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天沼矛(あめのぬぼこ)⑥「混沌から大地を生み出す呪文とは?」

オリンポスから持ち込んだ、実験機材をセットして、いよいよ、

天沼矛・試作第一号「ヘラクレスの棍棒」の実験が始まろうとしている.


使用方法のあらましは、ヘラクレスに伝えてある.

大地に混沌を生み出し、その混沌を掻き回して、引き上げて、矛についた、混沌の雫が垂れたところにおのころじまが生まれるという、日本神話そのものを再現しようというものである.


「じゃ、ヘラクレス、用意はいいか?」

ヘパイストスが、コントロールルームからマイクを通して、ヘラクレスに話しかける.


「おお、俺はいつでもOKだ!」

「よーし、これから始めるよ.」アテナが声を掛ける


シズテムのコントロールタブレットを起動する.


「天沼矛システム、試作第1号機、(ヘラクレスの棍棒)を起動します!」


タブレットが、英語で復唱する.


"Activating the Amanonuhoko System, Prototype Unit 1—'Heracles's Club'!"


続く、システムの要求は、パスワードの入力である.


「パスワードを入力してください・・・・」(Please enter a password. )


「え、なんだ、システムがパスワードの入力を求めてきました.」

それは研究制作担当者が考えてもいないことだった.


「神器だけに、呪文が必要ってことでしょうかね・・・」アテナもよくわからない.


「まあ、いいや、適当に合言葉みたいなの入れてみれば・・・」


それ!

父ちゃんのためなら、えんやこら・・・・

やあ!

よっこらしょ!

まず思いつく掛け声を入力してみた.キーボードでなくて音声入力でいいらしいのだが.


使用するヘラクレスの声でないとダメなんだろうか・・・


ヘラクレスが、同じ言葉を順に、マイクに向かって叫んでみるが、タブレットの表示は相変わらず、


This password is inappropriate.

である.


そもそも試作第1号機は、ヘラクレス仕様に作りはしたが、その音声を入力することで起動するという設定は、これからすべきことで、未着手である.


「いや、困ったな・・・」


「海丸、どうすればいいと思う?」

アテナに意見を求められた、海丸くんも知恵を絞る.


「そうですね、思い当たる言葉は・・・」


しゅわっち!

変身!

とお!


ききっ!ショッカーの声を入れてみたが、これにはタブレットが反応して、

「反社会勢力の言動はパスワードとして不適切です!」と表示してきた.


「じゃやっぱり、正義の味方でしょうかね・・・」


チェーンジ、スイッチオン、one,two ,three・・・

「パスワードとして長すぎます.不適切です」


皆がいい加減イライラしてきたところであるが、海丸くんは考えうる、掛け声、合言葉をマイクに向かって話し続ける.


チェンジキカイダー、ゼロ、ワン

「先に同じく.パスワードは簡潔かつ明瞭なものを・・・」


ハニーフラッシュ!

「コンプライアンス上問題です」


デービール!

「土曜の夜の番組に偏っているようですが.しかも50年以上前・・・」


発想をちょっと変えて・・・・


これから手術を始めます、メス!

「手術の前はそんなこと言わないでしょ.タイムアウトからでしょ・・・」

確かに、ドクトルが言ってた、手術の前、ドラマみたいなのしないって.


お父さん!昨夜はどこ行ってたの!


朝帰り亭主を問い詰める、奥さんと思しき、イライラした女の人の声を真似てみた.

「海丸、そんなのわかるの?ご家庭の問題を神聖なところに持ち込まないように」と答えが返ってきた.


ああ、やっぱり・・・・・


オラオラ、おっさん、金だせよ・・・

「不良学生のカツアゲでしょ・・・・」


おら、さっさと貸した金、返してもらおうか・・・

「反社会勢力の言葉はダメだって・・・」


あ、そうか・・・


じゃこれでどうだ・・・・


「こら!大阪じゃ(大阪府警のマル暴・捜査官のこと)あけんか、おることわかっとるんじゃ!開けろいうとるじゃろ!」

「オラ、チェーンソオだせ、鍵壊してまえ!」

ぼぼぼ、ブーン、チェーンソウのエンジン音まで真似て入れてみたが、

「反社はダメって言ってるでしょ!」


え?警察の真似してもダメとなると・・・・


「あ、そうか・・・・これならどうだ!究極の正義の味方、そして世紀末の救世主!」


アータタタタ・・・・お前はもう死んでいる!


