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尿路結石症

ドクトル55歳のある朝.

6月だったと思う.6月の何日かは忘れた.

外はまだくらい.早朝に覚醒してその後なかなか眠れなくなる年頃.

しかしその時は、背中から腰、左側のなんとも言えない、不快な痛みで覚醒した.


炎症とか、出血とか、打撲による痛み、局在のはっきりした、「体性痛」ではない.

お腹を上から押して、圧痛が起こるものではない.

虫垂炎とか、胆石症とか、腸管穿孔、そういうものではないらしい.

嘔気、下血、便秘等の症状もない.


体の芯から痛いような不快なような、感覚.しかしなんとなく、

「俺はこれで死ぬのかな・・・」と思わせるようなそんな痛みである.


午後から、脊椎・脊髄の手術の予定.

腰椎のヘルニアか、腰部脊柱管狭窄症の手術で、非常勤の先生がやってくれるから自分は助手で、あまりすることはないのだが.


痛みは、「死を覚悟する」ようなもの.

ドクトルは若いことに潰瘍性大腸炎をしたから、いずれは大腸癌になるぞ、と脅されて、40年間特に何もなかったのだが、いよいよ来たのかな、そう感じさせる痛みであった.


まあ、入院したりしたら大変だし、後、全身麻酔の手術になると面倒だから、とりあえず、ネットやら、メール、携帯電話の不適切な、履歴、アドレス、その他諸々の他の人に見られたら困る情報は、削除した.


まあ、診断はちゃんとしておいた方が良かろうということで、早めに出勤して、

当直の外科の先生に腹部のCTととってもらった.造影はしなかった.


予想もしない病気だった.

「ああ、尿管結石ですね・・・」外科の先生が言う.

ドクトルも腹部CTを見てどれがそうなのかわかる.しかし何も言わない.

「・・・・」


「まあ、いい時、泌尿器科の先生に相談したらどうですか・・・」と言い残すと外科の先生は、放射線科の操作室から足早に出て行った.


そう言えば、数日前に、夜中に5kmくらい歩いて、帰宅したことがあった.その日だったか次の日だったか、血尿を思わせる褐色のおしっこが出たのだった.


その時には背中とか腰の痛みは全くなかったのだが・・・


午前中に痛みは収まり、脊椎・脊髄の手術の助手は筒が無く勤めることができた.


夕方、比較的仲良くしてもらっている泌尿器科の先生に画像を見せて相談した.


「毎日水、1500から2000ml飲んでください.まずはそれからでしょうかね・・・」

その後、1週間くらいは、時々痛みが起こり、その都度、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、階段を、駆け上ったりして、なんとか「石」を下に落とそうと努めた.


痛みがけろりと消失することもあれば、余計にひどくなることもあった.

しかしそのうちになんとも無くなったから、よかった.


尿路結石、特に腎臓から、尿管の結石症・・・


この頃、ドクトルは、健診の結果を説明する仕事をしている.腹部のエコーの結果も説明する.


(腎臓に石灰化・・・)


「あ、もしや、これまでに背中から腰、腎臓いいしがある方に起こったこと、ありませんか?」


「あります、朝方、救急車呼びました.尿管結石と言われました」

そう言うお客様が、月に何人かいらっしゃる.


「ああ、実は私もやったことあるんですよ・・・・」

しかし、いろんな治療を経験している患者さんと言うか、検診のお客さんの方が、ドクトルなんかよりもずっと尿管結石についてはプロである.


ドクトルは、説教じみたことは一切言わないで、「はあ、そうですか、へえ、大変でしたね、はあ、はあ、ほお、」と相槌を打ち、最後は、


「いや、私の方が初心者で、あなたはまさに尿管結石プロですね.いろいろ教えていただいてありがとうございます」と健診に来たお客さんにお礼を言う.


「いえどういたしまして・・・」ちょっと不思議そうな顔をされることが多いのだが.


内科の教科書に「尿路結石」についてわかりやすくまとめてあった.


朝倉出版 内科学 第11版 いつもお馴染みの本である.


尿路結石症は、泌尿器科領域の中で最も頻度が高い疾患の一つである.なんとエジプトのミイラからも見つかっているらしい.


「太古の昔、ファラオすら、あの痛みを経験したか・・・」ルシフェルがいうと、

「なんか俺、悪いことしたっけ、こんな形のバチが当たるなんて」とおそらく思ったと思いますよ.そんな痛みである.


19世紀までは、下部尿路結石である、膀胱結石がほとんどだったか、

1945年以降、上部尿路結石である、腎・尿路結石の割合が急激に増加した.


「第二次世界大戦、WWIIが終わった頃から?なぜ?」海丸くんの素朴な疑問


残念ながら、朝倉内科にはその理由までは書いていない.

生活様式、食生活?


1965年以降は、上部尿路結石が全尿路結石の95%を閉めていた.

その理由についても記載はなかった.


尿路結石の治療は開放手術で行われた、らしい.

1980年代に入って、

体外衝撃波砕石術 ESWL

経尿道的尿管採石術 TUL

経皮的腎砕石術 PNL


など侵襲が低く、有効な治療法が確立した、そうである.


尿路結石のいろいろ.

膀胱結石 神経因性膀胱、前立腺肥大などのカブ尿路の病気、膀胱憩室、長期臥床、尿道カテーテル.男性が75%


感染性結石は女性に多い.特に閉経後に増えるらしいから女性ホルモンの絡みだろうか?


腎盂と二つ以上の腎杯にできるのは、珊瑚状結石.プロテウス菌などのウレアーゼ産生菌の関与



「尿路結石はなんでできているか?」

つまり、尿路結石の成分


カルシウムや、尿酸などの結石構成塩類が析出する.

蛋白質オステオポンチンなど


カルシウムが90%(シュウ酸ー、リン酸ー)

尿酸 4.5%

リン酸マグネシウアンモニウム2.3%

シスチン0.9%

その他0.4%


頻度

罹患率 男性15.1%、女性6.8%


男性20 代からぼちぼち、40代がピーク

女性は、50代がピーク

尿路結石の頻度は増加している


増加の理由

1.食生活と生活様式の洋風化.動物性蛋白と、脂肪の摂取が増えた

2.診断技術の向上(CTや、超音波)

3.人口構成の高齢化


診断は、ドクトルが、やったことがそのまま診断手順ということでいいらしい.

まず経過、症状、身体所見

検尿、採血で腎機能の悪化?

エコーに、KUB、という尿路のレントゲン単純撮影、腹部CT等・・・・


「医者も、自分でやった病気のこと、なんとなくよくわかりますね.」海丸くんがいうと、

「私はまだ、ちょっとやっただけで治っちゃったから、患者のうちに入りませんがね.なった病気のこと、教科書で読むと理解が深まりますね・・・」


このように、今日も別館の医学勉強会が和やかに行われた.






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