天沼矛(あめのぬぼこ)⑤「壮大な実験!」
皆が、リバイヤサン空輸隊をオリンポスの山頂から見送り、
「行ってしまいましたね・・・・」
などとちょっとのんびりしているところに、玄武たち、四天王が血相を変えて、やってきた.
ルシフェルと、社長のヘパイストスに上申する.
「社長、だめでしょ、実験に立ちあわないと、ヘラクレスのことだから、全部自分でやっちゃいますよ、ちゃんとした使い方説明して、それからデータ取らないと.それに大事な新製品の試作、壊されでもしたら・・・」玄武が、はあはあと息を切らしながらいう.
「親方、ほんと、大事なところで、抜けてんだから・・・」朱雀もここぞとばかりに社長批判である
「せっかくの実験、我々が立ち会って、データ取らないでどうすんすか.お嬢も一緒にいてなんでそういうこと言わないの!」白虎が、アテナにまで苦言を言う.
「あ、そういえばそうだね、すごい製品、時間内にできて、納品完了って思ったら、それでなんか安心しちゃったね、てへ、反省反省・・・」アテナは脳天気にいうもんで、
「いや、いや、ちょっと急いでください、早くしないと世紀の大実験、見れないし、そもそもデータの収集ができなくなってしまう」青龍も気が気でない.
急いで、実験機材、修理道具等をまとめて、スタッフがジブラルタルに向かって急ぐ.
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ジブラルタル海峡
過去から現在、そして未来永劫に天空を支えづつける宿命を負ったアトラスのところ.
娘のプレアデスの一人、マイアがアトラスのところにやってきた.
「ねえねえ父さん、なんか、東の方から、黒い雲がものすごい速さでやってくるんだけど、なんかの前兆かな?」
「ほお?どれどれ・・・」
重い天球を支えながら、アトラスは、西に向けていた顔を、ゆっくり東の方に向けてみた.
きしきしきし・・・・
ギギギ、ががー・・・・
古いお城のしばらく開けなかったもんが久しぶりに開く感じ.
自分自身を支えるのがやっとの巨体.
さらに天球という超重いものをずっと持たされる彼にとっては.
首を回旋することすら大仕事である.
アトラスはゆっくりと方向転換して東の方を見る.
目を凝らすと、雨雲の群れのようだが・・・・
その黒い雲のようなものはどんどん近づいてくる.
中心には白銀の龍?だろうか・・・・
「おや、白銀の龍、あれは、伝説に聞く、リバイアサン・・・・・」
マイヤも父と同じ方角を注視する.
そして、その背中の上でこちらに向かって手を振るものがいる.
龍の背中には、4人の人影.前は二人、どうやら子供らしい.
その後ろ、
「あれ、息子のヘルメスだ・・・」マイヤが驚いてみせる
「え、なんでヘルメスが.またなんの用事だ?」アトラスの喋り方はのんびりとしている.思いがけず孫が来て声が少し嬉しそうである.
そしてその後ろには棍棒を担いで、ライオンの皮を被った男がいる.そいつもこちらに向かって手を振っている.
「おや、あれは、ヘラクレス・・・・またリンゴでも探しにきたのだろうか?」
「あれ、そういえば娘たち、ヘスペリデスの子達は今どうしてるんだっけ?」
プレアデスのマイヤたちとヘスペリデス、同じアトラスの娘だが、母親が違う.
日本の神話のことばかりにかまけていたから忘れていたが、
ギリシャ神話の神々も、日本に負けず劣らず数が多い.
さらに、お母さんが誰かによってその娘たちはグループに分けられる.
アイドルユニットの如しである
ムネモシュネの娘たちムーサから始まって、
プレアデスに
ヘスペリデス・・・・
それぞれのメンバーが、7人とか8人とか・・・
そのうちOLP 48なんてのもできるかも・・・・
「一つひとつのいのちには名前があるからなるべくなら覚えてあげてね・・」
というおばば様、レア様の尊い教えでもあるし、
「いのちの名前=神々の名前」本当は全部書くべきなのだろうが・・・
しかし、物語は先を急ぐので、今日のところはそれはやめておこう.
マイヤと、アトラスの前に白銀の龍が舞い降りた.
