当直ということが多い.


これははっきり言って、非常に楽である.この日に当てていただいて、感謝いたします、というくらい、いい.


何がいいかというと、平日だと、日中の勤務の後、当直になる.

風呂に入ったりシャワーを浴びたりは、病院でしないとだめになる.

また翌日に勤務があると、朝起きて、シャワーを浴びたりなんやかんやで、ちょっと疲れる.


その点土曜日だと、

朝のうちに自分の患者さんを一回り回診してから、その後、一旦家に帰って、掃除とか、洗濯とか、布団を干したりが出来る.ゆっくり昼ごはんを食べたりして、風呂に入って、頭を洗ってから、ゆっくり支度して、午後5時の当直開始までに病院に行けば良い.


土曜日の夜のご飯.当直医には「検食」という名目でご飯が毎食出ることになっている..一応、毒見を医者がやれと、ということのようにも見える.法律の規定もそうな雰囲気である.医師か管理栄養士がすることになっているらしい.

結構なご馳走が出るから、ドクトルは、密かに当直のご飯を楽しみにしているところがある.特に夜のご飯.土曜の夜は、なかなか凝ったご飯が出るので.


朝ごはんは、まあ、ちょっと・・・だが

日曜日の朝は納豆と決まっているから.


検食簿の記載事項

当直医の名前

献立の内容


ご飯はちゃんと炊けているか

異臭はしないか

ご飯とおかずの量は

硬さは

味付け

色合い

盛り付け

総合評価


後、検食者の講評とか、感想を書く欄があるのだが、ドクトルはここには何も書かない.


患者さんに出す15分前には検食しないとだめな決まりだそうだが、実際は遅くに食べることも多いかもしれない.


とにかく、検食簿に記入するのは、当直医の重要な仕事である.


当直の管理当直の看護師さんは大体は婦長さんクラスがついてくれる.

午後7時半から、全ての病棟を見回りして、要注意の患者さんがいないか、とか術後の患者さんがいて、ドレーンが入っているとか、呼吸器がついている患者がいるとか、昇圧剤を使っている患者がいて、血圧がなかなか落ち着かないとか、聞いてから、医局に戻って、大体は、ブラタモリ見て、8時半頃には寝てしまう.


着任して初めの頃は当直室、なかなか眠れなかった.何もない夜はとにかく長かったのだが、最近は、ベットに横になったらいつの間にか眠ってしまう.


容体の悪い患者さんは、主治医とか、各科の当番の先生が対応してくれることが多いから、当直医はそもそもあまり呼ばれない.


何度かトイレに行ったりはするが、大体、3時か4時には起きて、本を読んだり、小説書いたり、勉強をして過ごす.


ドクトル、3時にゴソゴソ起き出して、医局のテーブルの上のカフェオレを飲んで、本を読んでいた.時々、これまでに書いた、物語の感想を、AIに伺ったりして、6時にシャワー(ボイラーに火が入るのが、6時かららしい)7時頃から回診して、8時半に申し送りをして、しばらく 勉強したり、本読んだり日記を書いて、10時か11時には、帰宅する.そして、寄り道して、早めの昼ごはんを食べて、家に帰ってから、ぼけっとすごす、というのが、当直の時のルーチンである.当直明けが、日曜日というのも土曜日の夜の当直のいいところである.


平日の昼には、ご飯が出るが、土曜日の夜の当直は、次の日の昼ごはんが出ないことが、まあ難点と言えなくもないが.


今回の当直はちょっと違った.

病棟から電話.頚椎症、誤嚥性肺炎、サルコペニア等が問題の患者さん、80代後半、男性が、前胸部痛を訴えている.酸素飽和度が80%代になったというので、酸素をやって、90%にはなったが.


これまでに心筋梗塞等の既往はない.

タバコは吸わなかったとご本人は言っていた.


ちょっとお体を拝見.


両肺の音は左右差なし.脳外科医が聞いた、肺の雑音は今ひとつあてにならないが、

水疱音やら、喘鳴は聞こえない.上気道の狭窄を疑わせる、いわゆる、stridorも聞かれない.


採血と採血と心電図、12誘導、それに胸腹CTを念のため.


採血ではトロポニンが若干上がっている.

心電図、なんと、全胸部誘導、V2ーV 6で、STの上昇、陰性T波が見られる.

正常の入院時心電図とは明らかに違う.

胸部CTでは、胸水の貯留だけ.冠動脈の石灰化はない、心嚢液の貯留はない、

大動脈の乖離はもちろんない.

ジン嚢胞?


CTが終わる頃には患者さん、胸痛は治ったとおっしゃる.実に穏やかお顔で、血圧も100以上.


日直の先生がちょうど循環器内科の先生で、引き継いでいただいた.

ベットサイドのエコーやら何やら、あと心電図所見から、


診断は、「たこつぼ心筋症」とのことだった.


へー、男の人で、ストレス状態でないけど、たこつぼ型心筋症ってあるのか・・・


これまでに、ドクトル、くも膜下出血後の患者で何人か、見たことがある、はずなのだが、心電図の所見等、あまりちゃんと見ていなかったかもしれない.

ベットサイドのエコー、血管と心臓みれたらいいなと思いながら、数十年、結局マスターしていない.


改めて心臓の勉強も、医者の仕事、続ける上では大切かな、と思った、当直勤務であった.


家に帰ったら、内科の教科書で確認しようと思っていて、忘れていた.

朝起きてから、朝倉内科 11版.


たこつぼ心筋症で引いてもない.


心筋症

 たこつぼー


で、見つかった.


心電図の所見は、T波の逆転と、STの上昇、あとはQTの延長があるらしい.

エコーで見ると、心尖部の動きが悪く、心臓の腰に当たる部分が、くびれたように収縮して「たこ壺」のように見えるからこの病名がついたらしい.


なんでこんな所見が、出るのか、朝倉内科には書いてなかった.


そういう時は、ハリソン・・・・・

そもそも「たこつぼ」って英語でなんていうんだ?

日本人が命名した病気だから、「もやもや病」と同じで英語になっているのかな・・・


おお!

なんとあった.


Takotubo cardiomyopathy


The ventricule shows global ventiricular dilatation with basal contraction ,forming the chape of the narrow neck jar(takotubo) used in Japan to trap octopuses.


病態生理学の最もらしい説明は、ストレスで、交感神経が過剰に興奮して、冠動脈に、スパスムが起こり、心筋梗塞用の症状が出るというのだが、

しかし、実際は、よくわからない、というのが答えらしい.

今回のおじいさん、なんでそんな、交感神経が興奮するようなこと起こったか、ということもあるし.寝ている時に起こることもあるのだろうか?


くも膜下出血なんかは、このような病態生理学的な考察は、十分ありだろう.

ものすごい、synpathetic surge、つまり交感神経系の過剰な興奮から心室性不整脈が起こって、突然死に至る、という説明は、なんとなくありそうな感じである.

くも膜下出血で、「たこつぼ心筋症」と診断がついた患者、実際に何人か見たことがあるし.


肺動脈の鬱血に対して、ニトレートをやったり、左室不全に対して、バルーンパンピイングが必要になることもあるらしい.


ベータブロッカーや、アルファブロッカーを予防に使うこともあるらしいが、意見は分かれるらしい.


「また一つ、学びの機会がありました」ドクトルがいうと、

「その心がけが大事だと、思う」ルシフェルに褒められた.


海丸くんと静香は、黙っておじさんたちの会話を聞くだけである.





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