「うーん、もうちょっとかな・・・」いい加減システムのAIもやりとりに飽きてきたようである.返事がいい加減になってきた.


「ああ、やっぱりダメか・・・ねえ、愛ちゃん、健ちゃん、天沼矛のお話、パスワードみたいなのってなんかあったっけ?」


「ええ、キューピーが言ってた.

天沼矛で、引っ掻き回す呪文、あいちゃん知ってるー」

愛ちゃんがいう.


「え、なになに?それってなんだっけ、聞いたことある気がするんだよな、僕も・・」


「海ちゃんこうだよ!」健ちゃんと愛ちゃんの二人は、棒で湯船を混ぜるときにいう言葉を動作を交えて、教えてくれた


こをろこをろ・・・・・・


「あ、それだ!」


パスワードは

「こをろこをろ・・・・・・」


海丸くんがマイクに向かって、話しかけると、


新しい画面が現れて、

「適切です.このパスワードをアクセプトします」と表示された.


システムが起動して、ヘラクレスが持つ、天沼矛・試作1号機が、七色に光を放ち始めた.


ヘラクレスが、ちょっと顔を避けた

口元の動きは、「アチ!」と言っているのか、かなりの熱を発しているらしい.


初めは小さい、蚊の飛ぶような音、そのうち、モーターが回るような音がして、その音は次第に高く、大きくなっていった.


ここでヘパイストスからヘラクレスに指示が飛ぶ.

「なあヘラクレスよ、ちょっと高台に登れるか?そこに人とか動物とか民家とかなかったらだな・・・」


「親方、ここにはなんもねえぜ、すう10km四方、真っ平らな岩場だけみたいだ」

「よし、ヘラクレス、棍棒持ったまま飛び上がれるか?できなかったらいいが、高台から見下ろした岩場に向けて、棍棒を振ってみろ」


ヘラクレスは無人の岩場に棍棒を向けて、風呂のお湯をかき混ぜるように、棍棒を回してみた


「あ、ヘラクレス、呪文を忘れるな」

「え、なんていうんですか?」


こをろこをろ・・・・・・


ヘラクレスは、指示された通りに、

こをろこをろ・・・・・・と唱えながら、棍棒をゆっくりと回す.


まるで大地をかき混ぜるように・・・・

すると、大地がみるみる溶けて柔らかくなる.あくまでもみた感じ、である.

そして、マグマのように赤く熱を帯びたように見えた.

暗い赤

オレンジ色

黄色、白色、から青白い色


そして怪しげな、紫が買った眩しい光が大地から放散された


コントロールルームに緊張が走る.

「白虎、天沼矛の中心の温度は?」

「いや、親方、棍棒の周囲に、温度の上昇が全くみられません.エネルギーの流入や流出が一切ありません.放散される光も、全く物理用としてのエネルギーの測定は不可能です.」

「光を発している大地の温度は?」

「それも同じです!いろんなパラメーターの変化が一切ありません.」


「え、そんなことがあるのか?」ヘパイストスは、何が何だか理解できないままに実験を続けた.


「よーし、ヘラクレス、熱くはないか?」

「ああ、親方、最初は熱いような感じもあったんすけどね、今はなんともねえみたいです.」

「振動は?」

「最初は、持つのも大変なくらいの強い振動があったんすけどね、今はなんともねえみたいです」


怪しく、青白い光を放つ、天沼矛・・・・

大地の表面の色調の変化はこれ以上ないようである.

定常状態に達したと考えて、アテナとヘパイストスは、お互いの目を見て頷いた.


「よし!ヘラクレス、棍棒をその大地の光の中に突っ込んで、引っ掻き回すんだ!」

「こうですか?」


ヘラクレスはその棍棒で、今できたばかりの『混沌(?)』をかき混ぜる.

「こをろこをろ・・・・・・」


「よし、ヘラクレス、棍棒の先についたドロドロ、あるだろ」

「あ、はい.」

「それをちょっと離れた場所に垂らしてみ.」


「こうですか・・・」


ヘラクレスはそれまでにかき混ぜていたところとは別の場所に棍棒を向けてみた.

先端についた「混沌」は大地に滴り落ちる.


とをろとをろ・・・・・

と雫が垂れる.


なんと!そこからみるみる巨大な岩石の支柱が聳え立った!



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