その背中から、ヘルメスがひらりと舞い降り、続いてヘラクレスが、よっこらしょ、どしんと降り立った.
前に座っていた、子供たちは、ヘラクレスが抱きかかえておろしてやる.
後から来た、ハンモック、なんか大きな、建築材料みたいなのが載せてある.
それは、広いところにゆっくり降り立った.どうやら網目に見えたのは夥しい、龍の群れ、らしい.地上に降り立つと、網目構造だけ消えて無くなり、後に残されたのは、巨大な建材だけである.
白銀の龍は、背中に乗せていた4人を地上に下ろして、あたりを見回した後に、みるみる小さくなり、少年の姿に変わった.
彼は、アトラスと、マイヤに向かって礼儀正しくお辞儀をして、自己紹介した.
「僕は、ポセイドンの息子で、海丸一学と言います. 母親は日本の山神です.
みんなは、苗字の海丸くんって呼びますけど・・・・」
恭しく挨拶したのち、
「こちらは、愛ちゃんと、健ちゃんで大切な僕の友達です.
日本に神々の集会所、みたいなところがあるのですが、いつも一緒にそこで生活して、毎日勉強に励んでいます.」
「おや、まあ、お利口な子だこと!あのポセイドンの子供とは・・・」
(とても思えないね・・・)と母のマイヤが言いそうになったのを、慌てて、ヘルメスが遮る.
「いやいやいや、そんなことはまあ、あと回しでいいから、今日はね、なんで来たかつうと、ヘパの親方がまた新しい道具を作ったもんでその実験に来たわけなんでさあ.爺さん用の特別仕様ですぜ、あそこに転がってる大きな建築機材みたいなんは・・」ヘルメスが来訪の理由を説明する.
海丸くんが説明を続ける.
「それでですね、あれ、ヘパの親方とかアテナ、四天王はどしたの?
説明とか、実験のデータ、とるって言ってなかったですか?
ヘルメスなんか聞いてる?」
「いんや、俺はなんも・・・・」ヘルメスは本当に何にも聞かされていない.
「じゃ、ヘラクレスも、なんも話聞いてないでしょ.その棍棒の使い方とか、ヘパの親方か、アテナからなんか説明ってありました?」海丸くんはヘラクレスにも確認したが、やはり、
「いいや、なーんも・・・」ヘラクレスも、何も聞かされていないらしい.
「おっかしいな、あ、アトラスのお爺さま、ちょっと待っててくださいね、いや、これから新製品の実験だから、絶対親方たち見ないわけないと思うんですけど、オリンポスに置いてきちゃって・・・・」
「ほお、また例によって、あのゼウス、慌てて、おめえらのこと送り出したら、それで仕事終わりみたいに考えてたんじゃねえのか?あいつらしいといえば、らしいのだがな」
アトラスの爺様が、急に、かつてのライバルの批判を始めた.その顔、さっきの穏やかな好々爺と違ってなんとなく険しい.
「そんじゃ、俺が、ひとっ飛びして、みんなをここに連れてくるか?」ヘルメスがのんびりという.しかしそれが彼の本来の役割である.
ヘルメス・・・・
それは、神々と、オリンポスの最高神・ゼウスを取り持つメッセンジャー!
皆が話しているうちに、今度は大きな船が飛んでくる.
あれはアルゴー?
「おーい!おーい!」
前の方で手を振っているのは、アテナと、ヘパイストスと、ゼウスである.
オリンポスの12神、大体いるようだが・・・・
アフロディーテとアレスはいないようだ.彼らは他の仕事があって、今日のところは古代オリンポスにはこれない.
それ以外は皆勢揃いして、こちらに向かって手を振っている.
船のマストに登ってヘラクレスに向かって手を振るのは、イアソンである.
二人は、アルゴーの航海以来の仲間である.
船の上には、他に
キュクロプス
アテナの四天王
ドクトルに、はるな、静香とみたま
その他の、オリンポス工業のスタッフが乗っていた.
大きな実験機材も一緒に搬送してきたようである.
あれ、アルゴーって、空も飛べるのでしたっけ?
(・・・・・・)
そんな細かいことを説明していたら、物語が止まってしまう・・・・
「さあ、いよいよ、天沼矛の実験だ!」
いろんな事情から、物語は強引に先に進められた.




