天沼矛(あめのぬぼこ)② 「職員食堂の新メニュー」
愛ちゃんと健ちゃん、みたまは、職員食堂に向かう廊下を歩きながら、驚きを隠さない.
それはそうだろう.この会社、職員のほとんどは古い神様なのだ.
移動はほとんどの職員が、頭やら背中やら、足に生えた、翼で飛んでいる.
みんなヘルメスとか天使になったアテナの感じなのだから.
海丸くんと四天王たちは、愛ちゃん、健ちゃんたちを置いてけぼりにして、あっという間に廊下をかけ抜けていったので、廊下で迷子になりそうになったところを、後から来たアテナに案内してもらう感じである.
廊下には、大きな窓があって、周りの景色が見える.なんと、そこは空中回廊のようである.
「あれ?地下かと思った・・・・」
「地下に広がる、世界が、また一つ、広がっているってことなのかな?」アテナもよく考えたことがない.生まれた時から見慣れた光景だから・・・
始めてきたものには珍しく映る、そういうことなのだろう.
ゆっくり話をしながら、歩いて職員食堂に着いた.
食堂のおばちゃんは、ヘスティアおばさんに、はるな、そして、あれ、あの人・・・・
「ええ!」
「ヘラ様!」
「愛ちゃん、健ちゃんいらっしゃい.」
「ヘラ様、食堂のお手伝いするの?」愛ちゃんがヘラ様に聞く.
「そりゃ私だってお母さんだからね.それにみんなが来るって聞いていたから、朝から張り切ってたんだよ」
サンプルケース・・・・
「おや?この前とかなり変わっている、かな・・・・」
ドクトルと、ルシフェルが、ガラスに顔を押し付けんばかりにして、メニューを選ぶ.
その足元では、愛ちゃんと健ちゃんも、ピッタリ張り付いて、何を選ぶか考える.
奥のテーブルでは、四天王と、海丸くんたちが楽しそうにおしゃべりしながら既に食事を始めている.
あれ、健ちゃんたちと一緒にきたはずのアテナはもう食べてる.
なんと、昼間っから、
回鍋肉にチャーハン、餃子、それに鳥の唐揚げを頼んでいる.
四天王はそれぞれ、
煮かつ定食に天ぷらそば、
焼肉定食にラーメン、
カツカレーの大盛り、海鮮サラダ
天丼に、野菜炒め
・・・・・・・
流石に永遠の食べ盛りである
「海ちゃん、何食べてんのかな?」健ちゃんが、海丸くんがなのを食べているかちょっと覗き込んだ.
「あ、日替わり定食弁当・・・・」やっぱ海丸くんはしっかりしているから、食事のバランスを考えている.
「僕も日替わり定食にしようかな・・・・」健ちゃんは海丸くんに倣った.
「あいちゃんは・・・お刺身弁当!」
「ギェ!!」とドクトルと、ルシフェルがちょっとびっくりした.
愛ちゃんは子供だがお刺身が大好きなのだ.
「しかし、職員食堂でよくお刺身なんか出せますね」
「ここをどこだと思ってるんだい!オリンポスの中心だよ.ここには、海の神ポセイドンが毎日新鮮な魚を運んできてくれる.世界中の魚料理が食べられる、世界最高のレストランさ!」料理長のヘスティア叔母さんが自慢する.
みたまは、「私も日替わり定食!なんかご飯はいなり寿司にしたいかな・・・」
「おおお!」
「なかなかいい組み合わせね・・・・私も今度そうしようかな」静香とはるなも同意である.
「おや、これは、お子様ランチ・・・・なんだ?」ルシフェルはその正体がよくわからない.
「おお!お子様ランチ、いやー懐かしい・・・子供の頃にデパートの一番上、レストランには大体ありましたからね、お子様ランチかあ・・」ドクトルは昔を懐かしむ.
職員食堂特製のお子様ランチ・・・・・
ケチャップ味のチキンライス、グリンピースの緑が癒しだ
さらに、カップの形で、ギザギザのが入っている
ピーマンもちゃんと入ったナポリタン、ほんの少しだけ付け合わせ
タコソーセージに、
鳥の唐揚げ、
お、キャベツとプチトマトにブロッコリも載っている・・・
蒸したにんじん、ポテトフライ
エビフライに、ヒレカツ
おや、鮭の切り身?
いやいや、これは、なんと玉ねぎとか椎茸の入ったホイル焼きだ!
あとはフルーツに、小さいゼリー
ライスの上には日の丸の旗が、定番だが、
今日は、「天沼矛」がさしてある・・・・・・
実はこれは、愛ちゃんと健ちゃんが来るということで、ヘラ様が一生懸命考えてメニューに入れたものなのだが・・・・
彼女は子供たちがメニューを選ぶ前に、「お子様ランチもあるよ!」とは決して言わない.子供たちの選択を尊重するためである.
しかし、肝心の子供たちは、お子様ランチを頼まないと、流石のヘラ様もちょっとだけしょげる.
ヘラ様の寂しそうな顔を、夫婦の駆け引き・百戦錬磨のルシフェルは決して見逃さない.
長年連れ添った夫婦だけのことはある.
(しかし・・・・俺が頼むのは、ちょっと・・・・)ルシフェルが悩んでいると、
隣のドクトルが、
「私はこのお子様ランチ!ヘスティアおばさん、大盛りにできますか?」
ドクトルの注文はなんと、お子様ランチの大盛り!
やりとりを聞いていた皆が「ぎょ!」とのけぞって驚いたのだがドクトルは全く気にした様子もない.
「いや、お客さん、お子様ランチ、大盛りにはできないんですよ・・・
なんていうか、青少年ランチ、になってしまうっていうか・・・
思春期ランチとか、それは置いてないので・・・・」
ヘスティアおばさんが申し訳なさそうにいう.
「あ、そうですか、じゃ、私、お子様ランチ2人前!」
「お、ドクトルやるな、おめえ、そんじゃ、俺も、お子様ランチ!」とルシフェルも嬉しそうにお子様ランチを注文した.完全に便乗である.
「え、いい大人が、全く・・・・」
ヘラ様は厨房の奥に消えたかと思うと、3人前のお子様ランチを持って、カウンターに戻ってきた.
「もう、しょうがないね、フルーツとゼリーちょっと多めにつけといたから、愛ちゃん健ちゃんともちゃんと分けてくださいな.本当にもお・・・」
とぶつくさ言いながら、ヘラ様は奥に戻っていったが、その顔はなんとなく嬉しそうだった.
ドクトルと、ルシフェルはお互いの顔を見て、
「うししし・・・・」
と不気味に笑っている.
二人のおじさんが向かい合わせに座っている.
その前に置かれた、三人前の「お子様ランチ」
必然的に、皆の注目の的である.
「ドクトル、エビフライもーらい!」健ちゃんが、ドクトルの前のお皿の一つから、エビフライを掻っ攫っていく.
「あいちゃん、チキンライスもーらい!」愛ちゃんがスプンで、もう一つの皿から、ケチャップライスをさらっていった.
ドクトルはちょっと身構えたが、黙って子供達に取られるままにしている.
「お、俺の、タコソーセージもやるぜ」と愛ちゃんのお皿にソーセージを乗せてあげる.そして黙って唐揚げを健ちゃんの開いた小鉢の中に入れた.
ヘラ様もそれを見て、ニコニコと優しく微笑んでいた.




